第49話 悩んでも答えが出ない場合は前に進め。そうしなければ、安息の地から出る事を諦めてしまうからだ。
それほど有名な海外ドラマでは無かった人物の言葉を、自分なりに考えてみた。話の発端は確か、元優秀な刑事であった男が確か納得のいく逮捕出来ないまま引退をして、昔と同じ手口の犯行が、もう何年ぶりかに起きた。二人の普通の刑事が、彼を警察署に呼び出し、尋問のようなカマかけから、元刑事であった男は、「同じ手口の犯行が起きたんだろ? だから俺を呼んだ。違うか?」という場面があった。
二人の刑事は彼にこの部屋は禁煙だと言われたが、「お前たちが呼び出した。俺には関係ない」と言ってタバコを吸いながら、「今日はビールを飲む日なんだ。買ってこい」と言いつけた。二人の刑事は買いに行く様子を見せなかったが、「同じ手口の犯行が起きたんだろ? だから俺呼んだ。違うか? 話が聞きたいのならビールを買ってこい」と言うと一人の刑事は買いに部屋から出て行った。
ビールを買ってきた刑事からビールを渡され、彼は飲みながら言った。「あれは特殊な事件だったから、よく覚えている」と言って回想シーンに移るのだが、昔から周りの刑事たちからは変わり者と呼ばれていたが、誰もが彼の優秀さは認めていた。ただ人間関係を作るのが下手なだけで、周りからはあまり相手にされていなかった。彼は常に大き目のスケッチブックをいつも持ち歩きながら、犯行現場を書き写していた。
ここでおそらく多数の人は現場の写真を撮るからいいのでは? と思う人もいるだろう。しかし、現実的に考えて、文章でも絵でもそうだが、書くためには、詳細をよく見るものだ。文章でも必ず考える。だからこそ覚えているという意味を含めれば、彼のこのやり方は間違ってはいないと言う事になる。現場写真は撮るだけだが、深く観察して、それに対してあらゆる考えを巡らせながら犯行現場を描くのは、道理にかなっていると言えるだろう。
過去と現代を交互に描く海外ドラマであったが、その変貌ぶりに私も最初は同一人物だとすぐには分からなかった。昔は身も綺麗だったが、今はバーテンダーをしていて、何も気にせず生きているというのが、非常に強く伝わって来るものだった。二人の刑事は彼の優秀さを認めて、初めて彼が何故そこまで落ちたのかを問いかけた。
彼は「最初からこんな風になるとは思いもしなかった。自殺しようとも考えた事もあったが、年齢を重ねる事に自殺する勇気さえ消え失せた」正確な台詞ではないし、私は思い返しながら、自分の視点から得たモノを考えながら書いている。
この台詞であった。「自殺する勇気も消え失せた」というセリフは感慨深いものである。私も実際に死ぬつもりで自殺をしたが、見つかりあと数分あれば死んでいたが、たまたま見つかって止められた。だからこそ分かるのだが、彼の言葉は納得のいく言葉なのが、実に不思議に感じた。
私は常々、物事は経験をして初めて知る事が出来るものであって、99%まで仮に理解できたとしても、貴重な1%、つまりは経験をしなければ分からないのが人間社会だと思っている。この言葉が言えるのは実体験した人物から詳細を聞かなければ分からない言葉なのだ。
実際問題、自殺するのは勇気がいる。死の世界という未知なる世界に行くわけであって、誰もが不安に思うが、それを超えて精神的に脳が耐えられないと判断した場合、実行に移せるものだからだ。
これは生死の問題だけでは無い。生きている以上、選択肢は毎日ある事だ。何げない事が殆どではあるが、絶対的に選択が出来ないほどの事も生きていれば必ず起こる。そこが人生の分岐点になるわけだ。多くの人は逃げる選択を選ぶ、そしてその選択の重要性に自分では気づかず、事ある事に逃げる選択をしてしまうようになる。
人間はそれほど強くは無い。だから逃げてしまう訳だが、何度も選びたくない選択肢を選べば、年齢だけ重ねた何も得ていない人間になる。それはある意味地獄だろう。誰からも求められず、誰からも透明なように見えなくなってしまうからだ。キツい選択肢を選ぶほど、人間として成長し、強くもなれる。次こそはと思うようでは、絶対に無理だ。並み以上の精神的な強さが求められる。
楽な道を選べば当分の間は楽だろう。自分の思う世界にいるからだ。しかし、そんな人間を頼る人はいない。何かを得るには対価が必要なように、
より良い人生を送る為には、厳しい道を敢えて選ばなければならないのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?