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CTO梅林がシリコンバレーで磨いた技術と思想で創る、コミュニケーションクラウド

不動産仲介特化型のコミュニケーションクラウド「Facilo(ファシロ)」を開発するCTO、梅林泰孝さん。高い技術力だけでなく、エンジニアからの支持が厚いことでも知られている。Google、サイバーエージェント、スマートニュースと華々しいキャリアをソフトウェアエンジニアとして築き、アメリカに移住。市川さんと共にFaciloを立ち上げた。Faciloの事業や開発にどのような思いを持っているのか。その経緯はどんなものだったのか。話を聞いた。

PROFILE
CTO 梅林 泰孝さん

新卒でGoogleに入社し、検索品質向上チームに従事。その後、サイバーエージェントで「AirTrack」を開発責任者として国内最大の位置情報プラットフォームに成長させる。米国シリコンバレーでスマートニュースのテックリードを務めたのち、Facilo共同創業。現在もシリコンバレーを拠点に活動中。毎週金曜にピックルボールをやるのが楽しみ。

大規模なシステム開発、「プロダクトを大きくする」経験が基礎に

大学時代は機械工学科でエンジンの設計を学んだという梅林さん。インターンをきっかけにソフトウェアに関心を寄せるようになり、大学院ではコンピュータサイエンスを研究した。その後、新卒でGoogleに入社。輝かしいキャリアのスタートを切った。

「新卒でGoogleに入社することになり、検索結果の品質改善チームに所属。スパムサイトの分析やトレンドの調査など、検索結果を良くするという業務を担当していました。チャレンジングな組織でたくさんの経験を積むことができました」

その後、大きな裁量でキャリアを築きたいという思いからサイバーエージェントに転職。「AirTrack」というシステムの開発責任者を約4年間担った。そこでの経験をこう振り返る。

「1秒間に何回外部からのアクセスを処理するかの「QPS(クエリ毎秒)」で、900や1000を超えるようなシステムの立ち上げを経験でき、ソフトウェアエンジニアとして多くを学びました。この時の開発経験が今の自分の基礎になっています」

当時のサイバーエージェントは、アドテクに力を入れ始めた時期でもあった。

「自分と同じようなタイミングで何十人も入社したり、広告システムがいくつも立ち上げられていて、『プロダクトを大きくする』ことを肌で感じることができました」

エンジニアとして成長するためにアメリカへ

その後、日本でのキャリアにピリオドを打ち、活躍の場をアメリカに移すことになる。IT系のスタートアップが勃興していた2018年のことだ。

「成功している人を横目に見て、漠然と『いつか自分で会社をやってみたい』という思いが芽生えたのです。そのためには、まずはソフトウェアエンジニアとして成長することが必要だと考えました。それならばアメリカで仕事をするのが近道であるはず。当時アメリカ進出していたスマートニュースに転職しました。

スマートニュースでは、広告配信やニュース配信のシステム開発に携わりました。私が渡米した当時は、まだエンジニアが数人だけという状況。開発を行いながら週にいくつもの採用面接をし、技術を磨くだけでなく組織作りの楽しさと難しさを実感した貴重な期間でした」

「実績と人柄」への信頼。二つ返事で共同創業者に

時を同じくして、サンフランシスコでは後にFaciloの共同創業者となる市川さんが起業の計画を練っていた。その出会いから創業まで、長い時間はかからなかった。

「市川さんと知り合ったきっかけは、ベイエリアの日本人コミュニティでのBBQです。お互いの子ども同士を遊ばせたり、公園に行ったりするなかで仲良くなっていったんです。ある時、市川さんからビジネスの構想を話してもらい、「一緒に会社をやらないか」と。二つ返事で引き受けました。」

この決断の速さの背景には、梅林さんの知識と経験からくる嗅覚があった。

「『起業家はどこで選択を誤るのか』という有名な本に、“創業メンバーは自分とは異なる属性が良い”という趣旨が書かれていたのを思い出しました。私はエンジニアですから、起業するならそのパートナーは営業出身の方が良いはず。営業経験のある市川さんはそれにぴったりでした」

また、市川さんに感じた魅力はそれだけではないと言う。リクルート時代の実績や、ずっと不動産業界に携わってきたこと、不動産テック領域に明るいのは「前提です」と前置きした上で、その魅力を語ってくれた。

「『人柄が良いな』と思ったんです。エンジニア畑と営業畑では、コミュニケーションの仕方が異なるので摩擦が起きやすい。けれど、市川さんは相手に合わせて柔軟なコミュニケーションをする方なので、居心地が良い。経歴やスキルだけでなく、その人となりに惚れ込んで、すぐに「一緒に働きたい」と思いました」

Photo in San Francisco

「BtoB」プロダクト開発の魅力

かくしてFaciloを立ち上げることが決まった。梅林さんにとって初めてのBtoBのプロダクト開発である。BtoB開発を行ってみて、どこにやりがいを見出しているのだろうか。

「プロダクトを使ってくださるクライアントの声を聞けることです。実際にプロダクトを使ってくれて、「こういう機能が欲しかったんだよね」「次はもっとこういう機能が欲しい」といったフィードバックを頂き、開発に活かすことができる。クライアントが喜んでくれるのを肌で感じられること、そしてそのニーズを、プロダクトに反映するサイクルが速さに魅力を感じています」

Faciloの具体的な開発環境に話は進む。Faciloで採用しているのは「Ruby on Rails」。技術選定の背景にはどんな思いがあったのか。

「管理画面の作りやすさと効率の面で、Ruby on Railsは必要な条件を満たしていました。また、フレームワーク自体の規約が強く、誰が書いても似たようなコードになりやすい特徴はフルリモートの開発体制と相性が良いと考えました。ある意味柔軟性はなくなりますが、サーバーやシステムの細かい最適化よりも、現在のプロダクトと組織に合う言語を選定したのです。」
 
常にプロダクトと、その先にいるクライアントとエンドユーザーに向き合い、その本質を見据える。

「エンジニアは「技術で問題を解決するのが得意な集団」です。ただ、解決方法がすべて技術であるべきだとは思いません。技術で解決することにこだわらずに問題の本質を常に探っていきたいです。

一方で、「開発の効率化」は私のミッションですので、積極的に投資していくつもりです。具体的には、静的解析、lintなどのツールについては積極的に採用し、ソースコードの均一化や解読効率、ひいては組織のスケールにじわじわ役に立っていくのではと思います。最近話題の「Copilot」や「ChatGPT」などのモダンな開発手法も、積極的に検討したいと思います。

コードの品質はもちろん大事ですが、プロダクトがちゃんと動くことが大切です。僕たちはプロダクトを提供しているのであって、ライブラリの開発を生業としているわけではありません。コードの品質とプロダクトの品質は必ずしも一致しないこともあります。マーケットのニーズに合わせた速いプロダクト開発を大切にしていきたいです。

流行りの技術を取り入れることを「技術的チャレンジ」と捉えているわけではありません。表面的に取り入れるくらいなら、今の技術を深掘りした方が強いエンジニアリングになると信じています。基本的には既存システムとの親和性を考えて、最適解を導きたいと思っています。それが結果的に「流行りの技術」であればもちろん取り入れますし、そうでないなら取り入れないという方針です。」

常に問題や課題の本質を見据え、流行に流されない決断をする。梅林さんが築く優れた開発環境がFaciloの成長を支えることを予感させる。

エンジニアの成長環境「優れた同僚 x 難しいプロジェクト」

これからどんなエンジニアがFaciloに参画し活躍するのだろう。これから出会うエンジニアたちのキャリアをどう考えているのか。そして、Faciloで働くことがどんな機会を与えるのか。

「CTOとして、エンジニアのキャリアアップを考えるのは当然の役割です。エンジニアが成長できる環境は「優れた同僚 × 難しいプロジェクト」の掛け合わせだと思っています。まず、「優れた同僚」は採用によって実現していくつもりです。スキルあるエンジニアを採用するのはもちろん、性格や素養によってはジュニアの方も採用しキャッチアップのサポートをしようと考えています。

一方で、「難しいプロジェクト」を常に提供するのは難しいかもしれません。このために問題をより高度にしたり、必要以上にアーキテクチャを複雑にするつもりはありません。その時のFaciloにに必要な開発を見定め、成長機会を提供していきたいです」

そして、それを受け止める開発組織についてはこう結んだ。

「現在の創業メンバーはそれぞれプロフェッショナルな人ばかりで、Faciloの勤務環境は自律した働き方を求める方にぴったりです。無駄なミーテイングはありませんし、柔軟な働き方にも理解があります。その背景には、市川さんも私も、アメリカでの勤務を通してダイバーシティーを重んじるカルチャーを経験したこと、私自身が今もアメリカから働いていることがあると思います。これからのFaciloは、日本の良いところとアメリカの良いところを混ぜたような会社にしていきたいですね。今年はぐっとアクセルを踏んで、スピード感を持って組織を成長させていくつもりです」

本質を捉え、効率的に働く。けれど、梅林さんの話からはこれから共に働くエンジニア、社員への愛情が感じられる。これからの不動産業界のDX推進にますます期待が膨らむばかりだ。


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