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夜のバス

早朝から恋人がスキーに出かけて行ったので、寝ぼけ眼をこすりながらひとりたまごトーストをこしらえた。胡椒の配分を間違って、ちょっとしょっぱかった。

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ラジオからはご機嫌なハワイアンミュージックが流れている。InterFMの「iHeart Hawaii」、何となく流し聴きしてしまう、好きな番組だ。

しょっぱいたまごトーストも、陽気でちょっぴり大雑把な現地の店員さんがつくってくれたと思い込んだら少しだけ愉快な気持ちになった。

今日はかねてより気になっていた写真家「ソール・ライター」の展示へ。なんと、ライターはニューカラー(※)の巨匠と称される「ウィリアム・エグルストン」が写真を撮り始める20年ほど前からカラー写真を手掛けていたそうだ。

※1960年代から1970年代にかけて、アメリカの新世代の写真家たちがカラー写真で作品を発表し、それまでモノクロ写真が主流であった芸術写真の世界に新風を吹き込んだ。
70年代後半には多くの写真家がカラー写真を作品に使い始めるようになるきっかけとなったこのムーブメントは、写真評論家サリー・オークレアの著書「ザ・ニュー・カラー・フォトグラフィ」のタイトルをとって、「ニューカラー」と呼ばれるようになります。(出展: http://a-graph.jp/2018/09/22/36361)

個人的お気に入り作品、トップ3は「夜のバス」「薄紅色の傘」「靴」。
被写体をはっきり、しっかり写すのではなく少しだけぼかして写したり、さりげなく傘の効果を際立たせるような構図だったり、影から覗いてみたり...。

ライターの視点は、どことなくやさしくて好きだ。一部の要素が全体を彩る魔法。わたしも文章表現に携わるうえでどうしたらそんな視点を持てるだろうか、などと考えた。よい展示だった。

それにしても、しいんと静まり返った美術館に人々がぞろぞろ連れ立ち、無言で一枚の写真をじいっと見ているの、なかなかにシュールな光景。

思わず写真におさめたくなったけれど、もちろん撮影禁止なので必死に耐えた。こんな作品(?)が見れるのも、美術館に訪れる楽しみのひとつ。

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余談だが、美術館併設の「LES DEUX MAGOTS」というカフェ、何かを観た折には必ず立ち寄る。夢気分が延長できて、貴族になれるから。ここだけのひみつ。

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帰路につき、「夜のバス」のポストカードを手にとって眺めた。

途中停車しながら大勢の人を乗せて進んでゆくバス。目的地で降り「ひとり」として放り出されるとき、なぜだか無性に寂しくなる。でも、それが大好きだ。ああ、人生って感じで。

1枚の写真に、今まで通りすぎた日々を見る。よい一日だったなあ。






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