0700:自治体による他県事業者規制について再考
昨日、鳥取県の青少年健全育成条例による有害図書指定の問題について記事を書いた。
昨日のポイントは「条例改正で他県のネット事業者が新たに規制されたというのは誤解で、元々他県事業者も規制対象だった」ということと、それでもなお「Amazonのようなネット大手の取り扱いを通じて県外の出版社に大きな不利益を与えることはやはり問題だろう」「このような大きな影響のある判断の議事録詳細を作っていないのはあり得ない」ということだ。
今日になって、私のメインフィールドである消費者行政でも、被害地が県内でありさえすれば県外の悪質業者も規制対象になること(被害地主義)に思い至った。これは条例でもそうだし、法律に基づく事務も同様だ。
以下、今回ネット通販がモチーフであることからそれに近いものとして、特定商取引法の通信販売に関する規定を確認してみよう。なお、押し売りなどの訪問販売など他の取引類型でも構造は同じだ。
特商法はまずもって国の事務であり、それを所管する「主務大臣」は内閣総理大臣、実務上はその権限が消費者庁長官に委任されている(法67条1項、3項)。その事務の一部が法68条に基づき上記政令で都道府県知事が行うこととされているわけだ。
法14条は「改善指示」、15条は「業務停止命令」と呼ばれ、違法行為の程度(「害される」か「著しく害される」か)によって使い分けられる。通販は主に広告規制であり、令19条2項によって広告が行われた地域の都道府県知事が、法14条15条の権限を行使する。事業者の所在地は問わない。
これは当たり前の話で、県民に被害を与えた悪質業者が県外だったから行政処分を行えないなんてことでは、事実上の野放し状態だ。逆パターンで業者の所在地の知事が行政処分を行う仕組み(所在地主義)にすると、県民に被害が発生していない場合の被害確認は困難だし、そもそも行政処分に力を入れる「理由」がない。県民に被害を与えた業者を処分し被害拡大を防止するという「理由」が、その自治体の行動のエネルギーになるのだ。
そもそも公務員小説「やくみん! お役所民族誌」で今後描こうとしているのは、東京の詐欺集団・深網社と澄舞県消費者行政のバトルだ。もし澄舞県の消費者被害について東京の業者を取り締まれないのであれば、物語も成り立たない。
そのように取締系の行政行為における被害地主義の原理を考えると、鳥取県(に限らず)青少年健全育成条例が県外事業者を規制対象とすることは、自然だ。しかし、Amazonの取り扱い停止により他県の出版事業者の販売に非常に大きな影響を与えている実態は、「仕方ない」で済ましていいものとも思えない。鳥取県が「Amazonさんはいいですよ(警察の捜査対象とはしませんよ)」と言えればいいのだが(そのような気持ちは担当レベルではあるのだろうが)、それを言えば条例が骨抜きになる。である以上、三才ブックスの被る不利益が条例規制の間接的影響であったとしても、何かしらの解決の道筋を鳥取県としては考える必要があるのではないか。
週末からの炎上を受けて、週明けには平井知事のコメントが出るだろう。それを待ちたい。
--------以下noteの平常日記要素
■本日のやくみん進捗
第1話第22回、3,452字から411字進んで3,863字。明日は精密検査で待ち時間が長いと思われることから、原稿を進めたいな。
■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積299h49m/合格目安3,000時間まであと2,701時間】
実家でどこにテキストを置いたか見つからず、作業の合間にちまちまと探す。最後に見つかったのは台所のテーブルの上、郵便ポストに入っていたチラシを上に重ねてぽんと置いていた。こういう風だから物を無くすんだなあ。と言うわけで実績76分、動画2本。
■本日摂取したオタク成分
『Heaven?~ご苦楽レストラン~』第5~7話、淡々と横目で愉しむ。『ブラタモリ 境港・米子?思わずゲゲゲ! “鳥取のしっぽ”は不思議だらけ!??』家族と共にNHKプラスで視聴。やくみん読者には感付かれていると思うがよく馴染んだ地域、しかし取り上げられる地学的知識の大半は知らない話だった。皆生の地名の由来とかも、おそらく初耳ではないかな。