お金の価値
お金の価値は親になって初めてわかった。
子供の頃、お小遣いは“当たり前”だった。少ないとさえ思っていた。
習い事は“当たり前”だった。習わさせられてる感覚だった。
お年玉は“当たり前”だった。今年はいくらか予想していた。
旅行は“当たり前”だった。
レストランでの食事も“当たり前”だった。
高校も“当たり前”だった。
大学も“当たり前”だった。
下宿代も“当たり前”だった。
仕送りも“当たり前”だった。
全部“当たり前”だった。
社会人になって大人になった。
給与を貰って「こんなもんだろ」と思った。
自分で働いて稼いだお金なんだから、自分の好きなように使っていいんだと“当たり前に”思ってた。
結婚した。
共働きだからお金に余裕はあった。
買いたいものは迷わず買った。
日頃頑張ってるご褒美なのだとそう思っていた。
子供が産まれた。
この子の将来を考えた。
私のこの給与の何割をこの子に使うのだろうか。
初めてお金の価値に気がついた。
嫌な思いも、辛い思いも、全て耐えて得たお金。
両親は何も言わず与えてくれていた。
“当たり前”のように与えてくれていた。
子供と妻を連れて実家に帰ったとき、両親はご飯に連れてってくれた。
大人合計5人の会計を“当たり前”のように会計する父。
『ありがとう。ごちそうさま』
初めて、心から言えた気がした。