夜のベランダ
童話風に書く妄想Another Story
イスのいっしーくんは いつもベランダにいます おもに ベランダのフェンスと くれてはのぼるひのひかりをながめてすごしており たまにハトやすずめがとんでくるときは 「きょうはあついねえ」「ちょうしはどうだい」などと おはなしをするのがにっかです
そんなあるとき いっしーくんのもちぬしが いっしーくんをへやにいれました そこはとてもあたたかく こうふくなばしょでしたが ぼんわりとしたしょうめいがともったり たまにくらくなるばかりで まぶしいばかりのひのひかりも けんそうも ありません いっしーくんは「またはやく そとにでたいな」とおもいました
編集後記
夜のベランダが大好きだ。
朝は何となく明るくて気恥ずかしくなるので、21時をまわったあたりにベランダへ出陣。
どこかの家庭から漂ってくるごはんの匂い。煌々と光るお店の看板。びゅわーん、ごおお、ぶうんと音を立てて走り去る車やバイクの音。人々の笑い声。
それらぜんぶ抱きしめて上階から見下ろしていると、何となく「この世界はすべてわたしのもの」という気持ちになり、ふかふかと笑ってしまう。
ベランダでは、自分の来し方についてよく考える。
酒を飲み、しこたま泣いた夜。積み上げても崩れ去るもので足場をかためていた日々。海底からいっとき浮上したにも関わらず、また潜りたくなってしまった瞬間。
それらの毎日を思い浮かべると凄愴の思いに襲われることもあるのだけど、今は気恥ずかしいながらもちょっとだけ「朝」を生きれている気がする。だからいいんだ。ベランダの扉をがたんと音を立てて閉める。
わたしの人生、ずっと「真夜中」だと思い込んでいたから、それは大きな発見だった。本当に大きな。「今」に感謝。
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