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閉経を寿ぐ

今どき月経の話はオープンに語られるようになったので語ってしまうし、さらに病気の話でもあるので、なんのこっちゃという人はスルーしてください。
とは言ってもいつもの調子なんですが。


3か月に一度大きな病院に行く。
乳腺外科だ。
略してニューゲ。
私はニューゲの患者で、2022年10月に乳がんの手術をした。
部分切除の後、30日の放射線治療を受けた。
それからは飲み薬による治療を続けている。
ニューゲ初診の先生の説明がわかりやすく、そのまま主治医としてお世話になり、手術を担当していただいた。
術後もよく診てくださって安心だった。
放射線科との連携もスムーズだった。

残念ながら手術から半年後、先生は転勤されることになった。
手術直前、麻酔をかける前に手術着の先生が頑張りましょうねと言って手をぎゅっと握って下さった時の目を思い出すと、リスペクトと感謝で泣きそうになる。


次の先生はマスク越しで目だけ見ていると、幾田りら似のかわいい先生だった。
薬の処方が主だった。
私のアイドルだったが1年で転勤されてしまった。
そして先日、3か月に一度の診察日だった。
新しい主治医の先生は陽気な感じで、はじめましてと挨拶を交わした。


乳がんのタイプと治療法の選択にもよるのだが、私は手術プラス放射線治療をして、ホルモン療法10年(錠剤を服用)の今2年目。
ホルモン療法は女性ホルモンに作用する薬を使うので、閉経前か閉経後か、で服用する薬が違う。
乳がんがわかった時、私はその微妙なところにいた。
閉経とは、最後の生理から1年間生理がない状態のことを言う。
微妙だ。
血液検査をしても微妙な数値だった。
最初の先生は
「終わってると思うんだけどね。」
と言いながらもいろんなタイプの女の人がいるので(忘れた頃に生理がやってくる人もいる)慎重に閉経前の薬を処方した。
閉経が確認されたら、閉経後の薬にスイッチすることになった。

次の幾田りら似の先生も同じ考えで、閉経前の薬をしっかり飲んでからスイッチしましょうと言った。
服用して1年過ぎたところで、閉経後の薬にスイッチしたが、もし生理が始まっちゃったら元の薬に戻してすぐに診察予約をしてねということだった。
閉経前の薬によって、月経が止まっているだけの場合もあるそうだ。

閉経後の薬を飲んで半年過ぎたところで今回、新しい先生の診察だった。

「どうですか?
 お変わりないですか?
 蕁麻疹はその後どうですか?」


薬の副作用かどうかはわからないが、蕁麻疹が出たことを3月の診察で幾田りら似先生に話したのだった。
当の本人が忘れかけていて、はて蕁麻疹とは?と思ったが、ぎりぎりで思い出した。

「そのときだけでした。」

「よかったですね😊」と先生。

診察内容はちゃんと引き継がれているようだ。

薬の副作用で関節痛と手のこわばりが出始めた。
動いているうちに軽減する。
薬に慣れてきたら治まってくる場合が多いそうだ。
気長に待つしかないのだろう。
先生の質問は続く。

「生理はきてない?」

「きてないです。」

「血液検査の結果見ましょうね。

 ああ〜終わってるね。
 終わってますねー。
 この数値がね。
 もうね、終わってます。
 よかったですね😊」

満面の笑みで「よかったですね😊」

閉経してありがとうございます、もおかしな受け答えだが、ありがとうございますと言ってしまいそうな明るさで、私もあははと笑って頭を下げた。

先生の「よかったですね😊」は、
薬の種類が今の私にぴったりフィットしてよかったねってことだと思う。

でも明るい笑顔の「よかったですね」は私にとっては思いがけない寿ぎだった。


思春期入り口で赤飯炊かれて最悪だと感じたのはもう昔の話。
長いお付き合いだった。
病院で閉経を寿がれるとは思ってもみなかった。

病院からの帰りはいつも気に入りのパン屋に行くのだが、
その日はおにぎり屋さんでおにぎり2個買った。
ひとつは赤飯おにぎりにした。
大人の階段はまだまだ続く。

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