「君たちはどう生きるか」で思い出した死別の経験
13で父を突然失った経験は、私にとって、私の家族にとって大きな衝撃だった。同情されても、「自分も親を亡くした」と教師に言われても、私の経験は誰にも理解できないと思っていた。
話題になっている「君たちはどう生きるか」を旦那と見に行った。
見ながら延々と「これはあの作品のオマージュだ」「この表現好きだな」「これこれ、ジブリっぽい」なんてずうっと考えながら見ていた。主人公の大人とのかかわりには覚えがあるシチュエーションもあり、「そうそう!」「あーーーー、そうだよねぇ」なんて、気づけばインナーチャイルドと一緒に興奮していた。
エンドロールで静かに流れる、米津さんの声。なんの前触れも無くブワァっと感情が高まり、視界がぼんやりと歪んだ。「泣くのは恥ずかしい」普段はそんなことを思わず所かまわずボロボロ泣く私だが、このときはなぜか泣くのが嫌だった。
おそらく、この作品を「泣ける話」にしたくなかったからだ。
これは、一人の少年の人生のたった一部なのだ。少年だけの経験で、人によっては同情するかもしれないけれど、少年の人生の一部にすぎない。
私が父との死別を経験したのは、私だけの経験で、妹と弟と母にとっては別の経験だ。同じ出来事を経験したけれど、これは私の経験なのだ。
旦那は、少年の死別の経験に対してはあまり思うところはないようだった。
私との感想の違いは、経験の違いなのだろうと思う。
どっちだ良いなんてことはないけれど、経験によって感じるものは違うのだと改めて感じた。そんな映画だった。
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