こちと とら
『あらすじ』
一人目は証券会社の部長。二人目は銀行員。三人目は政治家。三人のごく普通な日記から物語は始まる。
しかし、語が進むにつれて普通だった日記に違和感を覚える。普通の日記だと思われていたものが、嵐の前の静けさのように感じる、新感覚メタフィクション。
一人目。
都心のマンションに住む私は朝が早い。家から外に出るといつも日差しが強く眩しいと、
リアクションしてしまう。玄関で履ききれなかった靴を玄関の前で履き直す。靴を履きネクタイを締め直し『よし』と気合を入れてマンションの階段に向かう。私の勤め先である証券会社は家から駅一本で約15分の移動時間である。
家からの最寄り駅まで歩いて3~4分。そこから電車に乗り約10分で勤め先の最寄り駅に着く。そこから3分ほど歩いたら私の勤め先である。『株式会社日当証券』日本で有名な大手証券会社だ。私はこの会社で経理部に就任して25年が経ち、社長から実力を認められて経理部の部長に出世した。
一人暮らしの私は昼ご飯を外食することが多い。会社の食堂は広くて良いがなんとなく外食している。お昼休憩は12時の時もあるし、13時過ぎる時もある。
今日は12時にはお昼休憩を貰えた。会社は都内の真ん中に位置するので周りにはたくさんの店が点在している。昨日はインド料理店でカレーを食べたので中華にしようと思い、会社から少し歩いた所にある中華料理屋『華中』に入った。外にある看板にはメニューが書いてありラーメン定食2400円、チャーハン+ラーメン定食2200円、当店一番人気のエビチリ2800円と書いてあった。少し高いなと思いながら財布の中身を確認した。
華中から出てきたのはそれから約30分後の12時40分頃、私は左腕に着けている腕時計を確認しながら会社に向かう。会社に向かう道中にチェーンの喫茶店があったのでそこでコーヒーをテイクアウトして会社に入った。
今日はいつもより終わるのが遅くなってしまった。時計の針は22時を指している、辺りは暗く少し肌寒く感じた。
行きと同様会社から歩いて3分ほど歩いたところに駅がありそこから電車と歩きで家に帰る。家に着いたのは22時30分頃であった。
仕事がある平日の私の一日の流れは大体こんな感じである。
二人目。
今年35歳になる銀行勤めの私は毎朝のルーティンであるランニングをしている。
会社には9時に出社するので家を8時半には出なければいけないので、7時から朝のランニングを20分ほど行った後会社に行く支度をして、8時半には車に乗り会社に向かう。
8時50分頃には駐車場に着くのでそのまま歩いて会社に向かう。次に銀行から外に出るのは退社時間の18時半で、朝の9時から18時半の9時間半銀行からは出ない。
私の平日はこんな具合だが、休日は家でのんびり過ごしている。
三人目。
「清き一票を!」そう掲げる政治家はろくな奴がいないとよく聞いたものだ。
私は千葉県の地方政治家である。とっても小さな町の政治を担っているだけで偉くもないのだけど気まぐれで立候補をしたら当選してしまい、この町を支える立場に就いたのだ。
そんな私の平日の一日は朝が早く、7時半には家を出て、最初に地域の方とのコミュニケーションを取るために地元の公園周りを散歩しながら、畑仕事をしているおじいちゃんやおばあちゃんと話をする。その後8時半後に自分の党の事務所に到着。何かあれば外出して市役所やら町内会に参加して地域の方との交流を大切にしている。基本、車は使わず歩きで移動するため、時間にはルーズな方である。急に外出することがあるので計画的に行動をするのはやめた方が良い。
昼食は12時ごろで、外食している。地域との交流のために外に出向くことは頻繁にある。昼休みは1時間程度。時間にルーズなので一時間以上かかることもある。
午後からはほとんど事務所から出ることはないが、夕方の小学生や中学生などの学生の下校時間になると、横断歩道に行き、旗を持って学生たちを見守っている。
それが終わると事務所に戻り、18時頃には事務所を後にして家に帰宅する。
私の平日は大体こんな感じだ。
決行日。
今日はいつもと違いトートバックを持っている。彼はいつも通り家を出て最寄り駅に向かう道を歩んでいる。その瞬間横から猛スピードの車が飛び込んで来た。ものすごい音と人が倒れている事を確認した私は、急いでトートバックを持ちその場を後にした。
今日は売り上げの集計を行う日である。いつも通り7時に家を出て、朝のランニングに出かける。外は少し曇っていて辺りが暗めではあるが雨は降っていないので普段通り走ることができる。彼の前を歩いていた私は、人にぶつかり倒れてしまう。
痛そうにしていた私に彼は近づいてきたので、手に持っていたナイフで彼を刺した。
地方銀行員のはずなのに、高い時計と高いアクセサリーも着けて、フラフラと警戒心0で外を歩いている。後ろを付けていき、人気の少ない森の近くで後ろから襲い掛かり、二人掛りで首を絞め、殺した。
こちとら
これは何回目の朝なのか分からないが、何回も同じことの繰り返し。強面な男が二人、椅子と机があるだけの場所に座らせられては、「共犯者はどこにいる?」の一点張り。
俺は黙秘する。それがルールだ。
「このまま黙秘するつもりか?」
実際の計画とは違って俺は捕まらずに完璧な犯行で終わらせる予定だったが、人に見られてしまったらしく、警察送りだ。そのお陰で俺は捕まった。人生何が起こるか分からないからなあ。
そちとら
今生きているお前の人生も、もしかしたら違う誰かの人生なのかもしれないよ。なぁ、お前。この本を読んでいるそこのお前。お前だよ。
急に話しかけてきてびっくりしているかもしれないが、最初の一人目から三人目といきなり殺されて驚いただろ?
実は最初から視点がそいつの人生じゃない。全部俺ら目線の話だ。一人目の証券会社の男も、二人目の銀行員も全部、そいつの人生のように恰も描いていたが、全部俺らの目線の話だ。読み返したら、不可解な所がいくつかあるのに気づくはずだ。
まず、一人目の話では中華料理屋「華中」に入った所だ。「華中」に入ったと書いてあるのに、外の看板前で財布を確認するシーンになる。これは俺たちが尾行していたから、彼は店に入ったにもかかわらず、外にいるという不可解なことが起こっている。
もう一つは、三人目の政治家の話だ。『急に外出することがあるので計画的に行動をするのはやめた方が良い。』ここだなぁ。前の文とは違ってメモ書きみたいになっているだろ。
これは犯行前の調査だからこういう書き方をしている。
もっと詳しく刑事が紐解いてくれる。
続編「こちと そら」につづく
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