C’est très bon !#20
卒業式を終えた翌日、〇〇は東京に購入した物件を訪れていた。
「居抜き物件にしてよかったな…あとは改装だけで済む。とはいえ、改装にも2ヶ月はかかるだろうし、その間に一緒にやる仲間を探さないとな…でも、どうしよう…なんの当てもない、笑」
店の中を見渡しながら、途方に暮れる〇〇。
「求人出すしかないか…でもオープンもしてない店に誰が来てくれるんだよ、笑」
ふと窓の外を見ると、隣の建物に「閉店セール」の張り紙が目に入った。ケーキ屋だ。
「行ってみるか。」
〇〇は軽い気持ちで隣のケーキ屋を訪れることにした。
ドアを開けると、店内には甘いバターの香りが漂い、心地よい温かさが広がっていた。
「すみませ〜ん」
奥からエプロン姿の女性が現れる。
「いらっしゃいませ。」
〇〇は挨拶をし、軽く自己紹介をした。
「6月から隣でフレンチレストランを開くことになった〇〇です。隣にケーキ屋さんがあると聞いて気になって来てみました。」
女性は柔らかく微笑みながら答える。
「わざわざありがとうございます。私はこの店の店長、佐藤詩織です。6月にはもう店を閉めていますが、よろしくお願いしますね。」
詩織の笑顔には、どこか切なさが混じっていた。
「せっかくなんで、何か買って帰ります。おすすめはありますか?」
「ショートケーキがおすすめです。」
〇〇はその提案に乗り、イートインで楽しむことにした。
しばらくすると、詩織が美しいショートケーキを運んできた。
「お待たせしました〜。フレジェ、フランス風ショートケーキです。しっとりとしたスポンジに濃厚なバタークリームと新鮮なイチゴを合わせた、華やかなデザートです。ぜひお楽しみください!」
〇〇はケーキを一口頬張ると、その豊かな風味に驚いた。
「うん…」
詩織が少し緊張した様子で尋ねる。
「いかがですか?」
〇〇は少し考え込むようにしながら答えた。
「詩織さん。単刀直入に言います。この店を閉めた後、僕の店でパティシエとして働いてくれませんか?このショートケーキの見た目の華やかさ、バターの使い方…街のケーキ屋としては合わなかったかもしれないけど、フレンチのコースデザートにはぴったりです。」
詩織は驚き、目を丸くしたが、少し微笑んで答えた。
「嬉しいお話ですが、少し考えさせてください。それと…私も〇〇さんの料理を食べてみたいです。それを食べてから決めさせてください。」
〇〇は頷いた。
「もちろんです。3日後、僕の店に来てください。その時に僕の料理をお見せします。」
新たな仲間の予感を胸に、〇〇の挑戦がまた一歩動き出した。