会社のユニバーサルデザインチームにジョインしたら、気づいたらUDチームリーダーになっててサクッとMUDアドバイザー資格を受けてきた話
6/16にメディア・ユニバーサルデザイン教育検定3級を受けてきた。
https://www.media-ud.org/assay/
ら、本日(7/6)無事に合格通知と認定証が届いた。
認定資格:MUDアドバイザー
認定番号:2551番
ということは、日本で2500人ちょいしか居ない、内閣府認証のアドバイザー資格を得たということのようである。(名刺の肩書に載せていいよってぐらいの資格)
私とユニバーサルデザイン
今でこそアプリばかり作っているが、以前は紙モノや壁面広告や懸垂幕のデザインを10年以上やっていた。一時期鉄道系の建設コンサルの社内報を作っていたこともあり、私の中でUDといえば「どこそこの鉄道会社でイワタUDフォント使いはじめた」みたいな認識で、駅の表示板用フォントのことを指すという感じだった。
その他、印刷会社でパンフレットを大量に生産していた頃には、たまにイワタ新聞UDをメインタイトルで使って、しかも文字詰めしまくって使うというような、UD=フォントのことでしょ?モリサワだけじゃなくてイワタとフォントワークスもあるよね知ってるよーみたいな感覚だったのだ。(余談ですがフォントワークスは筑紫が好きすぎて、ブローシャ作るとき使いまくってました)
会社のユニバーサルデザインチームにジョイン
そんな私なので、フェンリルに入社してすぐユニバーサルチーム発足させるけど興味ある人という募集で参加した動機は、実際アプリにUDってどうやって落とし込むのか知りたいという程度の軽いノリだった。
社内のチームメンバーも発足したばかりということもあって、ユニバーサルデザインとインクルーシブデザインのことは知ってるけど、実際違いってなんだっけ?とか、本で読んだけどどういう観点で業務に活かせるの?というところから探るような形。
私に至っては
私が担当してるような規模が大きめなアプリ案件でUDフォントとか使ったら許諾料大変そうだよね
とかいう今思うとかなりトンチンカンなことを心の底で思いつつ、第一回チームミーティングに参加していたレベル。
とりあえずは、チームリーダー主導のもと、まずはユニバーサルデザインとはなんぞやを紐解いて行くこととなった。
うちの会社は大阪に本社があるので、大阪本社と東京支社で分担して情報収集することから始めることに。
■大阪本社メンバー:UDに関する書籍を集め、読書の中から業務に落とし込んだり共有にできそうなところをピックアップ
■東京支社メンバー:UDのセミナーや勉強会が多数開催されているので、参加して情報共有したり業務的に活かせるところを探る
という形に落ち着いた。
UDの資格やセミナーを探っていたら一ヶ月後にMUD教育検定を発見
東京支社勤務の私はもちろんセミナーや勉強会担当。いろいろチーム内で共有してもらった中にMUD検定を発見した。しかも一ヶ月後。
直近すぎる…と思いつつも、UDとはなんぞやを紐解くには受験するしかない!と一念発起。
しかも発足したばかりでまだなんの成果も出してないから当たり前に予算なんて微塵もついてないところを、あの手この手で上司を口説き落とし「合格したら受験料を出してもらう」算段までつけて、いざ試験に臨んだのである。
ちなみにこのあの手この手使ってる時に、あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
UDのチームリーダーが「婚活成功したしキャリアアップのために転職するからあとは任せた」という感じで退職してしまったので、気づいたらなぜかチームリーダーになっていた。な…何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのか、、、
長くなりそうなので、閑話休題。
MUD教育資格試験の中身
結論から言うと、
マジで受けてよかった。
これに尽きる。
というか、アナログ・デジタルにかかわらず、デザイナーやディレクターという肩書ついてる人は全員知っておくべき事柄だった。
試験日は朝10時から夕方4時ぐらいまで座学のち1時間試験というハードスケジュールだったが、すべての話に目からボロボロうろこが落ちる感じの講義がみっちり6時間!
あと、ありがたいことに私の UD=フォント という相当間違った認識が見事に矯正された(苦笑)
試験内容
実は試験内容や教材の中身はバラさないでくださいという感じだったので、サクッと概要だけ。
午前:色覚編講師:伊藤先生(東京メトロの路線図をUD改定した方)
主な講義の内容としては、
■ユニバーサルデザインとはなにか■ユニバーサルデザインの7原則■バリアフリーとユニバーサルデザイン違い■MUD(メディアユニバーサルデザイン)とは ○色覚異常の対応 ○高齢者への配慮 ○UDデザインの考慮すべきこと(試験出るよ!)
といったラインナップ。
試験に出そうなところに付箋をつけて…
ということだったが、結果教科書は付箋だらけでこのざまである
特に「ユニバーサルデザインは色覚異常の方だけでなく、高齢者にも配慮したデザインであるべき!(超高齢社会の日本に於いて、色覚異常者数よりも高齢の対象者数のほうが圧倒的に多い)」というのがあって、配慮の仕方やデザインでの落とし込み方やシュミレーションの仕方が今すぐ使えるTIPSだらけ。
「明日からどんどん案件で提案していかなきゃ」というよりも、「なんで今まで提案してなかったんだろう、ヤバくない?」という危機感を私自身が煽られまくったこともあり、後日のFB時に当社のUDチームに熱く語りまくり。みんなにさっそく響いたのか、新旧の案件でどんどん提案として盛り込むような形で進めることになった。
というわけで、今後のフェンリルでUDに関する提案やチェックはどんどん行っていく予定である。
Photoshopできる簡易色覚チェック
色覚異常にはいろいろな種類があるのだが、Adobeを使っている人は今すぐPhotoshopかIllusutratorを開けて「表示」>「校正設定」> から、色覚チェックを試してみて欲しい。
P型(1型)色覚
D型(2型)色覚
という感じで、トップ画の色とりどりの傘は色覚異常の方にはこんな感じに見えているのがシュミレーションできる。
もう一つオススメなのは、Google ChromeのアドオンにあるシュミレーションツールのNoCoffee Vision
P型、D型以外にも、少ないとは言われているがT型のシュミレーションにも対応している。
しかもこれ、ブラウザのアドオンなので、例えばYoutubeなど動画のシュミレーションも再生しながらできる。
色だけじゃなくブラーをかけたりと、高齢者の視野狭窄みたいなものを簡易でエフェクトかけられるので、最近の案件ではブラウザ上のプロトタイプを画面遷移させながら、見えにくいとろがないか必ずチェックしている。
文字組版だけでお茶碗3杯くらい食べられる
話がそれたが、午後は文字組版。
なんだかんだ紙モノのデザインを15年ぐらいやってたので、文字組版は大好物。フォントだけで数時間トークが止まらなくなる私でも知っていて損はない、おそらく新入社員とかそういう人たちこそ受けておくべき基本のキを、さわりだけとはいえ充実の2時間で網羅されていた。
午後:文字組版編講師:小山先生(大学で組版とかフォントとか教えてた元教授)
文字の設計と書体文字組版とはUDに最適な文字級数ユニバーサルな文字組版をサポートするフォントなど(UDフォントの成り立ちとか)
それにしても、ふつうに講義の中で級数出てきていた。DTPをやったことがないデザインナーはきっと「級数何それ」って思うんだろうなと感じた。
今どきは当たり前に、文字を設定するときの単位はピクセルやポイント、せいぜいミリという感じだろうが、もともとの組版では、文字の大きさが「級(Q)」文字送りが「歯(H)」という単位。私は今でも印刷物作るときはいちいち単位を級に変えないとダメな人間なわけだが、教授も「10Q14Hみたいな、級歯単位じゃないと文字組みできないですね」という方だったので、講義を聞きながら、教授とは一回じっくり級数表なんか眺めながら語りたいわーって思いつつ、午後の講義も終了。
途中、手詰めされた活版の名刺セットや、それこそ一文字づつピンセットで文字詰めされた生版下とか、貴重な資料も多数見せていただいて眼福。
4時〜試験開始(60分)
試験の内訳とし得筆記問題がだいたい7割。教科書は持込可能だったのと、不正解はカウントされず、正解だけを加点する形式。
その他、選択問題3割。しかし選択問題は数の割に配点が高いので、ここで落とすと痛い…
とはいうものの、キチンと講義を聞いていれば3級は十分合格できるレベル感。講師によるとMUD合格者はおよそ8割。場合によっては100%受かったこともあるようなないような…という話だった。
あと、試験時間が1時間と短く、見直すという時間がほとんど取れない感じ。不合格の人は時間配分をミスった場合が多そうな気がしている。
総評
1.とりあえずUDのさわりを知るには良い試験(1日で講義も試験も終わる)
2.確か合格者は3000人ぐらいと言っていたはず。(と思ったら自分が2500番代だったので聞き間違いかも)
まだ世間の認知は低いが、フェンリルのように公的機関や官公庁の案件も多数手がけているベンダーやデザイナーは必須の資格と言ってもいいかも。
3.文字組版などWeb制作系しかしてない人にはちんぷんかんぷんなところからやってくれるので、私が教育担当なら新入社員は全員受験させたい
考えてみると、見やすさ重視でわざとふところ深めかつ余白を広めに作ってあるUDフォントを文字詰めしまくってたという、本来の見やすさをわざわざ壊したダメダメぷりだったレベルの私だが、MUD検定受験を終えた今では社内でイチニを争うUDマニアになりつつある。
別にMUD協会の回し者でないのだが、UDという何それ美味しいの?という感じの人こそ、まずはMUD検定を受けてみて薫陶を受けると、デザイナーとしても一皮剥けるんではないだろうか。