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香水のオーダーは好きなんだけどさ

まずこれを読んでみてほしい。

セーヌ左岸のティノ・ロッシ庭園。夜に集うダンサーたち。銀色の月と船明かりに照らされた体が音楽のリズムと混ざり合う。夏の暑さが二人の男女を喧騒から連れ出し、翌朝のシーツが眠れぬ夜の香りを放つ。

NOSE SHOPホームページより引用

BDK Parfumsのグリシャーネルという、わたしの好きな香水の説明だ。
スパイシーなトップからクリーミーなラストへ、香りの移り変わりを感じながらこの男女の一晩に想いを馳せてしまう。

そしてこちらは同じくBDK Parfumsのパスソワールという香水の説明。

仕事を終え、手鏡でメイクを整え、赤いベロアのようなリップを引き直してからクラブへ。一杯のウィスキー。フロアで視線が交差する。深夜の2時。彼の耳元でささやいた。「また今度ね」。

NOSE SHOPホームページより引用

この香りはサンプルを使っただけだが、こんな可愛らしい香りを纏ってそんなこと言うの!?となった。

わたしはこういう、香水の背景にあるストーリーが好きで、香りを感じながらストーリーのこの部分かな…とか、この香りする人がこんなこと言ったらいいじゃん…なんて想いを馳せるのが好きだ。
なので香水をオーダーできると知った時、え!?わたしの妄想…もとい思い描いたストーリーやシーンや人物像が香りにできるの!?とテンションが上がった。そんなの絶対に好きだって!!と。

まぁこのあと実際にオーダーしてみたら頭の中にあるイメージを言語化することも、イメージと香りを結びつけることも、プロの手を借りてなお難しいことに気づくのだけど…
自分で体験してみたからこそ調香師って本当にすごいと実感したしやはり香水とは一つの作品だな、と改めて強く思うようになったりもしたのだった。

と、作った香りだけでなくその過程でも楽しんだり学んだりしてるんだけど、作り終わった後にいつも後悔してしまうことが1つだけあって。

頭の中にあったイメージを伝えきれてない!!

これは語彙力の問題もあるけど、それは対面であればお店の方がフォローしてくださるからだいたいなんとかなる。
問題はなんとなくの気恥ずかしさだ。
「翌朝のシーツが…」とか「『また今度ね』って囁くような…」とか…これは前述の好きな香水からの引用ではあるが、似たような雰囲気のことを口に出そうとするとなんとなく気恥ずかしい。自意識過剰なだけだってわかってるけど!

急に気恥ずかしさを捨てて語ることも難しい、でも理想の香りに近づけたい。後悔はしたくない。とりあえず今後しばらくはメモを読んでいるていで全部伝えきろうと思っている。いつか堂々と語れるようになるといいな。

そして今日もまた妄想の断片をメモするのであった。