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「デュラハン」~第一話 始まり

高杉勇翔はやとは幼い頃から他の人
には無い、感情が大きく揺さぶる時に覚醒
する事がたまにあった。
それは誰にも打ち明けられない秘密の話だった。
ある日、高杉の家に男性が訪ねてきた。
「お久しぶりです」とその男は挨拶をした。
「そろそろ来られる頃だと思ってました」
「今も現役ですか?」母親は訊ねた。
「いやー、流石に体がついていけません。
今は財団の日本支部長です」
「今でも現役でいけそうに見えますが」
笑みを浮かべて母親は言った。
「勇翔君はどうですか? 御二人のお子さん
なら、聞くだけ野暮でしたかね」
母親は笑顔を見せた。
「名残惜しいでしょうが、会いたい時には
いつでも会えますので、その時はご連絡ください」
「大丈夫ですよ。夫で慣れました。勇翔ー!」
母親は苦笑いしながら、優しい目をしていた。

男の子は階段の手すりを滑り下りて玄関まで来た。
男性は笑みを浮かべて、男の子に話しかけた。
「勇翔君。冒険は好きかい?」
「冒険? ドラゴンとか出るの?」
「まあ、そうだね。他にも色々出る大冒険かな」
「行きたい!!」
「いつでもここに帰ってお母さんには会えるけど、
まずはドラゴンを倒せるようにならないとね」
勇翔は母親を見上げた。
「行ってもいいの?」
「いいわよ。いってらっしゃい」
男性は母親にお辞儀をした。
「ではお預かりします」
「ええ。立派なデュラハンに育ててくださいね」
「はい。間違いなくなれるでしょう。それでは
ご主人にもよろしくお伝えください」
「お母さん、行ってくるね!」
母親は笑顔で手を振って見送った。
家の前に止めてある車に乗ると、車は去っていった。

それから10年後、彼はアフガニスタンで、
国軍の特殊部隊旅団と戦っていた。
「こちらデュラハン! シルキー1どこにいる!?
こっちは包囲されて身動きできない!
援護を要求する!」
応答の無い事を知り、男はチッっと
舌打ちを吐いた。

「おい! 慎重に包囲していくぞ!」
旅団の隊長は声を張って無線機に指示を出した。
「相手はもう一人だけのはずですが」
隣にいた部下が部隊長に声をかけた。
「相手はあのデュラハンだ! 油断するな!」
「あれがエクストリームのデュラハンですか!?」
「ああ、そうだ! 若いが甘く見るな!」

(くそッ! 奴等、精鋭陸軍機動攻撃部隊
じゃねぇか。このままじゃ囲まれちまうな。
こっちから仕掛けるしかないな)
勇翔は残りの手榴弾2個を近、中距離に
投げ込んだが、空中で撃たれて爆破された。
「このまま包囲する!絶対に基地には近づけるな!」
部隊長の指示で慎重に包囲していった。
(さすがにキツイぜ!貴田きださんも
無茶させすぎだ! やるしかねぇな)

勇翔は手榴弾のような石を再び同じように投げた。
木の陰から、先ほど撃ち落とされた場所に石が
近づくと、勇翔は敵が潜んでいる場所へ地雷を
フリスビーのように横に投げて、敵の銃器が
上を向いている時を見計らい、
地雷に狙いをつけて撃った。
辺り一面が爆破に巻き込まれて吹き飛んだ。

勇翔は即座に暗視スコープで爆破した辺りを
確認してから、一気にそこまで走り込むと同時に
大きな木を背にして敵がいないか再確認した。
が、すぐに銃弾の嵐を浴びさせられて、身動きが
取れなくなった。

「こちらシルキー2。何遊んでんだ?」
明らかに笑いながら無線機から声が聞こえた。
「シルキー2? その声は雄輝ゆうきか!?
いるなら援護してくれ!」
「仕方ねぇな。その様じゃデュラハンの名が泣くぜ。
少し待ってろ、すぐに片づけてやる」

1つまた1つと銃火器の音が消えていき、
周辺から人の気配が消えていった。
「もう大丈夫だ。片付けてやったぞ。
任務を果たしてこい」
「いるなら手伝ってくれよ!」
「こっちも任務の途中だ。ヤバそうだった
んで助けてやっただけだ。また後でな」

勇翔はやとはふぅと一息ついて、森をぬけた先に
ある研究所まで疾走してたどり着いた。
施設の周りにも兵士が配置されて警戒態勢
が敷かれていたが、勇翔は一人ずつ気絶
させていき、研究所に忍び込んだ。
殺すほうが楽であったが、暖かい血が
暗視スコープに反応すれば、防衛体制を
シャットダウンされるからだった。

勇翔の任務は、ここで密かに研究されている
人型戦闘核兵器に必要なデータと拉致された
主任研究員のアルバート・キャストを目的地
まで護衛する事だった。

人道に反するこの研究をアルバートは
拒否したが、すぐに人質を取られて仕方なく
協力していた。民間企業のエクストリーム財団に
人質の救出とデータの破壊を、バレないように
暗号文にしてコンタクトを取ってきていた。

この兵器は実際の人間をベースに使うという
非人道的なものであった。暗号文には
数日以内に完成すると書かれていた。
エクストリーム財団はすぐにデュラハン特殊能力者
と援護部隊を送ったが、敵は国の特殊任務を
果たす時に使われる陸軍機動部隊だった為、
援護部隊は全滅していた。

民間企業である以上、公に行動に出る事は
出来ない以上、内密に処理するしか無かった。
勇翔は研究所に誰にも見られずに入っていき、
白衣とマスクを盗み取ると、各階に爆薬をセット
しながら、博士がデータと一緒にランク5の
キーカードの複製方法もあったため、容易に
最高機密を扱うランク5の中に侵入できた。

中にも監視役なのか、白衣を着ているが、
外の兵士たちのようなアサルトライフルでは
無く、ウィルス等も生成するためか拳銃を
所持していた。

勇翔は銃が当たれば危険だと判断して、
三名の兵士の両サイドの兵士に、ナイフを首に
投げつけて殺し、真ん中の兵士が焦る隙をついて
後ろから喉をナイフで斬り殺した。
誰にも気づかれずに殺したが、研究員の一人が
気づいて、女性が叫ぼうとした為、すぐに口に手を
当てて、指を口に当てて静かにするよう伝えた。

「静かにしなさい。その人は味方だ。我々を
助けに来てくれたのだ」そう言いながら
目を向けると、勇翔は頷いた。
「よく来てくれた」博士が何よりも驚いたのは
よく見るとまだ少年だった事だった。
だが、実際に一瞬のうちに兵士たちを殺した
事実に、彼がエクストリーム財団のデュラハンだと
気づいた。

勇翔は完全に破壊するため、爆薬を各所に
取りつけると、博士に対して頷いた。
「行きましょう。俺の後ろにいてください」
「君は一人でここまで来たのか?」
「いえ。援護部隊は全滅しましたが、
人質救出には別の者が向かいましたので、
安心してください」

それを聞いて研究員たちは安心した様子を見せた。
「急ぎましょう。新手の部隊がきたら厄介なので」
彼の後に三人の研究員は続いて進み出した。
勇翔は来た道では無く、屋上へ向かって歩き出した。
「こちらデュラハン1。シルキー1は全滅したが、
研究員は無事保護した。研究所の屋上に向かいに
来てくれ。以上」
「了解、デュラハン1。すぐに屋上に行く」

急ぎ足で屋上へ向かうと、ヘリの音が聞こえてきた。
ドアを開けると、そこにはすでに雄輝《ゆうき》がいた。
「遅かったな。こっちは無事任務完了したぞ」
薄ら笑いを浮かべながら言い放った。
「早く乗れ。襲撃がバレたようだから本腰入れられる
前におさらばしねーと面倒になる」
勇翔は研究員たちにヘリに乗るよう促した。
全員を回収したヘリは上昇していき、勇翔は爆破の
起動スイッチを押した。

建物全体の支柱にセットしていた研究所は渦に飲まれる
ように崩れ去っていった。家族たちと再会を果たした
様子を見て、雄輝は目を背けていた。
彼は特別過ぎる故に、生まれてすぐに、
財団が援助している教会に捨てられていた。
勇翔は燃え上がる施設に目をやりながら
静かな風を感じていた。


デュラハン:あらすじ
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