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ある崩壊

昨夜はハヤシライスを作った。
美味しいトマトを頂いたのに、ラスト3個を冷蔵庫の中で完熟させてしまった。
フードプロセッサーでジュースにして、ハヤシソースに使った。
いつもより赤いハヤシソースで、とてもおいしくできあがった。

今朝、夫も息子も昨夜のハヤシライスをもりもり食べて出て行った。

私は、朝からハヤシライスはパス。
でもお昼ご飯はハヤシを食べようと思って、きっかり自分ひとり分を残して夫と息子の朝食をよそったのだ。

細々とした片付けをしていたらとっくにお昼を過ぎてしまった。

家でひとりで昼食を食べるのは久しぶりでうれしい。
TVerで
「ザ•細かすぎて伝わらないモノマネ2024」を見ながら食べようと思った。

ご飯にハヤシソースをかけてレンジであっためる。

ほかの家族が熱くて持てないお鍋のフタや、レンジであっためた食器を私は余裕で素手で持てる。
それくらいなら主婦歴25年超の母ちゃんの手は鍋つかみを必要としない。

レンジからお皿を出す。
あちち。
でも大丈夫。
鍋つかみは必要ない。
ハヤシのお皿をレンジの中からテーブルへ。
10歩も歩かない。

テーブルに置く直前で、ハヤシライスの皿は手から滑り落ちた。
スライディングハヤシ。
私のランチが大崩壊。

お皿は割れた。
ハヤシライスはテーブルの下のカーペットの上にお皿の大きさの1.5倍くらいに広がった。
さらに点在するハヤシが目に入る。
ああスカートにトマト色したハヤシライスがついている。
意気消沈だ。
スカートを脱いで洗濯機に引っ掛けた。
上のサマーニットとスカートの下に履いていたレギンスは無事だけど。


カーペットはシミになるだろう。
終わった。
茫然自失。
もうすぐ14時。
小学生の子が帰ってくるならば、割れた皿のかけらを踏んだら怪我するから、私は必死で片付けただろう。

今は誰もいない家。
やり場のないこの気持ち。
私は静かに崩壊した。
私は自分が引き起こした惨事をほったらかして、
「細かすぎて伝わらないモノマネ」を見始めた。

ソファに横たわり泰然自若。
エントリーされた芸人さんも面白いんだけど、ゲストのコメントに共感して笑う。

タイトル「もう何も気にしなくなった田舎のおばちゃん」
上半身はだかのおばちゃん。
首からかけたタオルで胸が隠れている。
笑顔でにっこり、セミロングヘアのおばちゃん。

昔はシミーズ一枚のおばちゃんがいた、と満島ひかりさんが笑う。
いたかもしれないシミーズのおばちゃん。

「もう何も気にしなくなった田舎のおばちゃん」はおかわりタイムにもう一度出てきた。
上半身はだか。
ついに胸を隠すタオルがない。
演じる森本サイダーさんは
男性だけど、おばちゃんに見えてくる。
女の人の胸に見えてくる不思議おっぱい。
ザキヤマさんが、絶妙な体型なんだよなーと笑う。
私も笑いながらふと自分に目をやった。

上半身の服は着ている。
下は。
レギンス一枚だった。
ピッチピチだけど締め付けない、
体型は丸出しの絶妙レギンス。
スカートを脱いでそのままでいた。
もう何も気にしなくなったおばちゃんは私だった。

振り返ればハヤシがいる。
テーブルの下に。

ヨロヨロと立ち上がり、
レギンスの上にワイドパンツを履いた。
「細かすぎて伝わらないモノマネ」は最後まで見た。
割れた皿を拾い、冷めたハヤシライスを取り除き、そこからは一心不乱に掃除した。

洗濯機に掛けたままのスカートを洗おうとしたら、広範囲に付着していたハヤシソースが乾いて、スカートは洗濯機に貼り付いていた。
ぺりぺりと剥がしたら、縦型洗濯機の前面がトマトの赤で汚れていた。
事件現場か。
私がやりました。
孤軍乱闘、いや奮闘。
掃除に洗濯。

夜になってしまった。
夕飯の支度もできていないのに夫が帰宅した。
事の顛末を話す。
私の崩壊「もう何も気にしなくなったおばちゃん」話はいまいち伝わらなかった。
が、
「なんか食べに行こか?」
夕飯がないことは理解したようだ。

ラストオーダー間近の大戸屋で、私はいよいよ復活したのだった。
昼食抜きだったからね。
あのカーペットはどうにかしなければ。

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