記憶
「えー!よく覚えてますね?記憶力いいー」と驚かれる。エステの脱毛で、危険な場所があらわになっている時に。二ヶ月に一度の美容院で。学生時代からのなかよしに。
夫は一緒に見たことも忘れて、「おもしろい」と言って2度映画やドラマを楽しめる。私はオチまで覚えているので、面白いと思っても、夫ほどの新鮮な面白さを何度も感じることは、まずできない。
だから自分の記憶は、夫や、忘れられる世間の人よりも正しいと正直思っていた。
先日、同窓会があった。
「あの時は楽しかったよね。隣の席だったんだよ。6年の頃。覚えてる?発表とかしてさー」
私「え?そうだったっけ?」
「えー?!覚えてないの?!ショック!」
私「小学校一年生の頃とかに一緒に帰ったのは覚えているんだけど。。」
「俺、逆にそれ覚えてないや。」
私「私、小6の時はいじめられていた気がするんだよね。。」
「うん、そうだね。いじめられてたよね。でも女子の間でだけでしょう?」
私「そうね。。でもなんか辛かった思い出しかないのだよね。でも楽しんでたんだ?嬉しいな」
「うん。クラスで一番笑ってたよ。」
覚えていない。
泣きそうになった。
私の記憶は、過去のいつの時点かの私のために、そういう姿になる必要があったのかもしれない。
灰色一色の記憶のページに少し淡い色味が加えられて、それは嬉しい気持ちになったのでした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?