1999年から2003年までの阪神タイガース その㉗
阪神甲子園球場。
伝統の一戦の風物。
16:00頃から巨人の選手が試合前練習とアップを始める。
丁度レフトのバックスクリーン寄りの所だ。
巨人の選手が出てくると、
真っ先に集まり喜ぶのがタイガースファンだ。
罵り合戦がスタート。
「帰れコール」から始まり、
巨人の選手がこっちを見て笑う。
タイガースファンが罵り倒す。
一番乗りがアイパーだ。
「待たせたなお前ら〜!!!」
巨人の選手が一斉に笑う。
「出た!!またいるよあいつ!!海ぼうず!!」
アイパーは巨人の選手の間で有名だった。
選手は勿論、コーチやスコアラー・通訳までこっちを見て爆笑している。
通称「海ぼうず」
社会の底辺が何億も稼ぐ成功者達に向かってゴシップネタと誹謗中傷を叫び倒す。
彼らは一打席でアイパーの生涯年収を軽く超える。
片手にはプレイボーイ。
不倫・容姿・不振
アイパーは叫ぶ。
もう何でもありだ。
遂に後藤がキレた。
後藤「降りてこいコラ!!海ぼうず!!」
プロ野球選手は怒らせるとマジで怖い。
アイパーも負けじとキレる。
「お前が上がってこい!!!」
「控えのくせにレギュラー取ってから言えや!!」
試合前からの大乱闘だ。
誰も怪我をしないのが不思議だった。
アイパーは毎試合執拗に巨人の選手を飲みに誘った。
年俸5億5000万の松井秀喜に春日野道の大吉で焼き鳥を食おうと叫ぶ年収180万のアイパー。
社会の底辺が何億も稼ぐプロ野球選手を飲みに誘うなんて滑稽な姿だ。
後藤は相変わらずブチ切れ。
高橋由伸・元木・上原はガン無視。
川相は黙々と練習していた。
遂には自分の携帯番号を叫び倒す始末だ。
飲みに行こうや!!電話かけてこーい!!
とある選手がポケットから携帯電話を出した。
「おいコラ海ぼうず!試合後待っとけ!!」
阪神ファンから拍手喝采が起こった。
この光景は忘れられない夏の思い出だ。
岡島・條辺・三浦貴は阪神ファンと大の仲良しだ。
冗談にもいつも応えてくれた。
岡島はオカジオカジと声援を貰っていた。
本当に可笑しな光景だ。
岡島が不調で二軍に落ちた時はみんなで心配した。
この件でアイパーが宮田ピッチングコーチにキレたのは有名な話だ。
「宮田!!何でオカジ落としたんや!!あの子ええ子やんけ!!!!長嶋呼んでこーーーい!!!!!」
社会の底辺が輝かしい成功者の不調を「あの子」「ええ子」と心配する。
巨人の選手は大爆笑だった。
條辺は香川で美味しいうどん屋を聞いたら教えてくれた。
若かりしルーキーの三浦貴。
阪神ファンが手を振るといつも爽やかな笑顔で応えてくれる。
「お〜!!今日も皆さんお疲れ〜!!!」と。
彼は爽やかで阪神ファンに物凄く人気があった。
ヤジには決して動じない。
隔たりを感じない優しさがあった。
上記を読んで、不快になる?
それは違うな。
何が凄いって、
こういった光景が見れたのは当時の野球場だけだ。
社会の底辺が何億も稼ぐ成功者に全力でアピールし、笑いを取る。
アイパーが叫ぶとレフトスタンド全体に笑いが起きる。
アイパーは巨人の選手にも一目置かれる日本一有名なタイガースファンだ。
「ほらほら!!またいる!!あいつ!!」
こんな事を言われるタイガースファンはいるか?
平日にも全試合、試合前に罵りに来るアイパーを巨人の選手は心配する始末だ。
「お前、いつもいるけど仕事何してんだよ!!」
「いつ飲みに行くんだよ!!」
繰り返す。
こんな事を言われるタイガースファンはいるか?
相手はプロ野球選手だよ?
長嶋監督に全力で手を振るアイパー。
監督もきっと困ったはずだ。
アイパーは人気者だった。
どんな人間であれ、
記憶に残るという事は魅力があるという事だ。
罵り合戦は2003年には無くなった。
理由?タイガースが強くなったからだろう。
二次会の帝王。アイパー。
タイガースファンは全員アイパーを知っている。
誰よりもタイガースを愛した魅力のある男。
そして、巨人の選手も全員アイパーを知っている。
きっとアイパーはジャイアンツを忌み嫌い、何周も何周もして心から愛していたから。
これもまた、滑稽だ。
三浦貴さん、お疲れ様でした。
あの時は本当にありがとうございました。
そして、ごめんなさい。
哀悼の意を込めて。
分隔たりなく僕たちと接してくれた
三浦選手に心より感謝します。
ゆっくり休んで下さい。
ご冥福をお祈りします。
続く
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