【機械安全】安全の定義
はじめに
皆さんは日頃『安全』という言葉を何気なく使っていたり、耳にしたりするかと思います。この『安全』という言葉は国やその人の年齢、環境などによって、もしかしたら伝えている意味が異なっているかもしれません。
ここでは、工場経営者、研究開発者、機械設計者、電気設計者、生産技術者、安全衛生担当、製造技能者を中心に知っていただきたい内容をまとめていきます。
国際的な安全の定義『ISO/IEC』
ISO(International Organization for Standardization)とは国際的に統一された基準を作り、標準化させることを目的にした団体で、『ISO規格』の策定を行っています。ISO規格は電気・電子技術分野を除く国際的な工業規格となります。
一方で、IEC(International Electrotechnical Commission)は電気・電子技術分野の国際規格の策定を行っています。
安全の定義が記載されているのは、ISO/IEC ガイド51というガイドラインになります。ここでは安全を『許容できないリスクがないこと』と定義されています。
初めて聞いた方は、『許容できない』とは?、『リスク』とは?、と疑問が深まるかもしれませんね。
ここで、先にご説明しますと(説明の都合からリスクから)・・・
◆『リスク』とは
危害の発生確率と危害のひどさの組み合わせ(ISO12100)のことです。何か危険なもの(ハザード/危険源)があった際に、それが起きうる確率と受傷した際のケガの大きさの両方を考えた概念です。
例.ライオンに人が襲われたら重症を負ってしまうことがありますが、動物園で檻の外から見る分にはリスクは小さいと言えるでしょう。
【発生確率(極小)×危害のひどさ(大)=リスク(小)】
◆『許容できない』とは
原文の直訳では許容できないリスクからの解放を意味しており、『その時代の社会の価値観に基づく環境下で受け入れられるリスク』を許容可能なリスクとしています。
例.車が往来する横断歩道は一見リスクが高く感じますが、自動車本体の技術向上(ミリ波レーダー搭載など)や交通ルールの順守により受け入れられるリスクとして車を活用しています。
以上より、安全はその時代の社会の価値観に充分に受け入れられているリスクのことで、発生確率や受傷時の危害のひどさから、その大きさを判断しています。
リスクベースの考え方
皆さんは『絶対安全』や『安全神話』という言葉を聞いたことはあるでしょうか?絶対安全と聞くと、何もケガなどが生じない状態をイメージされると思いますし、安全神話もその絶対安全の状態のことを一般に指します。
しかし、『安全』の定義に立ち返ると、安全という状態でもリスクが残っていることを意味します。許容可能とはいえ『リスク』はあるのです。
例.車が往来する横断歩道は安全として受け入れられていますが(前述)、交通ルールを無視して赤信号で進入したら当然事故が起こりえます。
このように何かベネフィットを得ようと行動する際に、リスクがゼロになることはあり得ません。最近のISOなどの国際的な規格や、安全工学の考え方ではリスクをどうやって管理するかの、リスクベースの考え方が主流になってきています。
リスクはゼロにならないことを受け入れて、どういう観点でリスク低減するか、どこまでリスク低減させるか、またその優先順位は?
これらは『リスクアセスメント』という考え方になってきます。
まとめ
・『安全』の定義はISO/IEC ガイド51にて『許容できないリスクがないこと』と定義されています。
・『リスク』は危害の発生確率と危害のひどさの組み合わせのこと。
・最近は『リスクベース』の考え方が主流で、リスクゼロではなく、リスクの管理が重要である。
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