1999年から2003年までの阪神タイガース その⑰
事件は起きた。
この事件を知っているファンは少ないだろう。
2002年。
ジャイアンツがリーグ優勝を決め、
甲子園で胴上げをしたあの年を覚えているだろうか。
その日はタイガースがサヨナラ勝ち。
ファンは六甲おろしを歌い、
歓喜に酔いしれた後の原監督の胴上げ。
ジャイアンツは敗戦での胴上げとなった。
阪神ファンの間では「まぁええか」「来年来年」
これで終わるものだと思っていた。
阪神は勝利した。
よって、21号門前での二次会が始まる。
ファンは気持ちよくなり、
高架下方面へ向かう際だった。
その時だ。
巨人ファンがレフトの窓から投げ捨てた缶ビールが二次会中の阪神ファンに命中した。
優勝を決めたジャイアンツ。
巨人ファンは球場の中で大騒ぎしていたのだ。
「なんやあいつら!!!!!!!!!!」
阪神ファンがブチキレる。
集団でレフトスタンドに殴り込んだ。
ここからは予想通り。
阪神ファンvs巨人ファン。
通路で数百人以上の乱闘騒ぎとなった。
ビールかけをしていた巨人ファンのビールが血の嵐となる。
阪神ファンもユニはボロボロ、流血していた。
警備員が何十人も肩を組み、通路でバリケードを張った。
止まらない両チームファンの怒号。
爆竹が鳴る。
入り乱れる黄色とオレンジ。
バリケード越しにメガホンやペットボトルが投げられる。
巨人ファンが出られないようレフトの全ての出口を阪神ファンが囲んだ。
乱闘中、巨人ファンの先陣にいるのは有名なファンだ。
誰もが知っている「敵に回してはいけない」あの巨人ファン。
彼も怒り狂っており、阪神ファンと闘っていた。
乱闘はしばらくの間続いた。
この件のせいで二次会は途中終了。
逮捕者が数人、怪我人も出た為救急車が来る。
見たことの無い数の機動隊が出動した。
カメラのフラッシュが光る。
この日の出来事は週刊誌に大きく取り上げられた。
長い間球場に通い続けていた方も、
ここまでの騒ぎはなかなか見たことが無いと言っていた。
阪神は長い暗黒時代を脱出する小さな光を見出していた頃だ。
両軍本気だった。
命を捨ててもいいというあの狂気。
2002年。まだその雰囲気が残っていた。
伝統の一戦。
やはり何かが起こる。
弱いものが強いものを倒すあの喜び。
あの時代にはまだあった。
伝統の一戦はグラウンドの中だけでなく
外野席でもドラマがあった。
こんな事件があっても
翌日にはみんな何事も無かったかのような顔をして球場に来る。
それが阪神ファン、
いや、外野にいる全てのプロ野球ファンの凄いところだ。
「外野は黙っとけ!!」
社会人となってからよく使われるフレーズ。
いやいや。
黙ってないのが
外野です。
続く