Album of The Year 2019

2010年代も終わりますね。毎年自分への備忘も含めて公開している年間ベストですが、今年も短いコメントつきでどうぞ。

20. Agate / Black Boboi
Garden City Movementの前座として出演していて存在を知った女性三人組。ダークでエクスペリメンタルな音楽性ながら、3人のヴォーカルの力強さが結構前面にきてポップさを感じるところが個性的でハマった。日本からもこういうのが出てきた2010年代後半、素晴らしい。

19. 1000 gecs / 100 gecs
初めて聞いたときSleigh Bells(みなさん覚えていますか?)の狂気とKero Kero Bonitoみたいなユーモアを足したようなものと感じて、なおかつEDMとかトラップのような時代性もあって確かにこれは面白い。23分で突き抜けて勢いで終わる感じもまた良い。

18. Serotonin II / Yeule
シンガポール出身でロンドンを拠点に活動するYeuleのデビューアルバム。世を捨てたきゃりーぱみゅぱみゅのような退廃的でゴスなヴィジュアルだが、音楽的には初期Grimesをルーツに持っていそうなドリーミーなエレクトロポップに加え、時折感じるアジアンな雰囲気がたまらない。

17. Keepsake / Hatchie
まずもってメロディーが死ぬほど良い。最早伝統的とさえいえるシューゲイザー、ドリームポップ周辺の想像の域を超えないというのはそうなんだけど、この清涼感には抗えないものがある。これはフジロックの、昼の晴れたレッドマーキーでみたら最高だろうな。白昼夢のようになりそう。

16. amo / Bring Me The Horizon
SlipknotやKornなども新作を出し評価され、実はラウドバンドがまたキテいるのではと思った2019年だったが(文脈は全然違うけど)、その中でも際立って「拡張」を意識しているのがBMTH。かなり実験的な新EPも含め、閉鎖的になりがちなラウドシーンで息巻いている姿勢が素晴らしい。BABYMETALのアルバムツアーで一緒に観られたのは最高にお得だった!

15. Momoiro Clover Z / ももいろクローバーZ
今年はあまりアイドルシーンを積極的に追いかけたわけではないけど、今作の多様性にはビックリした。5人から4人になったことでヴォーカルの立体性が後退した分、幅で勝負してきたなと。これは日本のアイドルにしか作れないなんでもあり感。アルバムツアーをやって欲しかったなー。

14. Bubba / KAYTRANADA
フジロックでは力尽きて最後まで観ることができなかったKAYTRANADAだけど、年の瀬に素晴らしいアルバムをドロップして、駆け込みでベスト入り。ジャンルレスでグルーヴたっぷり、ちょっとハウス感強めという、なんという美味しいとこ取り。豪華ゲストでも流れるように聴けるのが押しつけがましくなくて余裕を感じる。

13. Miss Universe/ Nilüfer Yanya
女性SSWは毎年新しい才能が出てくるなーと思わずにいられない昨今だけど、今年も。「UKソウルの新生」というキーワードで聴くと確かにその要素もあるけど、同じぐらいオルタナなギターが鳴っているのが独特。意外と誰にも似ていない、これからが楽しみ。来日公演も満杯ではなかったけど、最高だった。

12. Titanic Rising / Weyes Blood
フォーキーで伝統的なソングライティングの確かさと、サイケでドリーミーな音像にまさに夢見心地になるような1枚。その壮大な世界観は、"All Is Dream"期のMercury Revなんかを思い出したりして(あそこまで派手ではない)、懐かしい思いすら感じた。カーペンターズを想起している人も少なくはないそうで、かつての名作のような趣があるのかも。

11. schlagenheim / Black Midi
ポストパンクとマスロックを根幹として、10年代らしくなんでも取り込んで突然変異したような、新世代による地殻変動を感じさせるデビュー・アルバム。初めて聴いたときは衝撃的だったけども、ポップさも出ちゃうあたりにバトルスぐらい受け入れられるのではという期待も。その2組、ロンドンで一緒にライブやってたね、それは観たい・・。

10. WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO? / Billie Eilish
すっかり時代の寵児になった感のあるビリー・アイリッシュで、アルバム後のコーチェラなんかはもう観客の声でマイクが割れるぐらいの興奮をもって迎えられているわけだけど、やっぱり音楽はかなり特殊。強いサブベース、徹底的にそぎ落とされた音数に、ウィスパーボイスと、徹底的にプロデュースされたポップスとは違うものがある。個人的には随所に感じるインダストリアルに、その界隈が盛り上がるかなという観点での嬉しさもある。

09. U.F.O.F. / Big Thief
1年に2枚もフルアルバムを出すという乗りに乗っている彼ら。好みの問題としてフォーキーなインディー的なバンドがあまりピンと来なくて、こういった佇まいにはついハードルが高くなってしまいスルーしてしまうことが多い。ただ今作はTL上で盛り上がっていたのもあって、何度か通して聴くことでその素晴らしさに気付けた。曲構成の歪さもさることながら、通底するようなアンビエント感にヤラれた。

08. HOCHONO HOUSE / 細野晴臣
ブギ・ウギ、カントリー路線でずっと行くのかなと思っていたら、打ち込みで1作目をアレンジするとは驚いた。ミックスまで自分でやったということもあり、現代的なアプローチへの拘りを(完全には分からないが)感じ、そのバイタリティに尊敬。でもこんなに凄いことをやっているのに、本人はいたって飄々としていて、それがなんとも。

07. Birth of Violence / Chelsea Wolfe
現代のゴスクイーンChelsea Wolfe。前作は激重暗黒サウンドだったが、今作は漆黒フォークで「重さ」としては今作の方がより感じるかもしれない。その密度たるや凄まじいものがあり、ハマる人はとことんハマる世界観であること間違いなし。今指折りで来日を期待している人なんだけど、まだだろうか・・。

06. Fear Inoculum / Tool
ついに出た!13年ぶり!いくら時代が変わろうと、ToolはToolなのだった。変拍子を多用した、そして長尺な複雑怪奇な曲構成、その中で動と静を行き来してエモーショナルを増幅させる手法など、まさに彼らしか作ることのできない圧倒的な世界観。過去作に比べるとアンビエント性が高くなっていて、より陶酔して聴いてしまう。しかし後半に"7empest"を完全にぶち上がるように配置していて、そのまま昇天するかと思った。

05. MAGDALENE / FKA Twigs
前作が本当に好きで何度も繰り返し聴いた&ライブも欠かさず観ていたぐらいで、まさか2枚目をここまで待つとは思わなかったけど、待ったかいがあるぐらい素晴らしい内容で良かった。巷で言われている通り、歌が以前よりも前面に出たのは間違いないけど、天才Nicolas Jaarプロデュースもありで音像的には多分に刺激的で、そしてこの上なく美しい!ラストのcellophaneに向かっていく構成もまたドラマチックで最高。

04. ANIMA / Thom Yorke
トムヨークのソロって1作目から好きで聴いては居たんだけど、やはり本隊あってのソロという印象は拭えずにいた。今作はレディオヘッドのという枕詞を無くしたとしても、トータリティーや「らしさ」の面で頭一つ抜けたのではなかろうか。厭世感や暗黒感があるんだけど、トムヨークが歌うと共有できる暗さになるというか。

03. IGOR / Tyler, the Creator
このラインナップで今作が入ってくるのは唐突かもしれないが、聴いた回数で言えば今年リリースされた作品の中では一番かもしれない。サウンドの鳴りが気持ちよくメロディアスでものすごく敷居が低いのにも関わらず、サンプリングやサウンドの奥行きと広がりはどこまでもあり、何度聴いても飽きがこない。ブラックミュージック好きはもちろん、音楽の豊かさでは多ジャンル好きも、かわいさで言えばアイドル好きも全方位的に好きになれる要素がありそう。

02. Crush / Floating Points
これはもう、一聴した瞬間に最高だと確信した。IDM、エレクトロニカを中心にエレクトロニック・ミュージックの聴く幅を広げてきた人間にとっては好きな要素しかないアルバム。緻密に積み上げられたレイヤーと、それにぶつけるような激しい展開が絶え間なくせめぎあって、ずっと緊張感が持続する。ずっと聴き続けられそうだ。

01. GREY Area / Little Simz
Hip Hop/グライムをベースに様々なジャンルを乗りこなし、その正統派に上手い「オールドスクール的な」ラップが過去と現在、そしてバンドサウンドとの接続をさせていて、すべてがバチっと嵌っているような凄みがある。この音響の激渋さは一体何なんだろうか。そして個人的にはやっぱりUKダブ的な音像を感じさせる現在進行形の音楽が大好物だなー。正しく10年代的かというとそうではないと思うけど、この素晴らしさにはぜひ触れてほしい!そして来日してほしい!


他にはSolange(ベストに挙げるほど聴き込めていない)、Kelsey Lu、American Football(フジのライブは忘れない・・)、Bibio、Clipping.、JPEGMAFIAあたりが好きでした。

これから2020年代、どんな年代になるでしょうか。

01. GREY Area / Little Simz
02. Crush / Floating Points
03. IGOR / Tyler, the Creator
04. ANIMA / Thom Yorke
05. MAGDALENE / FKA Twigs
06. Fear Inoculum / Tool
07. Birth of Violence / Chelsea Wolfe
08. HOCHONO HOUSE / 細野晴臣
09. U.F.O.F. / Big Thief
10. WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO? / Billie Eilish
11. schlagenheim / Black Midi
12. Titanic Rising / Weyes Blood
13. Miss Universe/ Nilüfer Yanya
14. Bubba / KAYTRANADA
15. Momoiro Clover Z / ももいろクローバーZ
16. amo / Bring Me The Horizon
17. Keepsake / Hatchie
18. Serotonin II / Yeule
19. 1000 gecs / 100 gecs
20. Agate / Black Boboi

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