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バイオハザード:デスアイランド 第五話

「ジル、応答せよ」一般人が次々と感染者となり、
死体となって静かになった監獄で、
クリスの呼びかける声が
小さな木霊となって響き渡った。

「携帯が通じない」クレアの言葉を聞き、
「クソ、無線もダメだ」クリスは無線で呼びかけたが
どちらも通じない事に苛立ちを覚えた。
「電波妨害ね」
「ジルを探そう」
二人だけになったアルカトラズの監獄エリアでは、
どこを見ても死体と、銃弾によって吹き飛んだ血の跡
が残されていた。

「落ち着いて。感染者がたくさんいるかも」
銃弾も残り少ない事から、否が応でもクレアは
不安に駆られていた。
「彼女は独りだ。ほっとけない」クリスの声が
響き渡ると同時に、どこからか音がした。
二人は咄嗟に銃を構えた。

その視線の先には、鉄製の箱が見えていた。
外見からは鍵などはついておらず、両開き戸と
なっていて、大きさ的には、人を1人押し込める
ほどのものであった。

その音は、中で小さくぶつかっているような程度
のものであったが、決して小さくは無い大きさで
あった事から、二人に緊張が走った。
クリスもクレアもその中に何かが入っている
鉄製の入れ物に銃を向けたまま、
少しずつ近づいて行った。

クレアは身を引きいつでも銃を撃てる位置につき、
ケースの前に片膝をついたクリスは、その右側の
両開き戸に、銃を左手に構え、右手で取っ手を掴んだ。
クリスはクレアに目を向けた。
それは開ける合図とも言えた。クレアは黙ったまま
クリスに目を向けて浅く頷いて見せた後、
そのままケースに自然と顏を向けた。

張り詰めた空気の中、クリスが取っ手を素早く引くと、
中には男がいて女性の悲鳴のような叫びをあげて、
「待て、撃たないでくれ!」と声を出した。
眉間にしわを寄せて睨みつける強面のクリスと、
クレアは銃を向けていたが、緊張が解けたように
クリスは大きな息を吐いて銃を下ろした。
二人は顏を合わせて、何とも言えない安心感の
表情を見せた。

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ジルは地下をライトを左手に持って、用心しながら
進んでいた。右手にはナイフが握られていた。
先に進むと明るい場所に出たため、彼女はライトを
腰に回すと、ゆっくりと進み始めた。
右手を前に出して、いつ襲われるかも分からない
地下道を、警戒しながら歩いて行った。

大きな通路の角に立つと、静かにその地下水道が
流れる道に、ジルは動いている影を見つけた。
彼女はその影を追うように、ゆっくり歩き始めた。

影を見失い、ジルの足は速くなり、その足音は
大きく響きだした。彼女からは陰になっている
場所から、突然、彼女は襲われたが、すぐに腕を
前に出して当身を防ぎ、それから左右の手で幾手かの
攻防が繰り出され、ジルは相手の腕を引いて横から
腹部を殴りつけ、相手の体勢が崩れたところで、
そのまま相手の落ちた背中を使って、背中合わせの
ように、背中と背中を使って身をひるがええす時に、
相手の腕を掴んで、着地と同時に相手を投げ飛ばした。

相手は受け身をとって、回転から攻撃態勢を取ると、
ナイフで襲って来たジルの腕を左手で掴んで、右手で
銃をジルに向けたが、彼女はいち早く銃を掴んで、
お互いに接近状態となった。

「レオン?」暗がりの中ではあったが、
間近に相手の顏を見て、ジルは不思議そうに問いかけた。
「驚いたな。ジル・バレンタインか、元気か?」
ここでようやく戦闘態勢から安堵したように、二人は
お互いの手を放した。

しかし、それも束の間でしか無かった。
地下水道の奥から人間ではないモノが、
一瞬だけ威嚇するように声を出した。

レオンはその方向に向かって、銃を即座に構えて、
ジルはナイフと素手での迎撃体勢を取った。

いつの間に近づかれたのか分からないほど、
そのモノは目で充分認識できる距離にまで来ていた。
人の姿はしていたが、人では無いとレオンはすぐに
判断すると、銃を構えた直後に
2発の銃弾を撃ち込んだ。彼が放った的確な弾丸は
急所に当たり、感染者であろう者はそのまま倒れた。

「ジル、なぜここにゾンビが?」
レオンは何事も無かったように冷静に問いかけた。
その奥にもまだいるようで、影が伸びて来ていた。
「元は観光客よ」
ジルの言葉と同時に、レオンは再び確実に倒す為、
連続して2発の銃弾を撃ち込んで、
「イカれたツアーだな」と言いながら、二人は
体勢は崩さず、前を向いたまま後退し始めた。

レオンは至って冷静に、敵に対して銃を撃ちながら、
ジルがナイフを持ったままでいる事に気づき、
「銃は?」と尋ねた。
「ない、無くした」そう答えると、
彼は胸に装着していた銃を、いつもの
手慣れた手つきでクルクルっと回転させながら
すぐに撃てる状態にして、ジルに銃を手渡した。

「ありがとう」とジルは受け取るとすぐに
銃を撃ち始めた。レオンという強い味方と経緯いきさつ
分からなかったが、ジルはレオンと出会ってから
安心した様子を見せていた。
近づいてくる感染者に対して二人は、次々と
ゾンビを倒していったが、感染者の足に触手か
それに近い何かが絡みつき、そのままゾンビは
地下水道の奥に消えて行った。

レオンは突拍子も無い顏で、冗談交じりのように、
またかよと言うように口で呟いた。
ジルはその様子を横目を使って見ながら、
不思議そうな顔を見せた。

それから2、3秒後、下水道の中から、まるで
何か大きな生物に食い千切られたようなゾンビの
半身だけが飛んできた。
突然の事で、ジルは腰が落ちるように転倒したが、
レオンは冷静に、彼女が尻餅をつく前に、ジルの
背中に手を回して痛みを和らげた。
ジルは体勢は崩れたが、
銃だけはずっと前に向けていた。
レオンは様子を見ているように、銃を手に持っては
いたが、構えては無かった。

何かの生物が近づいてきたが、二人は静かにしたまま
銃を放つ事も無く、只々ただただ身動きもせずに
その生物を見ていた。暗闇の中で生き続けた
生物のように、眼は退化して、瞼が溶けたような
顏をしていた。口は裂けたように大きく、
舌は触手のように長く、鋭い牙が何本も生えていた。
四つん這いで歩くその生物が、
彼女たちの横を通り過ぎて行く様を、
レオンは通り過ぎた後も背後から目で追っていた。

襲ってくる気配は無かったが、レオンが人差し指に
何かをつけた仕草を見せて、無音であったが指を
立てると、そのバケモノは足を止めて、レオンたち
の方へゆっくりと向かってきた。
彼は両手で銃を握ると、近づいてくるバケモノに
対して、構えた銃を撃とうともせず、ジルに近づく
のをじっと見ていた。

彼女は銃を構える事も忘れて、動きを止めて、
自分にいつでも襲える長い爪と、口を大きく開けて
舌で舐め回すように彼女に迫ってきた。
彼女はその舌から逃れようと、僅かに身を動かした。
それに応じるかのように、ものが倒れてきたが、
それを手で止めた。安心と不安が入り混じり、
彼女は助かったと思った直後、倒れてきたものの
取っ手の場所にあった物が、音を立てて落ちると、
彼女に迫ってきた瞬間に、レオンは冷静にバケモノに
蹴りを入れて突き放すと、一発で仕留めたが、
すぐに下水道からどんどん出て来た。

二人は反対方向へ走りながら、頭部に銃弾を撃ち込み
倒しながら駆けたが、ジルの足が舌に捉えられて、
バケモノの中を奥へ奥へと引きずられていく最中も、
彼女は交差する瞬間に、すれ違うバケモノの頭部に
弾丸を撃ち込んでいったが、奥に引きずられて行く
のは止められなかった。レオンは瞬時にジャンプして
彼女の手を掴んだ。

二人とも銃を離さず、片手同士ではあったが、
両人ともに滑り止めも兼ねた手袋をしていた為、
片手ではあったが、しっかりと握られていた。
引きずられるのを止めたレオンは足を床につけて、
踏ん張って体勢を立て直し、向かい来るバケモノたちを
弾丸を以て沈めていった。

しかし、その手に見落としていた天井を床のように歩く
バケモノの舌が絡みつき、ジルは咄嗟に「よけて!」
と叫んだ。彼女の銃弾は頭を弾けさせ、バケモノは
落下してレオンは再び自由になった。

彼は座ったままジルの手を握りながら、引きずられて
いたが、安定感のある床に座った体勢でいたため、
間近に迫っていたが、レオンの銃が二度、火を噴いて
敵を完全に仕留めた。ジルは仕留めた後でも驚いた
顏を見せていたが、レオンには多くの経験があった。
彼は仕留めた後すぐに「行くぞ」と言って、バケモノ
たちとは反対方向へ走り出した。

とめどなく溢れるように増えるバケモノに対して、
「何匹いるわけ?」と、
ジルはレオンに走りながら問いかけた。
「数えろって?」とレオンは冗談交じりに答えたが、
彼女は彼とは違って真剣そのものだった。

曲がり角を曲がる前に、二人は一糸乱れぬ呼吸のように
同時に振り返ると、追いかけてくるバケモノたちに
銃弾の雨を浴びせたが、バケモノは水の中からも出て
来て、ジル以上に場数を踏んできたレオンは、
ジルに「そっちへ」と言って、曲がり角の陰に行かせた。

そしてレオンはガソリンが入っていそうなポリタンクを
蹴り上げると、空に舞ったタンクに弾丸を撃ち込んで、
すぐにジルのいる陰に身を入れた。

地下下水道は、火炎地獄のように横に広がり、大爆発
するとレオンは「ゼロ」と答えた。
ジルは「何が?」と尋ねたら、
「さっき何匹かって」とジルとは違って、
余裕のある表情を見せた。



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