井手町長選・町議補選レポート2023年8月【北陸の選挙ウォッチャー】
8月8日告示、8月13日投開票で京都府井手町長選と町議補選が行われました。
北陸を中心に選挙ウォッチャーとして活動していますが、北陸の地方選が12月までありません。
どこか面白そうな選挙が日帰りで行ける範囲はないかなと探してみると、ありました。京都の端っこに。
調べると金沢から片道4時間。ちだいキャスのリスナーとして4時間は自宅の庭の距離だと思い、行くことを決心して準備を始めました。
そんなことで、ちょうどお盆休みも重なり、ちょっと足を延ばして京都の井手町長選の取材に行ってきました。
井手町は京都の南部の人口7,900人の小さな町です。
なんと今の町長の汐見明男さんは7期28年もの間、町長を務められ過去4回は無投票で、町長選挙は20年ぶりに行われます。
それにしても20年もの間、町長選が無投票とは決して健全とはいえません。町長の仕事に対して住民の審判もなく20年間もの間、行政の舵取りが行われてきました。そして町長が75歳になり引退されて今回の町長選が行われることになりました。
初めてこの町に行きましたが、実際に行った感想は、とても不便な町という事です。道は車のすれ違いもなんとかできる細い道が殆どで、町にはスーパーもありません。バスもありません。車がなければ生活できない町です。病院に行くのも一苦労のこんな町で高齢者はどうやって生活しているのでしょう?
隣の市まで行かなければ日々の生活を送ることもできません。
車椅子の妻のいる僕にとって、もしこの町で生活しろと言われてここに放り込まれたら、目の前が真っ暗になるでしょう。
買い物、病院、車が何とかすれ違うことができる細い道、、、障碍者や高齢者にとっては本当に生活のしづらい町が住民の声を無視する行政によって作り上げられたのです。
20年間も無投票で町長が決められていたこの町では、町長の行政に対して反対の声は絶対にあったはずですが、全く汲み取られてきませんでした。
今回の町長選は今までの町長の取り組みに対する是非を問い、この町の将来を決めるうえで重要な選挙となりました。
2023年の町長選立候補者
西島ひろみち 49 無所属 新人 自民・立憲・公明・国民推薦
谷田みさお 65 無所属 新人 共産推薦
立候補者の顔ぶれを見て、何となく結果の見えた選挙となりました。西島ひろみちさんも谷田みさおさんも現役の町議でしたが職を辞しての立候補となりました。
西島ひろみちさんは49歳の町議会議員で4期目途中に現町政の継承を訴えて議員を辞して町長選に立候補しました。
自民・立憲・公明・国民の4党からと尚且つ京都府知事と現職町長からも推薦され、この時点で勝負ありと思われます。ポスターは何となく維新を思わすような緑色・・・、もうこれ以上付けるものがないくらいオプションパーツを付けたトヨタクラウンのような感じに仕上がっています。
僕は投票日前々日の8月12日に井手町に行きましたが、西島ひろみちさんは選挙運動といえるものはほとんどしてませんでした。選挙カーも走らせず、当然ながら街頭での演説もありません。もう既に勝利を確信したかのような戦いぶりでした。
谷田みさおさんは共産党の現職の町議で8期目途中に議員を辞して、町長選に無所属で立候補いたしました。
推薦は共産党のみで組織戦では敵うわけがありません。
以下は昨年の参院選の比例代表の主要政党の得票数です。
自民 1036票
立憲 448票
公明 433票
国民 103票
維新 536票
共産 263票
その他 265票
推薦政党の得票をそのまま当てはめると、
自民、立憲、公明、国民 2020票
共産 263票
これだけ考えても勝負になりませんし、計算に含めていない維新の票が西島ひろみちさんに積み増されたとしたら、差はもっと大きくなります。
京都では比較的共産党が強いイメージはありましたが、地方部はそれほどでもないようです。
しかし僕が井手町に行った時に感じたのは全く違う空気でした。
まず選挙カーを走らせているのは谷田みさおさんの陣営だけで、また運動員や支持者などが町中でいろいろな形の運動に走り回っていました。
町のいたるところには「女性町長/便利なバスを/走らせよう」のポスター。
名前が書いてないからOKなのですが、如何にも谷田みさおさんを市長に推すポスターが色々なところに貼ってあり、今までの町政からの転換を訴えています。
僕が取材でいた4~5時間の短い間に感じたことは、本当に暮らしていく上で不便な町だということです。道路整備がほとんどされず、公共バスがないなど、今までの町政には当然住民も不満を持っていたと思います。町長選挙がなかったことで、全く住民の要求を汲み取ることもなかったのでしょう。
しかし谷田みさおさんは井手町議会の共産党ただ一人の議員です。勝つ見込みの少ない町長選に立候補するリスクはあまりにも大きすぎます。
しかし同時に行われた町議補選、定数2に対して3人が立候補しましたが、共産党はこれ以上ないほどの必勝態勢で選挙に挑みました。
町議補選立候補者
谷田ケンジ 70 共産党 新人
木村けんた 42 無所属 新人
加賀山 睦 70 無所属 新人
谷田みさおさん、西島ひろみちさんが議員を辞職したため、定数は2です。そこに3人が立候補しました。
谷田ケンジさんは元教員の70歳のお爺さんです。
名前を見て、あれっと思った方も多いと思いますが、町長選に立候補している谷田みさおさんの夫です。
もし二人とも当選した場合、妻が町長、夫が町議って、なんかやりにくいなあと思いますが、選挙では「谷田」と書けばOKなので、支持を訴えるのはしやすいかもしれません。
町議の選挙宣伝で「谷田」、町長の宣伝で「谷田」、とにかく「谷田」を訴えればいいので支持は広がりやすいかもしれません。両候補でそれぞれの支持を間接的に直接的に訴えることができるため、ある意味最強の布陣です。
木村けんたさんは42歳の無所属候補で、こちらも西島ひろみち町長候補同様に府知事と町長の推薦を受けています。町中探しましたけど、選挙カーは全く走っていませんでした。既に勝利を確信していたのでしょう。
今年の8月は例年以上の暑さで、選挙運動も大変だったと思います。ここは42歳の若い候補とは言え、全く無理せず勝利を掴み取ろうとしたのだと思います。
それにしてもこのポスター、写真がイラストのように見えて、すこし怖い気もします。見れば見るほどイラストに見えてきます。。
選挙結果
町長選挙 投票率57.96%
【当選】 西島ひろみち 49 無所属 新人 2227票
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谷田みさお 65 無所属 新人 1165票
町長選挙は大方の予想通り西島ひろみちさんが2000票以上を獲得して当選となりました。しかし現町政の継承をうたった西島ひろみちさんに対して、変革を訴えた谷田みさおさんが3分の1以上の票を獲得したことは善戦に値します。この町の声なき声を形にして、少しずつでも町政を変えていく力になっていくものと考えます。当選した西島ひろみちさんも批判票の存在をしっかりと受け止め、住みよい町に変えていってほしいと思います。
町議補選 投票率57.94%
木村けんた 42 無所属 新人 1566票
谷田ケンジ 70 共産党 新人 1027票
--------------当落ライン-----------------------
加賀山 睦 70 無所属 新人 794票
木村けんたさんと谷田ケンジさんが当選となりました。谷田ケンジさんは井出町の共産党の過去最高得票となったようです。
今回の共産党の選挙戦略は町長選、町議補選を連携してたたかうことで、最低でも町議補選での勝利、万が一でも町長選を勝てるようなことがあれば万々歳といった形でたたかっていたと思います。そういう狙いからすれば充分の結果だと思います。
選挙ウォッチャーの考察
井出町、本当に不便な町でした。道は細く、くねくねで、すれ違いの難しいところがたくさんあり、店もほとんどありません。
そしてバスも走らない町。
多くの町民は不満を持っていると思います。
それらの声をずっと無視し続けてきた町政。この選挙をきっかけに変わり始めてほしいと思います。
10人乗り程度の小さなバスが町の中を走り回り、それが病院や隣町のショッピングセンター、駅などと結ばれるだけでも今よりも住みよい町になると思います。
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