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横綱への道

令和七年大相撲初場所

中盤戦に入り六日目が終わった。

今場所一番の注目は、琴櫻の綱取りだった。
先場所優勝を争った豊昇龍にもチャンスがあるという。
ワクワクするわー。
横綱照ノ富士も出場した。
初日の協会ご挨拶は役者が揃って壮観だった。
そして横綱土俵入りはいつ見てもいいものだ。

四日目に綱取り大関ふたりの明暗がわかれた。
豊昇龍は先場所に引き続き、今場所もやったる感を全面に押し出し、前に出る力強く速い相撲で勝ち星を重ね四連勝。
琴櫻は初日は白星。
二日目から連敗して三敗。
場所前の調子が良くないとのことだったし、体に不調があるのかもしれない。
先場所の強い相撲を続けるということは容易なことではないんだな。
一気に横綱への道を駆け上がってほしいと思ったが、そこは我慢だ。
相撲ファンには覚えがある。
稀勢の里が横綱になるまでの道のりだって我慢強く、そりゃもう我慢強く歯噛みしながら応援してきた。
ファンは先を焦ってはならない。
だが豊昇龍はこのまま突っ走るのではないだろうか。
あの時間いっぱいのみなぎるやったる感。


五日目。
琴櫻連敗。解説の湊川親方の「強いから大関になれた。自分を信じて相撲を取ってほしい。その先に必ず道は開ける。」
という言葉がファンの胸にまで響く。
琴櫻とタイプは違うが、綱取りを目指した元大関の言葉だ。

琴櫻の連敗を土俵の下で見ていた豊昇龍は、いつものやったる感を上回る気合いを見せていた。
相手は今場所初日が出ない(まだ勝ち星がない)熱海富士。
そのかわいさからいつまでも本名の「さくちゃん」と呼びたい力士だ。
豊昇龍の気合いに、さくちゃんが捻りつぶされちゃう、と思った。
ところが熱海富士は豊昇龍に負けない圧力で踏ん張った。
豊昇龍は焦ったのか、投げを何度か打つが熱海富士は落ちない。
土俵際に、もつれ込む。
豊昇龍の腕を抱え込んだ熱海富士が小手投げで豊昇龍をぶん投げた。
今場所の初白星が絶好調の大関を破る銀星だった。
なんとしても勝ちたいという執念の投げだった。

その日の夜遅く、五日目から休場の横綱照ノ富士の引退が報じられた。
いつか来ると思っていたその日がついにきてしまった。
四日目翔猿との一番が照ノ富士最後の取り組みとなった。
場所前の
「やってみて駄目だったら...」という横綱本人の言葉も報道されていた。
横綱は翔猿に負けたが、その日伊勢ヶ濱部屋の幕内力士は全員負けた。めずらしいこともあるんだと思った。
そして五日目、熱海富士の素晴らしい相撲。
もし部屋の横綱引退を知っていたとしたら、横綱へ最高の恩返しだったと思うのだ。
「奮起」というだけではない、見えない力がはたらく相撲があると思う。

六日目、豊昇龍は好調豪ノ山を相手に連敗せず、厳しい相撲で勝った。
あと好調なのは、王鵬。
王鵬の目覚めもいよいよ本物だ。

大関の横綱同時昇進は消えた。
綱取りの難しさよ。

照ノ富士は引退してしまったが、素晴らしい横綱への道を見せてもらった。
会見の最後が笑顔でよかった。
(お子さんのテムジンくん、めちゃ大きい。そっくりでめちゃかわいい。)


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