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海球小説 ネタバレあり

 『海球小説』はAS当事者の横道誠さんが書いた小説です。

 舞台は地球そっくりなパラレルワールド”海球”です。
海球では、自閉スペクトラム症の人の方がマジョリティで、定型発達者はマイノリティです。
 海球では自閉スペクトラム症者に向けて社会ができています。
 感覚過敏の人が多数のため街はどこも静かで、テレビゲームは音や光の刺激が少なく作られ、研究活動に向いた人が多いため義務教育が20年間もあります。人と話すときに目を合わせないし、自分の関心のある事へ没頭している人が平均的です。

 そんな惑星で、我々の社会でいう所の定型発達者の少年ミノルが主人公です。
 ミノルは、目を合わせて話すし、人と仲良くなりたがるし、一人で過ごすことが苦手です。自閉症スペクトム症の人達からしたら、関心のあることに没頭することができないおかしな子供で、”感覚鈍麻”もあると言われます。

 ミノルは自閉症社会とのずれに悩み、病院で検査を受け障害児と認定されます。その後は、生きづらい社会でどのように生きていくのか模索するのだが…といった話でした。

 ミノルは”海球”の日本で、平均からずれているので、生きづらさを抱えます。そして、自閉スペクトラム症者を擬態することに苦しみます。改めて平均からずれた人を障害と名づけることに対し疑問を抱きました。

 最後の解説の村中直人さんの言葉がとても良かったです。
”目指すべきは、少数派が多数派のようになるための方法ではなく、誰が少数派になっても生きづらさを抱えにくい社会です。”   


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広司
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