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23時の軽井沢#4

○○も驚いた。「え、和が書いたんじゃないのか?」

「書くわけないでしょ! この絵、気に入ってるんだから……」和は動揺しながら絵に近づき、文字を凝視した。「まさか誰かがいたずらしたの?」

○○は軽く首を振りながら、過去の記憶を掘り起こすように話し始めた。「あれ、この店って……高校のときにお前がバイトしてた店だよな?」

和はその言葉にハッとし、思い出した。「うん……大切な思い出の店……」

「その店長さん、今も元気なのか?」

和は眉をひそめた。「最近行けてないから、どうだろう……元気かな?」

「知らねえよ」と○○は冗談めかして言ったが、和はどこか不安そうだった。

「なんか……この文字、すごく嫌な感じがする……」

○○は絵に目をやりながら、考え込んだ後に提案した。「じゃあ、日が昇ったらその店に行ってみようぜ? 今はもう23時だし、閉まってるだろ?」

和はしばらくの間、絵を見つめた後、小さくうなずいた。「……そうだね」

夜の静寂が再びギャラリーを包み、時計の針は23時を示したまま、ゆっくりと動き続けていた。

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