大丈夫、そんな綺麗に生きているひとなんていない。
5年前に出会った方から告白された。
「5年前に出会った瞬間から恋に落ちてしまっているんだ。僕は妻子持ちで、立場上何も求められないけど、君に恋してしまっている」
そう真剣に伝えていただいた。
本当に真剣なまなざしだった。
少し照れていたが、伝えたいという想いがしっかり伝わってくるような話し方だった。
その方には、この5年間本当にお世話になっている。
お子さんもいらっしゃり、愛妻家としてみんなに知られている。
仕事も家庭も充実していて、素敵な紳士的な方。
私にもよく家族のことや、結婚のアドバイスをしてくださっていた。
複数人で食事にいくことはあったものの、二人で食事することはめったになく、あったとしても仕事の話を終始していた。
そんな方が赤面して、いつものスマートな物言いを失って
急に少年のような口調で、告白してくださった。
人間は本当に困ると笑うしかないようで
私はそれを聞いて爆笑してしまった。
それしか対応方法がわからなかった。
それくらい予想外の告白。好かれている場合、なんとなく読めるものだと思っていたが奇想天外の展開にどう対応していいか、脳が思考停止になってしまった。
しかし今こうして冷静になると
なんて失礼な対応をしてしまったのだと反省。
その場でお断りすることもなく、笑ってごまかして逃げるように帰宅してしまった。
本来であればそんな大事な気持ちを伝えてくださったことを
笑うべきではない。真摯に向き合うべきだった。
また、5年前から思ってくださっているのだとしたら
5年間その思いを抑え、私が困らないように伝えるのを我慢してくださっていたのだとしたら、それは彼はつらかったと思う。
出会った瞬間から好いていてくださっているということは、
きっと私の何が好き、というより本能的な感覚のやつなんだろう。
この本能的な感覚ほど抑えるのがつらい感情はないことを私は身をもって
体験しているのにも関わらず、真摯に向き合うことができなかった。
最低だ。
想いをつたえてくれて、
想いを抱えさせてしまって、
運命論的なものはあるのだろうか。
あんなに立派な方でもこんな感情があることに安心した
みんなグレーの感情を抱えて、そんな感情を愛して、
生きているんだ。
そんな綺麗に生きている人なんていない。
大丈夫、グレーな感情も愛して、
ゆっくり進もう。