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刃黒流術衆の記録 新領主 流威 第一巻「神の遺伝子」偏

これはいつの日か再び来るべき日の為に
記すものである。

誰よりも強かった祖父は最強の海の王であった
リヴァイアサンとの戦いで善戦するも敗北した。

それを見た我が父は、祖父の配下と自らの配下と
共に、仇を討つべく攻勢を仕掛けた。
詳細は不明ではあるが、祖父が与えた傷は大きな
ものであったので、勝ったかもしれないが、
今はもう知る事は出来ない。

天界と地獄は閉ざされ、我々は特殊な力を失ったが、
この新天地では我らのような、能力者では無い者は
脆弱であったため、守りの誓いを立ててこの地を得た。

しかし、油断は出来ない。この地を与えてくれた
ロバート王は実に気持ちの良い青年であるが、
彼は嘘をついている。

何か事情があっての事だと願うばかりであるが、
この地は我らの故郷よりも広大で広々とした領土
では、争いも多いようだ。
天魔が来なかったからだろう。
奴らがいれば、内戦など起こすはずは無い。

「神の遺伝子」の存在も知らないようで、話はしたが
あまり理解してないようであった。

いずれ必ず奴等は再び戦いを始める。
その時のためにここに記録と、我らが知り得た事を
書き残す。

「神の遺伝子」の発動は天界と地獄が、この世界と繋がった
時にだけ発動する。その力は我らのように、元々強き者すらも
凌駕りょうがする程のものだ。

残念ながら誰がどれだけの遺伝子を保有しているかは、
誰にも分からないようだ。
可能性があるとすれば、知的生命体である人間やエルフなら、
特殊能力として得る事が出来るかもしれないが、
我々には見つける事は出来なかった。

仮に存在していたとしても、隠れていただろう。
それは神々や天使、魔王、魔神、悪魔等にとっても、
非常に必要な存在であるからだ。

人間は元々神の子ではあったが、最初の人間が天界から
追放され、人間は完全な神の子では無くなった。
天界にいれば、死は存在しないが、地上では死が存在するようだ。

最初の人間は千年地上で生きたが、その後、寿命は短くなり続け、
今では長生きしても100年ほどで死が訪れる。

人間にとっては短い命ではあるが、我が末裔たちには技を受け継ぎ、
来たるべき日に備えて欲しい。例え奴等が現れなくても、
技を継承し続けて、いつの日か必ず訪れる時には、我々の出番が
来るからだ。

「神の遺伝子」が発動しても、すぐに特殊能力を使える訳では無い。
例外はあるが、殆どの場合、特殊能力が発動する前に、
まずは身体能力が上昇する。これに関しては例外は無かった。

上昇速度も「神の遺伝子」の中でも特に高い「神の高遺伝子」を
持つものほど、急激に強くなっていく傾向があった。
特殊能力は想像を絶するものではあるが、実に複雑極まるもので、
性格や資質、思想、得意とする事等が色々関係してくる。

特殊能力の中には、身体能力の上位に位置するものもある。
要するに身体能力が劇的に高まると思ってもらえばいい。

身体能力が異常なまで高い能力者は、特殊能力者さえ凌駕する
者もいた。見えない速度であるが故に、拳一つで心臓を抜き取る
事さえも可能だった。

特殊能力には色々なタイプがいて、「神の遺伝子」が高いほど、
希な能力であったり、強さにも影響が出て来る。

そして奴等の狙いは50%の「神の遺伝子」を持つ者を探している。

天界や地獄にいる者たちは、その世界では実体化を維持し続ける
事が出来るが、この世界に於いては実体化を維持する事に多くの
エネルギーを必要としている。

50%のエネルギーを使う事により、我らの世界で実体化する事を
可能にするようだ。

だから人間の最高遺伝子を持つ50%の人間を探しているのだ。

奴等は人間と同化する事が出来る。50%の高遺伝子で無くても
この世界に住む者と同化する事により、実体化するために使われる
エネルギーを軽減できるが、安定させるのがどうやら難しいようで
あった。人間の部分が残ってしまう為、中には人間の味方になる
者まで現れた。

基本的には強い者ほど高遺伝子を持つとされているが、
中には強さでは無い特殊な能力者たちもいた。
その為、更に高遺伝子を持つ人間を探すのは困難と言える。

同化するには、人間による「心の承諾」が必要になる。
つまりは心から願わない限り、同化する事は無い。
強制的にしようとしても、それは本心では無いため脅し等
は通用しない。

但し、心や体を操作する能力者であれば、それを可能にする
だろう。しかし、心を乗っ取る事になるので、その能力者の
心も消える事になる。つまりは死ぬと言う事だ。

能力者に関しては複雑な為、色々説明すれば逆に難しくなる
ので、簡単に説明している。誰もが有り得る事だけを記して
いるのは、自分自身で理解した方が遥かに強くなれるからだ。

最初に世界が繋がりを見せた時、意識を保てる者もいるだろう。
その者たちは神の高遺伝子を持っている者たちだ。
99%の人間は意識を失う。絶対的では無いが、
意識を保てた人間はいずれも強さが桁違いだった。

しかし、99%の中にも高遺伝子を持つものもいた。
何が関係しているのかは最後まで分からなかったが、
身体の強さが急激に上がっている者は実感する事だろう。

そういった人間たちは45%以上の高遺伝子を持つ者たち
であると言える。

私が何故それを知っているのかは、ある人物に聞いた
からだ。その人物の名は言えないが、その人物の末裔は
いつの時代であってもいるだろう。

私が出会った人物は私に多くの事を教えてくれた。
見返りに求められたのは、決まって豪勢な肉や酒ばかり
であった。

おおやけにはできないが、私はその人物に稽古を
つけて貰っていた。それを知るのは従者の2名だけであった。

もし、今、これを読んでいる者であるならば、私が集めた
材料を元に創られた、二つと無い装備を身につけているもので
あろう。

想像を絶する世界ではある。天使も敵と見なした方がいい。
下級の悪魔たちは人間を食うことで強さを増すことが出来る。
その為、最初は悪魔が天使を圧倒する情勢になるはずだ。

一番大事なのは、もし兆しのようなものを見た場合、
即座に守りの門を閉ざして、目覚めるのを待て。
どこかで気絶すれば、奴等は人間の匂いで近寄ってくる。
見つかれば当然、食われて終わるだけだ。

神の遺伝子の事は、これから色々身を以て知って行く事に
なるはずだ。体験しなければ何も分からないように、
実際に体験すれば、どれほど凄いものかを知る事になるだろう。

我ら一族の技が継承されている事を祈っている。
人間の強さを奴等に教えてやってくれ。

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