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【機械安全】リスクアセスメント①


はじめに

 皆さんは業務で『リスクアセスメント(RA)』を実施していますでしょうか?リスクアセスメントは労働災害の防止を行うことを目的に、国としても事業者への実施を促しています。

 ここでは、工場経営者、研究開発者、機械設計者、電気設計者、生産技術者、安全衛生担当、製造技能者を中心に知っていただきたい内容をまとめていきます。

リスクアセスメントを行う目的と効果

 職場で実施しているリスクアセスメントにはKY活動やヒヤリハット抽出とは異なる目的と効果があります。ここでは、厚生労働省が示している内容を明記します。

◆目的
 職場のみんなが参加して、職場にある危険の芽(リスク)とそれに対する対策の実状を把握し、 災害に至るリスクをできるだけ取り除き、労働災害が生じない職場にすること。

◆効果
① 職場のリスクが明確になります。
② 職場のリスクに対する認識を管理者を含め、職場全体で共有できます。 ③ 安全対策について、合理的な方法で優先順位を決めることができます。 ④ 残されたリスクについて「守るべき決め事」の理由が明確になります。 ⑤ 職場全員が参加することにより「危険」に対する感受性が高まります。

 私はリスクアセスメントは大きく2つの特徴があると考えます。
 リスクアセスメントは職場の危ない事象を『事前』に把握します。臭い物に蓋をするという言葉があるように、昔はケガをしてから対策を講じることも多かったようですが、前もって対策を講じることが一つ目の特徴です。
 また、リスクの大小を評価する活動でもあるので、対策の『優先順位決め』が可能なのが二つ目の特徴です。企業は限られたリソース(人・モノ・金)をどう安全事項に配賦するかが重要なので、リスクの大きいところから適切にリソースを掛けることが可能になります。

労働安全衛生法  第28条の2

 労働安全衛生法を皆さんは聞いたことがあるでしょうか?
 1972年に公布され、『労働災害の防止のための基準、責任体制、自主活動の促進などにより労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を目的』とした法律です。
 
 労働安全衛生(以下、安衛法)の第28条の2には以下のように示されています。

 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、 ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する『危険性又は有害性 等を調査』し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置 を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように 努めなければならない。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製 剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外 のものについては、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事業者に限る。

 ここで『危険性又は有害性 等を調査 』と出てきますが、これがまさしくリスクアセスメントのことを指しています。
 また、その結果としてリスクを適切に低減することを『事業者』に努力義務として課しております。『事業者』とは法人であれば当該法人、個人企業であれば事業経営者を指します。ここではリスクアセスメントは努力義務とされていますが、労働災害は結果責任とされます。万が一に労働災害が起こった際は、やるべきことをやれていないと処罰の対象となる可能性があります。

機械の包括的な安全基準に関する指針

 機械設計に従事する方は読んだことがあるでしょうか?
 1999年に公布され、2007年に改正が行われており、機械設計時のリスクアセスメント、危害・災害情報の共有とユーザーが実施するリスクアセスメントについて示したものです。

 機械包括安全指針に基づく機械の安全化の手順(引用:職場のあんぜんサイト)

 『機械の製造を行う者』と『機械を労働者に使用させる事業者』の両者がリスクアセスメントを行うことを示しています。
 『機械の製造を行う者』とは主に装置メーカーなどの機械設計者やインハウスで開発などを行っている企業の研究開発者、生産技術者などを指します。一方で、『機械を労働者に使用させる事業者』とは製造部門などの装置を使用する事業者(生産技術者、安全衛生担当、製造技能者など)を指します。

 両者の側面でしか知らない知識や情報があるため、どちらもリスクアセスメントが必要となります。特に、『機械の製造を行う者』は機械の譲渡、貸与においては『使用上の情報の提供』が努力義務化されております。

例.装置メーカーの設計者が装置のリスクアセスメントを実施して、設備対策(カバー、センサなど)によるリスク低減して、ユーザー企業に譲渡します。ユーザー企業では実際に据付工事をした設置環境や実作業を想定してリスクアセスメントを実施します。

 『使用上の情報の提供』とは、装置メーカー側で実施したリスク低減方策をした上での『残留リスク情報』のことで、具体的には残留リスクマップと残留リスク一覧になります。身近な例では家電製品等の購入時に付いてくる取扱説明書の注意事項欄です。

まとめ

・『リスクアセスメント』の目的は労働災害が生じない職場を作ることで、特徴はリスクの事前把握と対策の優先順位付けです。
・『安衛法』にて事業者へのリスクアセスメントの努力義務が課せられている。
・リスクアセスメントは『機械の製造を行う者』と『機械を労働者に使用させる事業者』の両者が行う必要がある。

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