
上條淳士展LIVE
好きだった漫画『To-y』の原画展を見るために美術館に行く。
その前に美容室に行った。
鏡の前に座り、カラーの待ち時間に美術館のSNSを見ていたら、午後には作者の上條敦士先生が在廊されていることがわかった。
画集を買えばサインしてもらえるらしい。
ご本人からサインをもらう、ということをしたことがない。
さらに、私は久々に『To-y』を思い出した「ぽっと出」なもんで腰が引ける。
なんか恥ずかしい。
おばちゃんが恥ずかしいなんて言っているほうがもっと恥ずかしい。
カラーの具合をチェックしに来たスタイリストOさんにそのことを話したら、
「なんで恥ずかしいんですか?
何時からですか?2時?
時間的にはバッチリです。
行けばいいじゃないですか。
サインもらえる機会なんて
なかなかありませんよ。」
と言う。
確かにね。
弥生美術館『上條敦士展LIVE』のことを知り、ポスターを見たとき、私はひとりでかなり盛り上がった。

『To-y』は音楽漫画の金字塔とされる。
読んでいたのは高校生の時で、ライブやファッションや東京の風景はあこがれの世界だった。
オリジナルのビデオアニメも見た。
主人公トーイのおっかけをしている女の子ニヤを声優として演じたのはレベッカのNOKKOさんだった。
ポスターの絵は私が持っているコミックスVol.1の中表紙だった。
原画が展示されているので、私は古いコミックスをバッグに入れてきたのだった。
サインのことなどまったく頭になかった。
これは、今日はチャンスなのか?
行って画集を購入して、持ってきた古い漫画本にサインをもらってもいいものだろうか。
「出せば両方サインしてくれるんじゃないですかね。」
とOさん。
そうなの?
誰かに面と向かってサインをもらったこと、ないんだよね。
最後の仕上げで、
「スプレー使ってもいいですか?」と聞かれる。
いつもは髪が固く仕上がるのが苦手で、トリートメント剤で仕上げてもらうのだが、その日はスプレーやらいろいろ使ってツヤ感マシマシでセットしてくれた。
「これでサイン会もばっちりです。」
お、おう!行ってくるわ。
さりげないプロの心遣いに背中を押される。
預けたバッグを受け取って、
Oさんに『To-y』の本を見せた。
コミックスワイド版1991年の発行。
「私が生まれた年だ〜」とOさんは笑った。
歳は20歳も下だけど、私は彼女のことを尊敬している。

来るのは一年ぶりくらい
美容室ではグズグズ言ったが、弥生美術館に到着。
展示を見た瞬間に胸がいっぱい。


その歓声が遠くなるまで
一瞬で別の世界に連れて行ってくれる。
劇中のバンド「GASP」のTシャツを着ている人がいる。
遠方から来たと言う人がいる。母と高校生の娘さん親子2代のファンのかたも。
私はぽっと出のおばちゃんには違いなかったが、胸アツは止まらない。
画集を見にいったら表紙の「カホ」に見つめられる。
購入して原画の続きを見る。
そうしたら通りかかった上條先生に
「サインですよね。ちょっと待っててくださいね。」
なんて声をかけてもらってさらに心拍数アップ。
テーブルを挟んで座り、サインをもらう間にもとても気さくに話しかけてくださる上條先生だった。
舞い上がってしまったが、コミックスにサインしてもらってもいいですかと尋ねたら、
「いいですよ。」とサインを書くページを選んでくださった。
さらに「両方書きますよ。」と画集にもサインしてくださった。
感激だ。ありがとうございました。
あれから『To-y』を読んでいたらトーイの黒目がちの目は上條先生の目に似ていると思った。
鮮烈。

カホ
まっすぐにこっちを見てる