1999年から2003年までの阪神タイガース その⑱
僕らは違和感を感じていた。
夏にはタイガースのマジックが点灯。
球場には連日多くのファンで溢れかえった。
この日も平日にも関わらずチケットは完売となった。
応援は楽しい。
勝つと嬉しい。
満足だ。
しかし、なんか「張り」が無い。
二次会は現役選手のヒッティングマーチ、そして阪神を讃える内容ばかり。
新庄や和田といったOBの応援歌もついてこない。
もはや巨人など眼中にない。
サークルのようなノリ、昨年まで見た事の無かった連中が仮装して球場にやってくる。
「弱い阪神」は過去のものとなり、
タイガースは連日勝ち続けた。
数年前まで梅雨時期に最下位が確定していたチームとは思えなかった。
かつての二次会の帝王は間違いなくアイパーだ。
しかし、ファンがあまりにも増え統率が取れない日が続いた。
アイパーはそんな中、クーデターに逢う。
既にその権力を失っていた。
勝ち続けるタイガース。
「巨人への憎しみが消えた」事も二次会衰退の大きな要因となった。
軍団はニワカに邪魔をされ、
この日も満足した二次会が出来なかった。
僕らは西宮駅前の白木屋で反省会を行った。
みんな表情は真剣だ。
「アイパーを知らんかったら、ニワカやな」
ハマ君が言い出した。
確かにそうだ。
アイパーが指揮を執る二次会。
二次会の中心はアイパーだ。
これには暗黙のルールがあった。
実際、二次会最中に見た事もない奴が壇上のアイパーを引き摺り下ろし、全く面白くないコールをしている。
全くウケない。
トラブルの要因となった。
何度も何度もそういった光景を目にした。
僕らは呆れていた。
当時の甲子園はトラブルが多かった。
まとまりの無い二次会、今年から来ました丸出しの人間が大騒ぎ。そしてクーデター。
日本中で巻き起こるタイガースフィーバー。
マスコミは二次会を取り上げ騒ぎ立てた。
警備員の数が増え、甲子園警察も目を光らせるようになった。機動隊も連日見るようになった。
そして、これが大きい。
「阪神電車での二次会、事実上廃止」
連日多くのファンが阪神電車を使うようになり、
クレームやトラブルが増え問題となった。
関東の総武線では中吊り広告を破ったファンが器物破損の容疑で逮捕されたという話があった。
そしてアイパーだ。
かつては甲子園の二次会の帝王。
あらゆる所で完璧にマークされていた。
「お前、アイパーの友達?」
ガラの悪い人間に絡まれる事もあった。
今年から甲子園に来るようになった連中だ。
これには僕らも参っていた。
かつての二次会の帝王はあらゆる所でマークされ
、トラブルの要因となっていた。
そして、遂に二次会参加者の中から逮捕者を出した。
頭を抱えた。
タイガースが強いのに
全く楽しくない。
トラブルに巻き込まれたら
タイガースの優勝を目にする事が出来ない。
白木屋で僕らは決めた。
「タイガースが優勝するまで二次会への参加を自粛しよう」
この日から、二次会は不参加。
甲子園での観戦後は応援グッズを全てしまいバスで甲子園口へ。
そのまま静かに帰る事になった。
自粛。
とても辛い決断だった。
僕は涙を流した。
この日もタイガースは勝利し、
マジックは一つ減った。
タイガースを誰かに奪われていくのが
顕著に分かった。
日を追うごとに辛かった。
常連が一人、
また一人減って行く。
愛するタイガースの為
僕らは二次会を行わない事を決めた。
2003年7月。
この日は大雨。
二次会自粛。
こんな日が来るなんて
夢にも思わなかった。
続く