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留学後に変わったこと2.1 覚悟

今回は「覚悟」について、私の過去を振り返りながら考えてみます。
「ちょうどいい覚悟」って難しいよね、という話。
なんのこっちゃ(笑)

ちなみに覚悟ってシリアスな場面ですることが多いですよね。
靴を履くときとか、歯磨きするときとか別に覚悟しないもんね。
もし毎回相当な覚悟を持って靴を履くことや歯磨きに挑む人がいれば、
ぜひコメント欄で教えてください。

田舎の道路で気づいたこと

私は留学を決意するまで、ずいぶん悩んだ。
長期留学に行くには、仕事を辞めなければならない。

だって、無職になるんだよ?お給料ゼロだよ??
もう一生正社員になれないかもだよ???

散々考えたけど、実のところずっと前から覚悟は決まっていた。
そのことに気が付いたのは、田舎の道路のど真ん中だった。
私は外交先から帰る途中で、どんよりした気分で社用車を運転していた。

私の営業成績はぱっとしなかったが、
周りの同期や後輩、先輩には全国レベルで成績を残す人が沢山いた。
比較すると非常にみじめな気分になった。

そして、私は特に業務内容が好きになれなかった。
証券会社は金融商品を顧客に販売している。
簡単に言うと、株や投資信託、債券などだ。

金融商品の一番の特徴は、価格が常に変動する事。
極端に言えば、買った翌日に価値が倍になったり、逆に半分になったりする。
こんな生き物のような商品は、他にはない。

会社が存続するためには、収益を上げ続けなければならない。
そのため、時には下落する可能性が高い商品を顧客に販売する事もあった。
私はそれを仕事として割り切ることが出来なかった。

本当はずっとわかっていたと思う。
でも、そういう気持ちに蓋をして働いていた。
給料も待遇も良い正社員の地位を失いたくなかったからだ。

その日も田舎の広い道路を運転しながら、もやもやとした気持ちでいた。
ふと思った。

「いつまでこの仕事やるんだろう?」

その瞬間、肺の中にどっと湿った空気が流れ込み、私の身体はずっしりと重くなった。

重くなった身体で運転しながら私は自分の中に、大きな覚悟がずっと前から横たわっていることに気づいた。

そして、流れ込んだ空気を吐き出しながら思った。

「辞めよう」

茂造のささやき

2020年3月、留学出発の直前に証券会社を退職した。
そして同月、コロナウイルスによりパンデミックが発生した。

あれだけ覚悟決めて退職したのに、コロナかよ!
私の中の吉本新喜劇が総ズッコケした。

正直非常にがっかりした。
こんな奇跡のタイミングってあるのか。
パンデミック発生のニュースをスマホで見ながら、私はしおしおと萎れていった。

しかし、ふと茂造が私に囁いてきた。
「こんなんどうしようもないやん」
「許してやったらどうや?」

先に断っておくが、私は非常に能天気な性格である。
すぐに私はコロナという大義名分を使って、
留学に出発出来るようになるまで合法的にプー太郎生活が出来ることに気が付いた。

これは究極の人生の夏休みだ!
そのまま私は夢のプー太郎生活に突入した。

注)茂造をご存じない方は、「許してやったらどうや?」をYouTubeで検索される事をお勧めします。

的外れな覚悟

私はパンデミックが落ち着いて渡航できるようになるまで、結局1年半も留学を延期した。
もちろんずっと無職であったわけではない。
失業保険をもらいながら、アルバイトを転々とした。

いつになったら、コロナが収束してアメリカへ行けるのだろうか?
しかし先の見えないコロナ渦の中でも、私は自分の気持ちが少しずつ変化していくのを感じた。

「正社員じゃなくても、なんとかなるかも」

証券会社を辞めるとき、あれだけ覚悟していたものは一体なんだったのか。
状況は想定していた100倍悪化しているが、それでも生きている。

コロナ渦の特別枠ということで、失業保険は多めにもらえた。
幸いにも実家を頼りにできる状況であったし、
アルバイトも仕事内容を選ばなければいくらでもあった。
ステイホームによる人間関係の希薄化が社会問題となっていたが、私は何でも話せる友人に恵まれていた。

私のしていた覚悟は、大いに的が外れたのである。
想定していた状況も、人生計画も何もかもが変わってしまった。
果たして運が良かったのか、それとも悪かったのか。

覚悟と保険は似ている?

商品としての「保険」とは、未来に何かしらの損失の可能性があると予測したとき(例えば、病気になる・事故に遭う・地震が起きるなど)、金銭でその損失を穴埋めできるように購入する金融商品である。

私は失業保険に加入していたため、パンデミックの影響で実質的に失業状態になった際に給付金を受け取ることが出来た。

一方で、覚悟は「買う」のではなく「する」ものである。
覚悟は商品ではないので、どこかで買えるわけではない。
しかし、「不確定な未来を予測して最悪の事態に備える」という点では保険によく似ている。

保険と覚悟で違うのは、何を事前に準備できるかという点だ。
保険では金銭的補償を、覚悟では心理的補償を準備できる。

ここでいう「心理的補償」とは、
「事前に嫌な事を想像して嫌な気分を味わっておき、いざその事態が起こった時に、あまりショックを受けないようにすること」である。

さらに嫌な事をシュミレーションすることによって、保険のような実際に自分を助けてくれるアイテムの必要性に気が付き、事前に用意することもできる。

ちなみに保険は、年金などの一部の保険を除き、基本的には不幸になった人のみが金銭的に得をする不思議なアイテムである。
例えばがん保険を掛けてもがんにならなければ、単に保険料の無駄である。

では覚悟はどうか。
こちらも同じように、実際に不幸になった人(事前に想定していた悪い事態が起こった人)だけがその恩恵を受けられる。

私は正社員という地位を捨てることに対して不安を抱き、嫌な事があってもショックを受けないように「覚悟」をして、いざという時の心理的補償を備えていた。

だが実際のところ、想定より状況は悪くなったにも関わらず、覚悟していたような事態にはならなかった。
正社員じゃなくてもお給料がない時期があっても、とりあえず1年半はなんとかなった。

私は非常に楽天家なのであまり深く考えすぎなかったが、世の中には最悪の状況を覚悟してそれに備えようと何度も何度も嫌な事を想像するあまり、ストレスで病気になる人もいる。

覚悟は「する」ものなので、「やりすぎる」事もあり得る。
保険の掛けすぎは金の無駄、覚悟のし過ぎは心配の無駄というわけだ。

次回へ続く!

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