第9話 紐解かれてゆく真実
明智は親友であった北見紘一の、手書きで書かれたメモだけを
集めて、初めてみる暗号の解読に取り掛かった。
暗号を解く為に必要不可欠な鍵を見つけなければ、暗号は解けない。
明智と北見の最期の言葉を知る為に、彼の考えを脳内で張り巡らせて、
彼がキーとする鍵が何かを、熟慮していた。
英数字で書かれたその暗号にまずは同じ英数字を〇や△で囲み、
同じ言葉が繰り返されている英数字を抜粋した。
最初に書かれていた英数字から、終わりまでの文章の中に、
同じワードが幾つも出ていた。
彼は昔よくやっていた英数字に加えて、記号を足した複雑極まりないものであったが、彼はキーとなる鍵探しをやめて、幾つも出て来るものから、小林、野田、泉だと思われる言葉を探し出した。
それ以外にも被っている言葉はあったが、鍵が無いと分からない程度しか、それらは少ない文字であった。
彼は目を閉じて、昔の事を思い出していた。北見との会話や、不自然さや、北見の言葉や、事故を起こした前後の記憶を、明智は頭で整理して、順を追って、三年前までの違和感を感じ取ろうとしていた。
明智は目を閉じたまま過去に行っていた。三年前よりも少し前に、北見は私に珍しく女性を紹介してきた。
いや厳密には違った気がするが、そうじゃない。
結婚する相手だと言って紹介してきたが、私は捜査で出掛けた。
今度時間がある時に、改めてゆっくり食事でもしながら紹介すると、
北見は言っていた。
だが、名前は聞いていない。自分に紹介してきたのは、おそらく親友であった私に、最初に報告したはずだ。
つまりは式場やウエディングドレス等は、
自分に紹介したあとで決めたはずだ。しかし、私があの時は多忙で、
ちゃんと聞けなかった。
彼は目を開けて、メモに書かれているはずのものを探した。
ページの右上にそれはあった。日付だ。
そして事故の日付と照らし合わせた。あの時の事件は確かヤクザの抗争で、まだ新米だった私は市民を移動させていた。
理由は他にもあったが、それは関係の無い事だ。
今、必要なのはあの抗争の正しい日付だ。
彼は北見の資料はそのままにして、再び資料室に向かった。