ガール
こちらは2012年09月19日の日記です。
「ダメだ、動かない。」
私は諦めた。
ある、一枚の絵の前。
私はその絵を斜めから観ていた。
正面には初老のご婦人。
食い入るように見ている。
動かないのはそのご婦人。
身を乗り出し凝視したまま、ガンとして動こうとしない。
その絵をなんとか網膜に焼き付けようと、頑張っているかのよう。
正面から観てみたいと思い、しばらく待ったが全く動く気配がない。
私は諦めてそこを立ち去った。
マウリッツハイス美術館展での出来事だ。
かねてより楽しみにしていたこの展覧会。
妻と二人、上野にある東京都美術館まで足を運んだ。
9月の平日にもかかわらず、美術館は長蛇の列。
何と入館まで70分待ちだという。
まだ日差しも強く、汗ばむような陽気だったが、木陰での行列は幸いした。
ピッタリ70分後、ようやく館内に入ることができた。
しかし、館内も大混雑。
自由に動けない。
1ブロックごとに10枚程度の作品が飾られている。
最初はノロノロと行列に任せて動いていたのだが、あまりにも時間がかかりすぎるため、列から離れ、観たい絵を人垣の隙間から見ることにした。
何ブロックか観た後、エスカレーターで登った先のフロアにその絵はあった。
「真珠の耳飾りの少女」別名「青いターバンの少女」。
マウリッツハイス美術館では「ガール(少女)」の愛称で呼ばれているという。
この絵だけは特別扱い。
そのブロックには、この1枚のみしか掛かっていない。
左側は人だかりになっている。絵を近くから観るための順番待ちだ。
正面はその後ろから観るためのスペースになっており、ロープで仕切られている。
私は列には列ばず、正面を選んだ。
そこには30人ほどの先客がいたが、運良く左斜め前までたどり着く事ができた。
「ようやく少女に会えた。」
思ったよりも小さい絵だった。
他とは違い、その絵だけはガラスで仕切られている。
少女の表情はガラス越しでしか分からない。
本当は絵の質感、細かな描写を堪能したかったが、そこまで観る事はできない。
列に列んだとしても、おそらく無理だろう。
せめて正面からでも観てみようと、しばらく待ったが先述の通り。
フェルメールの作品はこの絵を含め、2枚だけ。
これにはちょっと拍子抜けしたが、代わりにレンブラントを観ることができた。
晩年の自画像他、数点。レンブラントらしさがよく感じられる作品だ。
最後は時間がなく、じっくりと最後まで観る事ができなかったのがちょっと残念。
でも観られただけでも良かったとしよう。