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0657:再び考える「旧統一教会の名称変更と行政の認証手続」

先日、旧統一教会の名称変更について、元公務員目線でその手続面への疑問をこんな記事にした。

その後、この問題に進展があったようなので、あらためて考えたい。

まず、下村博文代議士(名称変更時点の文部科学大臣)にマスコミから質問があったらしく、下村代議士は13日にTwitterで次のように回答文を公表した。

https://twitter.com/hakubun_s/status/1547007911691698176

このうち「文化庁によれば」から続くかぎ括弧(文化庁自身の発言箇所と読み取れる)に注目すると、「通常は、○○という仕組みで、大臣に伺いを立てない」という一般論的前段と、「今回の事例も最終決裁は文化部長で、これは通常の手続」という個別論的後段に分かれている。一読してニヤリと笑みがこぼれた。嘘は言っていない、しかし、ここで語られていない肝心なことがある。「通常はこう」で言及する部分と「今回はこう」で言及する部分の差分はどこか。そう、「今回/大臣に伺いを立てたか」については解答していないのだ。

通常、公務組織は決裁規則によってトップの権限を部下に下ろしている。文化庁の事務決裁規則にあたるものをすぐには見つけられなかったが、この文章から宗教法人の規則変更認証は文化部長決裁であることが分かる。ただし、これはあくまで役所内の意思形成過程における「事務決裁」という形式上の話だ。書類にハンコを押すかどうかに関わらず、重要案件であれば決裁権者は自分で判断を決めずに必ず上の意向を確認する。霊感商法で悪名高い統一教会の名称変更なんて、部長レベルで決められる話ではない。事務方で決めた方針案が「認めない」にしても「認める」にしても、必ず大臣の意向を確認している筈だ。特にこれまでの方針を変えて「認める」ならばましてやだ。

文化庁の説明は、この事務決裁の規定の範囲内の話しかしていない。だから、そこに嘘はない。ただ、規定の範囲の外の実務運用の話をしていないだけだ。前段で「一般論として大臣に伺いを立てることはしていない」といっているのなら、平仄を合わせて後段でも「今回も大臣に伺っていない」と明言するのが自然だし、誤解がない。なのにそこが空白になっている。

表に出る文章、とりわけこのようなデリケートなものについては、庁内の管理職レベルで一言一句を吟味する。嘘をつくのはまずい、しかし明言したくない事柄がある、ならばどのような文章を紡ぐか。そうした熟慮の結果がこの文化庁コメントなわけだ。

この下村代議士の解答に対し、翌14日に紀藤弁護士が「もう少し詳しくお調べいただき公表していだだけませんでしょうか」と引用リツイートをした。

https://twitter.com/masaki_kito/status/1547515443543306240?s=20&t=pn_yLQF2Cxv2uJ63zWGQSQ

反応は固唾を呑んで見守っているが、本日15日に弁護士ドットコムがこの件を文化庁にヒアリングした結果を記事として公表した。

このうち文化庁の回答に注目しよう。

https://www.bengo4.com/c_18/n_14717/

これも一読ニヤリだ。できるだけ嘘をつかず、しかし核心はぼかす。

「要件がそろったので認証された」ふむ。「必要な書類が揃えば認証される」という原則論は正しい。しかしそれは本件の場合、霊感商法被害の拡大防止という別の要請によって差し止められていた筈、というのが前回の記事での私の見立てだ。これに対して文化庁は「議事録や新旧対照表などが求められることになっている、『そうした要件』がそろっていなかった」から20年近く認証されなかったというように応答している。つまり形式不備に過ぎないというのだ。

そうかあ?

ここで許認可等の申請の取り扱いルールである行政手続法を確認してみよう。

行政手続法
(申請に対する審査、応答)
第七条 行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。
(理由の提示)
第八条 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。
2 前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。

第7条で「申請の形式上の要件に適合しない申請については補正を求める」とある。必要書類がなければ「これをつけてね」と相手方に示し、それを整えて認証するのが当たり前のルールだ。相手方が必要書類を出さなければ、補正不能として却下になる、これも当然のことだ。

しかし、名称変更を求めている統一教会が議事録等の簡単な書類の補正に応じなかったなんてことが、あるだろうか? それを揃えさえすれば変更できるのに。そして、20年近く放置して、2015年に突然適法な申請がなされたと。うーん、あまりにも不自然な説明ではないか。

行政手続法第8条第1項で、申請拒否の場合は原則としてその理由を示さなければならない。2015年以前の申請時にどのような拒否理由を示していたのか、そこに全てが顕れている筈だ。一般の公文書と異なり、宗教法人の規則変更認証関係書類は台帳化され永年保存、間違いなく文部科学省内の文書庫に保管されている。統一教会側も書類を保存しているだろうから、それにどう書いてあるか、だ。

最後、下村代議士の関与について。弁護士ドットコムの記事見だしは「下村氏の関与を否定」とあるが、本文中では「下村氏がご解答されている通りです」としかいっていない。つまり否定していないのだ。下村代議士の文書にも「指示等の関与をしていない」とはひとことも明言されていない。つまり、誰も嘘をついていない。しかし真実は明らかでない。

こういうのらりくらりの答弁、背景がほの見えてわくわくするよ。

--------以下noteの平常日記要素)

■本日のやくみん進捗
第1話第18~21回のまとめをアップした。第22回は未着手。

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積266h57m/合格目安3,000時間まであと2,734時間】
ノー勉強デー。

■本日摂取したオタク成分
『フルメタル・パニック! Invisible Victory』第6~8話、話がひと区切り。今期はライトさがなく、ヘヴィ展開。『異世界おじさん』第2話、第1話がえらく面白かったので原作を5巻まで読んだ。なので展開を知ってる分だけ1話のような衝撃はなかったけど、それでも面白いのは間違いない。『組長娘と世話係』第1話、んー、ハートウォーム系なのだろうけれど、ちと平板。まあもう少し見続けよう。『シャインポスト』第1話、アイドル物か。主人公グループが今ひとつキャラが立ってないけど、その分異能マネージャがむっちゃ興味を惹く。

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