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0340:密な音楽フェス騒動と行政の強制力

 昨日愛知県常滑市で行われた音楽フェスティバルが超過密状態で、参加者も感染対策をほとんど取らずに弾けていたことから、あっという間に炎上した。

 どうみてもあかんやつや。いろんな人たちのこれまでの努力を一気に水の泡にしてしまう。まあ、そうした批判は屋上屋を重ねてコメントするつもりはない。このnoteの特色として、やはり行政側に目を向けておきたい。

 地元常滑市は、事前に主催者に対していろいろな働きかけをしていたという。そして昨日の実態を踏まえて、本日すぐさま抗議の意が表明された。

 管轄の知多保健所を設置する愛知県も、抗議文を発出した。

 さて。こうした抗議文はどのように作られるか。

 首長(市長・知事)がカメラの前で喋ったりSNSに直接書き込む場合はともかく、文書として世に出るものについては、首長が直接作りノーチェックで世に出ることは、まずない。組織内でいくつもの目を経て意思決定がされるのだ。まず首長から「こういう要素を盛り込め」と指示を受け、所管課担当(GLクラス)が原文を作る。その原文を課長・部長が叩いて、首長の確認を踏まえて再修正を必要なだけ繰り返し、そして決定稿となる。

 常滑市長がTwitterに投稿した上記の文書を見てほしい。これは業者に発送される正規の抗議文ではなく議会挨拶メモだが、盛り込むべき情報をきちんと盛り込んだ上で、「極めて悪質なイベント」「強い憤りを覚えます」「今後二度と本誌の施設……を使用させない」等の強い意思が表明されている。原課の原文から市長の決定までどのように変遷したか興味深いところだ。また、本稿アップ直前に愛知県の正式抗議文(上記)も出てきたが、当然こちらもかなり強い口調で抗議を示している。

 次に気なるのは、事前に止めることができなかったのか、ということだ。常滑市も愛知県も主催者に対して強い注意喚起を行っていたという。そう、事前に差し止める強制力はどちらも持っていなかったのだ。

 日本国憲法の下、国民の活動は基本的に自由だ。その自由を規制することは、法令に基づかなければできない。行政活動のどこまでが法律の根拠を要するか、については議論があるが、一番狭い侵害留保説でも、権利や自由の侵害は法律上の根拠を必要とする。当然と言えば当然だ。

 緊急事態宣言の根拠となる新型インフルエンザ等対策特別措置法については解説するだけの知見を持たないが、今回のフェスを差し止める権限はなかったであろう。

 この件については、「行政にもっと権力を与えて規制できるようにすべきだ」とシンプルに考える人も少なくないだろう。だが、事はそう簡単ではない。自由を規制する際には、行政によって規制しなければならない具体的な問題を必要とする。その問題を解決するために大雑把な網を掛けたなら、規制する必要のなかったもの、規制してはまずかったものまで網にかかる可能性がある。だから、「何を規制するか」「何を除外するか」を十分に検討する必要があるのだ。

 例えば特定商取引法という法律がある。もともと昭和の時代に、社会問題となっていた押し売りやマルチ商法を規制するために作られた法律だ。時代と共に悪質商法の手口が拡大し、一定の被害を踏まえて、その手口を規制する改正が積み重ねられてきた。例えば東日本大震災の後くらいからいわゆる「押し買い」、被災者のために貴金属を集めていると称して個人宅を訪問して宝石類を見せてもらい、極めて安値で強引に買い取り持ち去ってしまう手口が多発した。しかし当時の特商法は「押し売り」つまり個人が消費者の立場に立つものが規制対象であり、個人が売主に立たせられる「押し買い」は規制対象ではなかったわけだ。消費者庁や関係者が数年間尽力を重ね、押し買い(訪問購入)も規制対象となった経緯がある。

 なお、法律の授権がなくてもできる行政の働きかけを「行政指導」という。さまざまな行政課題に対応するための行政活動だが、法律の根拠がない以上、強制力はない(行政手続法32条)。あくまで相手方の任意の協力をお願いする立場に留まる。今回のフェスの前に常滑市や愛知県が主催者に対して働きかけたのは、この行政指導に当たる。

 行政規制は国民を守る強力な武器だ。だが、その武器を役所が備えるためには、国会による法律制定が必要となる。社会問題を担当する公務員は常に、今与えられている武器(規制権限)の範囲内で、問題解決のための最大限の努力を行わなければならない。なんとかしたいのにどうにも出来ず悔しい思いをすることもある筈だ(私も幾度もあった)。

 頑張れ、公務員。社会のために。

--------(以下noteの平常日記要素)

■【累積56h51m】本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
実績143分。商業登記法に突入、最初の講義1回分3本を見てチェック問題もこなす。商法でザラッとやった知識の端々が商業登記法で出てくるのは記憶喚起に役立つ。

■本日摂取したオタク成分(オタキングログ)
『ぼくたちのリメイク』第7話、6.5話の総集編は単なる切り貼りでチラッとしか観て無い。7話は青春ラブ話。『転スラ』第36.5~38話、こういうオーディオコメンタリーが付くだけで総集編はぐっと魅力的になるんだよね。他国との首脳会談だけで丸一話保たせられるのが凄い、ここまで観てきて話に入り込んでるからということもあるけれど。『はめフラX』第9話、これは毎度の話半分、でもラストは緊迫。『青天を衝け』第17話、現在のアフガニスタンのような内乱の時代を描きつつ、やってみなはれの死を悼む人々を丁寧に描いてる。

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