【事実発掘!FACT JAPAN 47 NO.27】青森県
FACTの澤邊です。
僕は企画アイデアが浮かばない時に頼る独自のルーティーンがあります。
それは「風呂に入る」こと。風呂に入れば、面白いかはさておき、必ず1案浮かびます。
3回入れば3案。7回入れば7案。でも不思議と、1回の入浴で何案も浮かびません。
家であればドラえもんのしずかちゃん状態に。会社近辺の銭湯に行くことも稀にあります。
ちなみに「会社に風呂を付けてはどうか」という提案は過去に瞬殺されたことがあります。
もし銭湯だらけの場所があったら、もう企画が浮かばない夜の悪夢にうなされることもありません。ということで今日は「日本で最も銭湯の数が多い、青森県」についてです。
銭湯天国、青森!
といっても、銭湯の総数だけでいえば、東京都や大阪府が勝ります。
しかし、人口10万人あたりの銭湯の数は、青森県が約23軒と圧倒的。(2020国勢調査)
2位の大分県が約17軒、全国平均は約3軒なので、大差での1位となります。
つまり、「人口1人あたり、身近に銭湯がある県、第一位は青森」です。
青森県は「銭湯」とはいえ、そのほとんどが「温泉」。
車にお風呂セットを常備している人が多いほどの“風呂好き県”としても有名です。
冬場はとても寒い地域ですし、温泉は身に沁みますよね。
●車に積んでてよかったお風呂セット
また、青森県の銭湯の多くが「早朝開店」で、朝5時からやっている所もあるほど。
一説によれば、江戸時代からの名残。漁師の多い青森では、朝早くひと仕事を終えてきた漁師さんの疲れを癒すため、朝早くから営業しているところが多いのだとか。
いま、青森はサウナーの聖地に!?
2016年頃から第3次サウナブームが起こり、「サウナー」と呼ばれるサウナ愛好家が増えています。(※ちなみに、第一次は1950年代、第二次は1990年代)
「サウナ → 水風呂or外気浴」という流れを交互に行う「温冷交代浴」によって得られるリラックス状態を示す「ととのう」というフレーズが流行しました。
ほかにも、
・「サ活」:サウナ活動そのもの
・「サ飯」:サウナ後に食べるご飯。サウナ後は様々な感覚が研ぎ澄まれ、めちゃ美味い!
・「サ旅」:全国各地のサウナ施設を巡る旅
などの派生語も生まれました。
大自然の中で外気浴を楽しめるサウナもあり、漁師町ならではの絶品グルメも盛り沢山!
青森は、滞在期間を存分にリフレッシュに充てられる旅先として、うってつけなのです。
●たとえば、JALの青森「サ旅」プランが人気
●「サ飯」例:全国丼グランプリ海鮮丼部門の第一回覇者 みなと食堂「ヒラメの漬け丼」
幸せなのに、短命!?太く短い青森ライフスタイル
さて、お風呂・温泉医学研究の世界的権威である早坂信哉教授が、2018年に行った大規模な調査に基づき発表した研究論文『銭湯利用と健康指標との関連』によると、「銭湯で入浴することが多い人ほど、自覚する健康状態が良好で、声を出して笑う人が多く、幸福度が圧倒的に高い」ことが判明しました。
●銭湯に入れば入るほど幸福度が高いという研究も存在
銭湯だらけの青森は、さぞ健康体の方々の集まりだろうと思われましたが・・・実は青森は日本でも有数の「寿命が短い県」。2021年度のデータでも、男女ともに平均寿命が国内ワースト1位なのです。
短命県である理由のひとつとして、寒い地域ならではの「(保存食文化も相まって)しょっぱいものが好き」「(朝から)お酒好き」「(朝から)ラーメン好き」という生活習慣に原因があると言われています。「朝ラー(朝ラーメンの略)」という言葉も普通にあるほどです。
事実、2016年時点カップ麺の消費量が日本一で、全国平均の1.5倍もありました。
(しかし現在は、コロナの影響で他県の上昇もあり、青森県の順位は下がりつつあります)
●2016年時点でのインスタントラーメン 県別消費量ランキング
この健康的には少々ネガティブともいえる「地域の個性的な日常習慣」を魅力的なものとして再評価し、ユーモラスな観光誘致ツアーとして生まれ変わらせたのが、同年2016年に実施された「短命県体験ツアー 青森県がお前をKILL」です。青森県の「短命なる日常」を体験できるツアーは話題となり、青森のPRにつながりました。
●「朝から日本酒」「味の濃い食事」「カップ麺夜食」など、県民の"日常"を体験するツアー
いま、青森が直面する最も大きな課題とは?
青森のイマをもっと深く知るため、八戸市で飲食店を経営されている傍ら、青森を中心とした東北エリア全体の活性化活動を多岐にわたり行われている、松坂直子さんにお話を伺いました。松坂さんにはFACTのオープニングパーティーでも美味しいご飯を振舞っていただき、日頃から大変お世話になっている方です。
●FACTとも縁のある、青森県八戸市を中心に飲食店を経営されている松坂直子さん
松坂さんが仰るに、現状の青森県の課題は何と言っても「人口の流出」。
数字で見ても、過去の5年間で約7万人、県全体の約6%の人口が流出しているのです。
「やはりコロナによる悪影響はとくに大きいものがあった」とのこと。メイン通りの百貨店や地元の商店街が次々閉店するなど、非常に厳しい現状がそこにはありました。
●青森県の人口は減少をたどる(2020国税調査)
「子供達が大人になった時、『青森にまた帰ってきたい』と思ってもらえるような県にするために何ができるかを考えたい」「そのために大切なことは、地元の方も気づいていない魅力に光を当て、サステナブルな価値にしていくことだ」と力強くお話しくださいました。
まさに、FACTの「価値ある事実発想」そのものだ、と思います。
短命県から長寿県へ!人間の生命力を引き出す青森へ
人生100年時代という言葉も、やや食傷気味な現代。
さらにリモートワークの普及によって、住む場所を限定せずに働く人が増えました。
コロナに象徴される様々な脅威の中、まさに切実に我々が求めているのは、「健やかに生き抜く力」、すなわち「人の生きる力」です。
青森は、そんな「人間の生命力」を根本から引き出してくれる銭湯やサウナ、そして「生きる幸せ」を感じさせてくれる美味しい食事やお酒、四季を彩る大自然にあふれています。
●四季すべてが美しい十和田湖。立っているだけで生きる力がみなぎってきそうです
いまは短命県と呼ばれている青森だからこそ、この時代、逆に他の誰よりも説得力を持って「健やかに生き抜く力を持つことの大切さ」を力強く発信することができるのではないでしょうか。
県をあげて短命県から長寿県へと進化を遂げる時、「人の生命力を引き出す」というコンセプトのもと、青森に眠る様々な隠れた事実が新しい息づかいを始めていく。
それが、「この場所で生きていきたい」と人をこの地にとどまらせる魅力になっていくのではないかと思います。
と書きながら、僕自身が、まだ青森県には実際に足を運んだことがありません。
しかし、実際に訪れて、初めて見つけられる魅力が数多くあるはずです。
いつかFACTの社員旅行で、温泉に浸かってアイデアを出しながら、青森のさらなる隠れた魅力を探る機会をつくることができたらなと思います。
もちろん、個人でも、近々訪れたいなと強く思いました。
次回は、風呂に入らずともアイデアを生み出せるAD、中村心からお届けします。
どうぞ、お楽しみに。
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