ブルーハーツと君と…
「これ…。良かったらさ、聴いてみて。」
綺麗な横顔の「彼」から、そう言って渡された一枚のCD…。
高1で同じクラスだったが、一度も話した事は無く、高2の時に男友達から「どうやらlemon Sodaと友達になりたいらしい」と伝えられ、メアドを交換した事がキッカケで、CDの貸し借りが始まった。
渡されたCDは白地にブルーのロゴで「THE BLUE HEARTS」と書かれていた。
1995年にリリースされたベストアルバム「SUPER HEARTS」。初めて聴いた時、音量を間違えて少し耳が痛くなった。曲調に苦手意識を持ちながらも、その不器用で真っ直ぐな歌詞に強く惹かれていく自分にも嘘は無かった。繊細そうな「彼」が聴く音楽としては意外な気がした。
当時はJ-POPが主流で、私の周りでは「浜崎あゆみ」やら「ELT」やら「宇多田ヒカル」やらが人気で、みんなに合わせてそんな歌ばかり聴いていたのだけど、正直ピンとは来ていなかった。
「彼」は、パンクロックを私に教えてくれた人だった。
「どぅだった?」
と聞かれ、困ったけれど、「えっと…真っ直ぐでかっこよかった!」と伝えた。
「聞きやすいのがいいかな。これも聴いてみて」とまた違うCDが渡された。
Hi-STANDARD、MONGOL800、10-FEET、brahman、どんどんCDが渡される。
自分に対して、社会に対して…どこにも行けない気持ちを…こうして歌にしてるんだな…
「彼」も、それにシンパシーを感じているのだろうか。
曲たちはドラムの印象が強く、バチバチと鳴り響くパーカッションに頭を強く叩かれて奮い立たされているようだった。
綺麗な横顔の繊細な彼はドラムを始めた。
彼が組んだバンドの演奏を聴きにライブハウスへ行く様になり、メールの頻度も増え、いつしか付き合うようになった。
高校卒業後は遠距離となり、私がこちらの生活に慣れず、勉強について行けず、ドンドン落ちこぼれていく様に呆れていた彼は、他に好きな人ができた様だった。
そして、自然消滅的に別れた。
「彼」は、高校3年の時に不登校気味だった。原因は話してくれなかった。
音楽関係の専門学校に進学したけれど、社会人1年目で引きこもりになってしまったらしい。
今…どうしているのかはまったくわからない。
その「彼」が最近夢に出てきた。
時々、友人としてなのか、ある意味妹ような、姉のような、母のような心境で彼を思う。
「元気でやっているのかい?」と。
きみが教えてくれた音楽は、どうしようも出来ない社会の渦の中で、苦しい時の言動力になるんだ。沢山の勇気をもらえるんだ。
だからどうか。
元気でいてくれないか。
青空の下。
みんな。どうか。元気で。