![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160680551/rectangle_large_type_2_365080115a0ca0cca965c83fbbae5e3c.jpeg?width=1200)
23時の軽井沢#36
和は戸惑いながら、○○に視線を向ける。「掛橋婦警に電話をかけるの?通報するってこと?」
○○は苦笑して答えた。「質問は一個ずつにしてくれ。そう、池田さんからの自供も録れたし、通報するんだよ。」
瑛紗は顔をしかめ、苛立ちを隠そうともしなかった。「は?たしかに話したけど、証拠なんてないでしょ!私が容疑を否定すれば、罪に問われることはないわ!」
○○は冷静に答える。「池田さん、本気で言ってる?ライターが取材するときに録音しないわけがないだろ?」と、彼は胸ポケットからボイスレコーダーを取り出した。
瑛紗の表情が一気に強ばる。「嘘でしょ…録音してたの?」
○○は淡々とうなずいた。「うん、全部録音してた。」
瑛紗は歯ぎしりし、鋭い目で○○を睨む。「でもその中には和の悪事も全部録音されてる!提出すれば、和も罪を問われるわよ!」
○○は彼女の挑発に応じることなく言葉を紡ぐ。「そうだな。でも俺はこのまま提出する。それでこいつが罪に問われるなら、それはこいつが法のもとで償うのが筋だ。だろ?和。」
和は覚悟を決めた表情でうなずいた。「うん…私もそれでいい。」
瑛紗は苛立ちを隠せず、叫んだ。「でもこんなの無理やり自供させただけよ!こんなの、証拠にならないわ!」
○○は、静かに彼女を見つめる。「池田さん、俺たちを甘く見ないほうがいい。証拠は揃ってる。まず1個目がこのボイスレコーダー、そして2個目は…」と、彼は少し間を置いた。
「2個目は、あんたが和の絵に描き込んだ『次はここ』の文字と、池田さんが描いた絵に記されたサイン。これを筆跡鑑定にかけてるんだ。明日には結果が出る。そうすればこのボイスレコードの内容が事実である証拠になる。」
和は驚きの表情を浮かべた。「!!だからあの時、瑛紗の絵を買ったの!?」
瑛紗も思わず表情を曇らせた。「だから急に来て、学生のときに描いた一番出来の悪い絵を買ったんだ…」
○○は静かに笑みを浮かべた。「そう。だけど、あの絵に惹かれたのは本当だよ。筆跡鑑定が終わったら、返してもらって家に飾るつもりだ。」
○○は瑛紗を真っ直ぐ見据えた。「池田さん、あなたには素晴らしい才能があったのに…残念だよ。」
その瞬間、インターホンが鳴り響いた。
和が顔を曇らせ、インターホンに目をやる。「掛橋婦警さんかも?」
○○は首をかしげた。「さすがに早すぎるだろ?」
和がドアを開けると、そこには車椅子に座ったアルノが静かに佇んでいた。
和の顔は驚愕に染まり、呟いた。「え……アルノさん……?」