【事実発掘!FACT JAPAN 47 NO.46】山口県
ついにこのコラムもオーラス前!自身としても最後の出番、富山湾のような思慮深さを持つ・・なんて形でバトンを渡されましたが、本質的にはまったくそんなことはなく、むしろただの超ポジティブ人間・佐伯です。
世の中には物事を悲観的に見る人と楽観的に見る人に分かれますが、もちろん『佐伯のキは前向きのき』とうそぶく僕は常に後者です(笑)。
信じられない円安にささやかれる増税の噂も相まって、現在の日本を明るい、と見る人は少ないかもしれませんが、そんな状況も未来も、自身の捉え方や行動ひとつで大きく変わると思うのです。
歴史ある政治県とそこから出ていく若い女性たち
が、たしかに客観的に明るいとはいえない最近の我が国。先日ついに岸田文雄内閣の支持率が2012年に自民党が政権に返り咲いてから最低の25%にまで下落。そんな不名誉な記録を残してしまった岸田総理ですが、栄えある第100代目の内閣総理大臣でもあります。人数としては64人目、広島県出身の総理としては4人目で、これは東京都の5人に次いで3番目に多い総理大臣輩出県。しかしその広島の倍、初代の伊藤博文を筆頭にダントツの8名(!)という歴代総理を輩出している日本最高の政治県、それがお隣の山口県です。明治維新の原動力となった長州藩に由来するものですが、にしてもすごい数字です。
そんな山口県にとっても、長年続く若者の県外流出は大きな課題。特に若い女性の占める割合が大きく、総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、県外に転出する人が転入する人を上回る「転出超過」が続き、2021年までの10年間で約3万5000人が県外に転出し、そのうちなんと61%が女性。男女とも大学などに進学したり就職したりする年代の転出超過が目立つようです。
一方で県が2020年にまとめた「人口ビジョン改訂版」によると、県内の大学生や短大生、高専生を対象にした2019年の調査では、女性の31%が就職や進学する地域に県内を希望、男性の18%を上回っていました。つまり魅力のある職場や環境が増えれば、県内にとどまる女性が増える可能性があるということです。
その問題を解決していくのは誰だ
行政とて長引く人口流出に対して決して手をこまねいているわけではありません。山口県でもコロナ禍の2021年にはテレワーク用のモデルオフィスを県庁1階に整備するなど、テレワークを活用した「転職なき移住」にも注力。市町とともに補助金や支援制度を網羅したポータルサイトを開設するなど、さまざまな対策も実施した結果、移住に対する関心が高まり、東京都内の窓口「やまぐち暮らし東京支援センター」への2021年4~9月の相談数は前年同期の2倍に増加。同期間の都道府県別の新設法人の増加率では、55.1%増加で堂々の一位に輝くなど、一定の成果を見せています。
しかし、いくら移住が増えてもやはり流出を防がないことには、明るい未来はありません。先ほど挙げたように、山口の若年層女性にとって本当に必要な対応は誰がリードをしていくべきでしょうか。僕はぜひその県の問題も魅力もよく知る当事者である若い女性たち自身であって欲しいと願っています。
もちろん実際には県や市区町村の政治家を筆頭に対策を練っていくのがもっとも現実的ですが、日本でもすでに国政選挙に参加可能な選挙権年齢は「満18歳以上」に引き下げられており、政治には若いうちから関与ができるようになっています。先に挙げたように歴代首相をもっとも輩出した山口県は当然その政治熱も熱く、実際に直近10年の選挙での自民党の得票率でも全都道府県でダントツの1位。一方で、近年問題視される投票率自体の低下が山口でも顕著で、2021年に行われた衆議院選挙ではなんと唯一50%を割ってしまう全国最下位。山口の若い女性たちは自分たちの住む街を変えることを諦めてしまっているのでしょうか?!
いやいや、心配することなかれ。山口県で昨年行われた県知事選の投票率では20代では男性よりも女性の方が投票率が高く(男性:24.57%、女性29.05%)、さらに20代よりも10代の投票率のほうがより高いという明るい兆しがあります(男性:26.42%、女性33.41%)。
それでもまだ世代の3分の2近くの人たちが関与していないのですから、もはやのびしろしかありません。奇跡といわれた明治維新の中心になったのは当時20代の男性たちでしたが、令和の革命は政治どころ・山口のより若い10代の女性たちから始まるのかもしれません。
そもそも気候が穏やかで、海や山など豊かな自然に恵まれている山口県。(人口流出先のライバルではあるものの)福岡・広島という都市圏とも隣接し、2つの空港に、新幹線の駅に至っては県内に5つもあります。台風の上陸や地震などの自然災害が少なく、震度観測記録が残る1919年以降の地震回数は富山県、佐賀県に次ぐ全国3位の少なさです。また一般社団法人ストレスオフ・アライアンスの「ココロの体力測定」調査に基づく、「ストレスオフ県ランキング2020」ではストレスオフ都道府県として男性が2位、女性が3位、男女総合ランキングにおいては堂々の1位を獲得しており、山口の女性たちも山口が素晴らしく住みやすい県であることは自覚しているのです。
日本の「女子道」生誕の地・山口
ではそんな明るい材料が増えてきたところで、山口の若い女性たちが、自身の出身県で誇りを持って暮らす未来を占ってみたいと思います。
未来を占うとき、多くの人が神社でおみくじを引くと思いますが、この全国のおみくじの実に7割が山口県にある「女子道社」という会社で作られているのを知っていましたか?(もちろん圧倒的シェアNo.1!)。そしてこの「女子道社」は日本ではじめて女性の積極的な活躍を願う動きが始まった場所でもあるのです。
「女子道社」が設立されたのはまだまだ男尊女卑が当たり前の明治時代。山口県の二所山田神社(にしょやまだじんじゃ)の宮本公胤は、『当たり前のように男性が外で稼ぎ、女性はおとなしく家をただ守る』、という状況を見ながら、このままで日本の未来が明るくなるわけがないと確信。「元始、女性は太陽であった」という有名なセリフを残したのはかの女性解放運動家の平塚らいてうですが、その平塚らいてふよりも先に、おそらく日本で一番最初に女性の解放運動に取り組んだとされています。
宮本は女性に不公平な日本の状況を変えようと活動をしながら、機関誌として「女子道」を発刊。残念ながら当時では早すぎた女性解放運動は志半ばで潰えてしまいましたが、その資金源として製造をはじめたおみくじの製造は今も脈々と受け継がれ、日本全国で多くの人の未来を占い続けています。
令和の維新を山口からー
今でこそさまざまな分野で男性以上に女性が活躍していますが、それでも日本国内における政治やビジネスの舞台での男女比の偏りは明らかです。(日本における女性議員の比率は 10.0パーセント(※)で、G7の中でも最下位)
※ 2023年2月時点の衆議員議員比率。内閣府男女共同参画局「女性活躍男女共同参画における現状と課題」より
社会の構成は男女半々なのですから、もっともっと政治に興味を持ったり、政治家を志す女性が増えて欲しいですし、男性もその環境づくりをサポートしたり、ときに異なる価値観や視点を持った良きライバル・同僚・仲間として刺激を受けて、互いに理解やリスペクトをしながらより良い社会をつくっていきたいものです。(もちろん政治やビジネスの世界の話だけではないですけどね!)
そのための土壌がある山口から、そこに住む若い女性たちが、誇りを持って自分たちが生まれた街に残って行政を変えていく、そして街や国を変えていくーおみくじなんか引くまでもなくそんな未来が視えるようです。
せっかくの伝統ある政治県・山口として、これからは初等教育から政治やジェンダーについての理解や興味を深めるプログラムを増やしつつ、県の魅力や誇りを深く知ってもらいながら、女性がより地元でも活躍できる環境を積極的に整えていくのも面白そうですし、その先には日本初の女性総理の誕生だってありえるのではないでしょうか。
さあ、いよいよこの4年の長きに渡ったリレーコラムの最後を飾るのはFACTイチ・女性にもスマートで優しい男前・松原からです!!