司法試験4回目合格の合格体験記
司法試験1回目~3回目 論文不合格
→4回目で合格した際、勉強方法をどのように変えたのかについてまとめたものです。
近年は複数回合格者がかえって珍しいので、どういうところを改善して合格できたかの参考になればいいなと思います。
一発で合格するような方には参考にならないかもしれません。
司法試験についてこれ以上記事を書くつもりはなかったのですが、ローの合格体験記を見てくれという説明だと不親切だと某修習生に直接言われてしまい、それもそうだなと思ったのでまとめておくことにしました。
1 3回も不合格だった理由
論文式試験は、
①条文・論点が合っているか
②規範や論証が合っているか
③あてはめが適切か
の3点が重要だと思います。
点数が伸びない場合、どの部分に問題があるかを見抜く必要があると思います。
私は①②が不十分で不合格が続きました。
2 論文式試験
⓵ 条文選択誤り、論点誤りについて
私は、条文を間違うことが多かったです。
憲法の問題文を読んで、何条の問題なのかわからない、というレベルで条文選択が苦手でした。本を読んだり、少し考えたりしてもわからないものは、理解しようとするより、こういう問題は〇条の問題だ、と覚えてしまうようにしました。
条文が当たっても論点が抽出できないことがあります。論点も、こういう事例はこういう論点が問題となる、という流れを覚えました。理解が後でついてくると、暗記したことが理解に変わり、最終的な暗記量は減ると感じたため、始めは何でもかんでも覚えてしまうようにしました。
過去問の他に、アガルートの重要問題習得講座で、条文と論点を抽出するトレーニングを繰り返しました。また、基本書の目次を見て、単元ごとによく出る条文や論点を思い浮かべるという勉強もしました。うまく出てこない部分は、暗記できていない、または理解できていない部分なので、覚え直すようにしました。
② 規範や論証があいまいである点について
規範や論証があいまいだと、あてはめを間違えるので、暗記を最優先としました。暗記時間は1日4~5時間は確保していました。
私は3回目受験時には弁論主義の第1テーゼが言えませんでした。というか弁論主義と処分権主義の違いもわかっていませんでした。こんな状態なので暗記は最優先事項でした。
暗記の対象は、「アガルートの司法試験・予備試験 総合講義1問1答」(サンクチュアリ出版)の中でも絶対に覚えないといけないもの(例えば、行政法の処分性の定義や刑事訴訟法の伝聞証拠の意義など)を覚えることにしました。
暗記の対象は基本書でも趣旨規範本でもいいと思います。暗記の対象を決めてしまうことが重要かなと思います。
ひらがな一文字ずつでもいいので無理やり覚えます。その過程で覚えたことにより、理解が後からついてきた知識もたくさんあることに気が付きました。覚えるべきことは後回しにしないで、覚えてしまってから理解すればいいと考えるようになったことが、点数が伸びたきっかけになったと思います。
論証集もアガルートの論証集をほぼ丸暗記しました。私は理解力に乏しいため、とりあえず、むりやり丸暗記してから理解するようにしました。
暗記は3回目に不合格となった2022年9月に始め、2023年2月にはだいたい覚え終わっていました。7月の試験までは、覚えたことを忘れないように確認する程度の学習で済みました。
不合格だった年は、暗記より理解だと思い、暗記をおろそかにしていましたが、今では本当に暗記は大事だと思っています。
答案の型だけ身についても、その型に流し込む言葉が不正確だと、点がつけられないということを痛感しました。
本試験当日は、知識面ではなんの不安もありませんでした。試験会場には司法試験六法だけ持っていき、条文の位置を確認するという余裕な過ごし方をしていました。
手が勝手に動くレベルで定義と論証の暗記は完璧でした。その分、わからない問題を考えたり、あてはめをたくさん書いたりする時間をとることができ、全体の点数が伸びたと思います。
近年の司法試験は、論証を覚えていれば勝ちという出題は少なくなっています。
それでも、規範や論証などの暗記ものを覚えていれば、思考過程が問われるような問題にじっくり取り組むことができるので、
暗記の重要性は以前ほどではないですがいまだに重要だとは思います。
また、2026年からCBT試験が始まります。
タイピング力で差がつく問題は出しにくいと思うので、当てはめ重視ではなく知識重視な出題になる可能性もあると思います。
いずれにせよ暗記はしておきましょう。
③ あてはめで気を付けていたこと
・自分で立てた定義や論証の文言と、あてはめを合わせるようにしました。事実の摘示はなるべく問題文を丸写しするようにし、問題文を勝手に省略したり、自分の言葉でまとめたりしないようにしました。
事実への評価は比喩表現を使うなどして、自分の言葉で考えたような雰囲気で書くようにしました。
・論文答案をフルで書いたのは、模試のみでした。
私は、誘導に乗ったり、行政法の参照条文を読み解いたりすることが得意でした。時間配分をミスしたこともありませんでした。
このことから、私にとって答案作成は、弱点克服にまったく結びつかないものと判断しました。
一般的には答案をどんどん書こうと指導されているかもしれません。
しかし、おすすめされている勉強を漫然とするのではなく、自分の弱点を把握したうえで、弱点を埋めるための勉強に絞ることが大切です。
④ その他(各科目ごとに勉強したこと)
・労働法:百選の目次を見て、事件名だけで事件の内容・条文・論点・結論を言えるようにする。
・憲法:とにかく苦手なので条文を間違えない。そのうえで、過去問の解答例を参考に、21条はこう書く、23条はこう書く…と書き方を決めておく。
・行政法:処分性・原告適格・裁量論の書き方を決めて覚えておく。
・民法:条文を覚える勢いで読み込む。何条の問題か?からスタートするので。法的三段論法を特に意識する科目。
・商法:司法試験六法を購入し、頻出条文の位置を覚える。組織再編などの複雑な条文は、本番中に探して読んでいたら解き終わらないので、事前に条文の位置を把握し読んでおく。
・民事訴訟法:定義や論証があいまいな人が多いので、特に完璧に覚える。
・刑法:字を小さめにして、たくさん書く。刑法はみんな得意なので、刑法で稼ごうとは思わない。
・刑事訴訟法:ほぼ過去問からしか出ないので、過去問の答案構成を特に徹底する。たとえば領置や伝聞のあたりは基本書や予備校テキストを読むだけでは、書き方がわからない。過去問演習を通して書き方を決めて、書き方を覚えておく。
3 短答式試験
1日1~3時間程度短答の勉強をしました。
教材は、パーフェクト(辰已)と択一六法(LEC)を使用しました。
学習方法は、とにかく何回も解くという方法でした。正解した問題も、忘れてしまいがちなので、何度も解きました。効率は悪いですが、穴がない勉強法だとは思います。時々年度ごとで解いて、点数を出しました。間違えた問題は、どうして間違えたか、どうすれば正解できたか(覚えればいいだけか、他の知識と混ざっていないかなど)を考えて、時間を空けて解き直しました。
また憲法の場合、最新判例が出題されることが多いので、択一六法に載っている新しめの判例の結論と、理由付けは覚えました。憲法が最も足切りが多いため、統治で確実に得点するために、統治分野の条文はだいたい覚えました。私は基本書を使った勉強をしていませんが、短答憲法対策として基本書を読みました。
民法は過去問に出題実績のない条文が出ることもあるため、見慣れない条文は覚える勢いで読みました。
短答式試験は足切りを回避すればいいという意見もありますが、近年の足切り点は100点未満と低いです。短答合格者間での点数格差が、以前より大きいので短答も高得点を目指すことが大切だと思います。
4 その他
・勉強時間はアルバイトがない日は1日10時間以上、アルバイトがある日は4時間~5時間程度でした。
アルバイトは資格予備校の事務と、派遣会社の事務をしていました。
司法試験後~不合格~年末までは6時間×週3~4、
年明け~司法試験までは資格予備校はお休みして派遣会社の事務だけで6時間×週1回程度
というサイクルでした。
・一人でいることが好きなので、勉強仲間は作りませんでした。
・アガルート(当時)の渡辺先生に、添削をしてもらったことがあります。規範と当てはめが合っていないという指摘は渡辺先生に言われないと気づきませんでした。
・一人が好きだけれど独りよがりな勉強にならないよう
時々は誰かに答案を見てもらうことが必要だと思います。
・勉強しなかったのは、コロナワクチンの副反応で発熱した日くらいです。リフレッシュの日は特に設けませんでした。
・健康には気を付けていました。睡眠時間は7~8時間で、眠くなったら無制限にお昼寝をしていました。
・勉強マシーンになったつもりで、感情がない機械になりきって勉強していたので、くよくよ悩んだり迷ったりするということはありませんでした。
・ついついスマホを見てしまう癖があるので、タイムロッキングコンテナという、決めた時間カギがかかる箱を購入し、勉強に集中できるようにしました。
・自分の弱点を埋めるために必要な勉強ができていれば、おそらく2回目で合格して75期になっていただろうなと思います。模試や本試験の点数が悪かった場合、どうして点数が悪いのか、どうすれば点数が伸びるのかを考え、自分に合った勉強をしてほしいです。