C’est très bon !#8
○○と麗奈は車で15分ほど走り、大きなビニールハウスの農場に到着した。
「すごいな、こんなところにこんな大きいビニールハウスがあったなんて。」
○○は驚きの声を上げる。
「知らなかったの?ここなら季節外れの野菜でもいい状態で買えるんだよ。」麗奈は自慢げに答える。
「さすが麗奈!ありがとう!早速トマトを見に行こう!」
しかし麗奈は意味ありげに微笑んだ。「分かってないな〜。普通のトマトも美味しいけど、ここにはもっと特別なトマトがあるの。」
「旬のトマトみたいに美味しいってこと?」
「違う。」麗奈は首を振る。「ビニールハウスで気温を調整して旬に近い状態に育てたトマトじゃないの。ここには、本当に今が旬のトマトがあるの。」
「どういうこと?」
麗奈はビニールハウスの手前にあるトマトの列を指さした。「これが『越冬トマト』。特別なフルーツトマトで、寒さから実を守るために甘みと旨みをたっぷり蓄えてるの。栽培期間は約6ヶ月もかかるんだ。普通の夏トマトの4倍の手間だよ。水に沈むくらい重くて、輪切りにすると中身がぎっしり詰まってる。絶対に美味しいよ!」
「すごいな…食べてみたい!」
「大丈夫だよ、農家さんに許可取ってるから。」麗奈はその場でバッグからまな板とフルーツナイフを取り出し、越冬トマトを手際よく切り分けた。
「はい、○○、口開けて。あ〜ん。」
「ちょっと恥ずかしいな…」○○は苦笑いしながらも口を開けた。その瞬間、
ガサッ
背後で物音がした。
○○は振り向いて目を丸くした。「夏鈴?」
そこには、驚いた表情を浮かべた夏鈴が立っていた。しかし○○と目が合うと、夏鈴はその場から走り去ってしまう。
「待ってよ!」○○は慌てて追いかけた。
夏鈴は振り返らずに叫ぶ。「やっぱり麗奈のことが好きなんじゃん!そうだったら正直に言ってよ!期待した私がバカみたい!」
そう言うと、そのまま走り去ってしまった。
呆然と立ち尽くす○○の背後から、麗奈がそっと近づいてきた。そして優しく○○を抱きしめる。
「○○、私はいつでもあなたのことを受け入れるよ。」
麗奈の言葉は暖かく響いたが、○○の胸の中は複雑な感情で渦巻いていた。