八幡市長選レポート2023年11月【北陸の選挙ウォッチャー】
11月5日告示、11月12日投開票で京都府の八幡市長選挙が行われました。
京都と大阪の境に位置するベッドタウン、八幡市。
今回の選挙は大変注目を集めました。
市長の堀口文昭さんが任期途中で辞任いたしました。今回はその辞職を受け、3人の新人による争いとなりました。
2023年の立候補者
今回の八幡市長選は来年2月に行われる京都市長選の前哨戦ともいわれ注目を浴びる選挙となりました。
政党の組み合わせのみで考えるのであれば、今回の選挙は「共産vs維新vs自民・立憲・公明」のたたかいで、組織力のみで考えれば川田翔子さんがその組織力を活かして圧勝するものと予想されます。
参院選の比例代表では維新は7801票で八幡市では第1党となっており(自民は6700票)、その勢いで八幡市長選も勝利につなげたいと考えていたと思います。しかし、馬場代表の社会福祉法人乗っ取り「事件」、現職議員のセクハラ・パワハラ、大阪万博の費用がドンドン増えて尚且つ参加国の辞退、空をグルグル飛ぶはずだった空飛ぶ車が飛ばないことなど、悲惨な状況が明るみになってきており維新人気も陰りが見えてきました。
共産党は全国的に党員の高齢化やネトウヨなどによる反共攻撃の影響で選挙では苦戦しており、この選挙ではどこまでその低調傾向を踏みとどまり、躍進に結び付けるかが注目されます。
そして33歳の若い女性候補を擁立した自民・立憲・公明はその組織力を背景にどこまで票を獲得し、最年少の女性市長を誕生させることができるのかが注目ポイントです。
亀田優子さんの主張とたたかい
亀田優子さんは八幡市議を5期20年務められ、今年春の府議選に立候補されましたが惜しくも落選されました。
市議時代は上位当選も多く人気・実績のある市会議員でした。
公約に『すぐやる10のプラン』を掲げて、それを訴えました。①18歳までの医療費無料化、②学校給食費無償化、③府立高校のタブレット購入費支援、④18歳までの国保料均等割りを無料化など、市民目線のあたたかい政策ばかりです。他候補も似たような政策もありますが、亀田優子さんはそれらの政策にすべて必要な予算を含めて訴えていることはもっと評価されてほしいところです。どんなによい政策を掲げても、それにいくらかかるかわからないものもありますが、金額に直すと「これくらいの金額で実現できるの?」と驚くものもなかにはあり、今までの市政がどれだけケチで市民目線の政策を実現してこなかったかがわかります。選挙運動は団地やショッピングセンターの前など、場所の大小にかかわらずいろいろな場所で街宣で政策を訴えていたことは好感が持てました。SNSでも候補者自ら発信をしていて、候補者として日々の宣伝運動をする中で、多くのツールを使っていて、能力の高い方だということがわかりました。ただ立候補表明が選挙の1か月前と他候補に比べて大変遅く、準備期間があまりにも短かったことが残念です。そしてSNSも直接的な投票行動には結びつくことは少ないですが、選挙期間中だけでもチームを組んで計画的な発信をできれば候補者の負担を減らすことができたのではと思います。
川田翔子さんの主張とたたかい
川田翔子さんは京都大学を卒業後、京都市役所で勤務され、その後は自民党の山東昭子参院議員の秘書を経て、今回の市長選挙に立候補されました。年齢も33歳と非常に若く、その候補者を京都府知事、地元選出の自民・立憲・公明の国会議員などの厚い支援を受けての選挙戦となりました。
選挙期間中は立憲の山井和則衆院議員を中心に、自民党、公明党の議員などがずっと応援に入っており、絶対に負けられないたたかいということが伝わってきます。選挙中は維新の候補が追い上げているとの情報も入り、満を持して最終日には西脇京都府知事も応援演説をいたしました。
山井議員は「京都では自民・立憲・公明の組み合わせでなければ京都府、国との連携はできない」と話しておりましたが、京都府ってそんなに懐の小さい行政なのかと思ってしまいます。
大阪の堺市長選挙の時に維新の候補は、「市長が維新でなければ大阪市、大阪府との連携はできない」との主張に対し、一斉に批判しましたが、同じ理屈を京都にも持ち込むのは筋が悪いのではないかと考えます。
その理屈なら日本中が自民党の知事、市長でなければ国との連携は取れないのではないでしょうか?
選挙の期間中とはいえ、子供だましな理屈を持ち込むのは、いつかは自分の首を絞めることに繋がると思います。
街宣などは大量の運動員が投入され、若い候補の勝利を後押ししました。
政策は、「18歳までのこども医療費無料化」「給食費無償化を目指す」と書いてありますが、小さい字で「国・府と連携し」との言葉があります。
どういう意味でしょうか?
国や府がそれらの政策を後押しするならやるけれど、そうじゃなかったらやりませんという意味ではないでしょうか?
そういう連携など邪魔でしかありません。国や府の支援できない、支援が足りない、支援さえしてくれないことでも、市が必要と判断したことは連携など関係なくするべきです。
そのような条件付けは、やらなかった時の言い訳を今から準備しているように感じます。
はっきり言います。僕は若い女性候補を自民・立憲・公明が担ぎ出したのは神輿は軽いほうがいいからだと思います。(だいぶ言葉を抑えてます)
維新よりはましだけど、市政を変えてくれる候補ではないように思います。
でも多分勝つんです、若いし、見た目がいいし、何よりも支える組織が大きいから。
尾形賢さんの主張とたたかい
尾形賢さんは元々は自民党の府議でした。
京都府議を3期務めて、2019年の京田辺市長選挙に挑戦しましたが、落選し、今年の八幡市長選挙に立候補いたしました。
元々は自民党の推薦で立候補を希望していましたが、自民党が川田翔子さんの推薦を決めたことにより、維新に乗り換えて、維新公認での挑戦になりました。この時点で当選させてはダメな人間です。
自民に断られたからといって維新の門を叩くなんて、市長になりたいならどの党でもいいという姿勢は絶対に許してはいけません。
山城青年会議所の主催する討論会では学校給食費の無償化を目指すと言いながら、司会者からその財源は?と聞かれたら、「私は無償化とは言っていません」と答えて、討論会の空気を一瞬凍り付かせました。
口を開けば身を切る改革ばかり言い、ここまでくると何も考えてないのではと思ってしまいます。
討論会を見て思ったのは、財政の効率化、教育の無償化などを言いながら、財政面の知識が乏しいことです。その事業にいくらの予算がかかるのかを理解せずに政策を並べているように感じました。
たたかう姿勢のみをアピールして、その実態は細かいデータが全くないのは、特攻服に髪型をばっちり決めてるけど、実は空手を通信教育で少し学んだだけの弱い兄ちゃんと変わりません。
選挙公報も政策が8つ書いてありますが、全く具体性に乏しいものばかりです。
ただ選挙運動はとても力が入ってました。公示前と最終日にはイソジン吉村府知事が入り、藤田幹事長も最終日に八幡市入りして応援演説をしていました。
すごい数の聴衆が集まり、近所は渋滞になるくらいでしたので、もしかして逆転があるのかと思いましたが、組織力の差に跳ね返されました。
選挙公報の趣味「占い」は約に立たなかったのでしょうか?
2023年選挙結果
大方の予想通り川田翔子さんが当選を決めました。
しかし政党の力量から考えると川田翔子さんは参院選の自民・立憲・公明の得票から3000票も減らしています。
それに対し、尾形賢さん、亀田優子さんはそれぞれの推薦政党、公認政党の得票数より伸ばしています。尾形賢さんは10%増、亀田優子さんは110%増となっています。
八幡市民は川田翔子さんを市長に選びましたが、今までの市政継承には批判的な市民も一定数存在し、市政を変えてほしいと願っていることが示されたのではないでしょうか?
京都市長選の前哨戦と言われていますが、選挙の準備期間、候補者の数、政党の組み合わせなども異なり、一概にこの結果が参考になるかは疑問があります。
選挙ウォッチャーの考察と今後の予定
今回の市長選の後、市議会の維新会派は3人から1人抜けて2人になりました。市長候補の人選が八幡の維新の内部にしこりを残したのだと思います。そして尾形賢さんは自民を裏切って維新に移ったこともあり、今後は何かの選挙で維新から立候補するものだと思いますが、彼はそれで本当に良かったのでしょうか?
自民より維新を選ぶという決断をしたツケは意外に大きいように思います。
そして川田翔子さんは公約に掲げた「子供の医療費無料化」「学校給食費無料化」はどこまで実現するのでしょうか?
4年後の市長選挙までチェックしていきたいと思います。
亀田優子さんは八幡市政のことも詳しく、市役所の中のことまで知り尽くしているような方でした。しばらく政治の世界に直接かかわることはないと思いますが、どこかでまた議員に復活してほしいと思います。
京都とはいえ、大阪に接する八幡市でも維新の影響力は広がっていることを実感しました。ただ、街宣で聴衆が集まっていたのはイソジン吉村が演説している場所のみで、藤田幹事長が演説をしている別の会場ではほとんど人が集まっていませんでした。維新人気というよりも、イソジン人気といったほうが正しいかもしれません。ただ大阪万博の悲惨な状況が国民に知れ渡るほど維新の人気は落ちてはいくと思います。落ちてもらわなきゃ困るのですが。
12月19日より地元石川県の志賀町長選があり、その取材に行く予定です。町長が建設会社より賄賂を受け取っていた見返りに入札情報を建設業者に教えていたことにより前町長の逮捕・辞職による選挙です。
そしてすでに取材済みの福井市長選挙もレポートを書かなければいけません。今年中には書き終えたいと思っています。