ポンコツ忍者チームのキラキラな日常⑨
ここは伊賀の杜大忍術専修学校にある貴賓室
呼び出された僕たちはインターンシップで、ある方の護衛をすることになった。
そのある方と言うのが、あの源氏の血をひく高貴なお方の姫君というのだ。その姫君と顔あわせのため、普段は足を踏み入れることのない豪華な装飾品で飾られた部屋に集められたメンバーの顔ぶれを見ると、下忍のなかでも成績優秀な中忍予備軍と言われるエリートばかりだった。もちろん、僕を除いて。精悍な顔つきの中で、ひときわのっぺりとした凡庸な表情のポンコツメガネは、逆に悪目立ちをしている。
異様な緊張感が漂う中、お付きの者に従って姫君が登場する。伏し目がちに入ってきた姫君は、ゆっくりとした仕草で部屋中を見渡すと、僕の方を向いて一瞬ビックリしたような表情を見せたが、すぐに素に戻ると皆に穏やかな笑顔を向けた。
姫君は護衛の我々と共に、伊賀の里や森や山を散策し大いに楽しんだ!
すっかりはしゃいで汗をかいた姫君は伊賀の山に秘湯があると聞くと、是非入りたい!と瞳をキラキラさせた!突然の予定変更ではあるが、姫君たっての願いを聞き入れないわけにもいかず、一同は行き先を変更することにした。
温泉に着くと周辺の村人が集まっていた。何事かと尋ねると、なにやらこの辺りで非常に珍しいしゃべる青いタヌキを見かけたというのだ!それも、突然現れた桃色の扉からフッと湧いたように現れたと言うではないか!妖しげな術を使う人語を話す青いタヌキ。にわかには信じがたいが......。
とはいえ、姫君の願いを取り止めるわけにもいかない。秘湯の周りに護衛を配置し万全の体制で入浴タイムとなった。温泉からはモクモクと湯気が立ち上ぼり、残念なことに湯浴みをしている姫君の姿は拝めない。特に僕はメガネが曇ってしまい、視界はほぼゼロである。何度となくメガネを外してはレンズを擦っていると、いつの間にか目の前に壁ができているような気がした。イマイチ周りが見えていない僕は、メガネをかけると、それは壁でなく桃色の扉だった!扉が勢い良く開くと中から僕そっくりの男が青いタヌキと共に現れた!
やっと、見つけた!と大声ではしゃぐ、僕そっくりの男と青いタヌキ。
(これが噂の青タヌキ!)
心の中で驚きの声をあげたが、僕はすかさず姫君を護ろうと姫君のもとへ近づこうとした。
その時、大量のお湯しぶきがかけられた。
「キャー!のび太さんのエッチ~!」
僕は、何のことか分からずにビショビショのまま、立ち尽くしていた!
その後、姫君の説明があり、実は姫君も替玉だったと言うのだ!本物の静御膳様は、今頃お忍びで熱海旅行に出掛けているとか?僕にそっくりの男と青いタヌキは身代り姫君の知り合いで、特殊な訓練を受けているが、決して怪しい者ではないとのことだった。身代り姫君は僕をその「のび太」という者と勘違いしてお湯をかけてしまったと詫びてきた。僕としては、身代りとはいえ姫君の裸体を一瞬でも拝謁できたことだし、「我が人生に一片の悔いなし」といったところである。こちらこそ礼を言いたいくらいである。
こうして、僕たちのインターンシップは無事終了した。
それにしても、あの青いタヌキはナニモノだったのだろう?