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第17話 明智の予見

真田は車の中で、古文書を読み終えた。
殺しが当たり前の時代ではあったが、あまりにも
酷く惨い内容であった。

いつの間にか昼を過ぎ15時過ぎほどになっていた。
何時間も車を停車させていた為か、一台のパトカーが停車し、
何をしているのか尋ねてきた。

明智は警察手帳を出したが、管轄が違う為、警官は尋問をしてきた。

真田はすぐに車から降りて、身分を明かした。
警視はキャリア組であり、警官がおいそれと尋問する事等出来ない為、

警官は敬礼し、謝罪して立ち去って行った。

「助かりましたよ」

「よくある事よ。それよりも古文書を読んだわ」

「どう思われましたか?」

「どういう意味? 実際にあった事でしょうけど、大昔の話よ。
仮にこの酷い仕打ちを受けた人が、今更復讐するのは絶対とは
言い切れないけど、可能性は極めて低いわ。明智刑事の意見を聞きたいわ」

「私は盗まれた❛般若の面❜が今回の通り魔と関連があると見ています。
怨念のようなものに対して、人間は何かと理由をつけて有り得ないものと
しますが、では逆に怨念などはこの世に無いと言い切れますか?」

「言いたい事はわかるわ。でも可能性は極めて低いでしょ?」

「可能性が低い理由は、何かと理由をつけて有り得ないものと
現代の文明社会を築き上げるまでに、不都合なものだから
そう決めつけただけであって、それを考慮すれば可能性が低いとは
言い切れないはずです」

「では明智刑事は、これはあの❛般若の面❜の怨念がらみの事件だと
思っているの?」

「いえ。あくまでも可能性の1つとして考えています。仮にこれが答えなら
あまりにも情報が少なすぎます。多くの事は、権威ある者が言った事に
逆らえず、現代でもその間違いに、気づいていない人のほうが圧倒的に多い
のも事実であって、失礼ながら真田警視も、可能性が極めて低いというのは
ご自身の経験や思い込みが邪魔をして、事件の本質を見落とされているのだと
私は思います」

真田は明智の言葉は確かなもので、反論できなかった。
自分の意見を否定されても、嫌悪感も感じず、関心を示して、好感さえ持てた。

「先ほど、あなたは犯人の一人は人間だと言っていたわね。この難解な事件を
解決するには、まずはあなたの言う通り、消去法としてその犯人を捕まえるべきね」

「はい。その通りです。次に犯人が出る場所は、二カ所まで絞り込みました」

そう言うと明智は地図を広げた。

真田は苦笑いするしかなかった。自分の部下たちからは何の連絡も無いのに対して、
明智は一人で連れてきた部下30名以上の働きを見せたからであった。

彼は特定した場所に丸印をつけていた。

それを見て真田は一ヵ所は理解できたが、もう一ヵ所に対しては疑問を抱いた。
その場所は以前、通り魔が出た場所に丸印をつけていたからであった。

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