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0157:極限状況の養子認定

 委託又ハ郵便ニ依ル戸籍届出ニ関スル法律という、知っている人しか知らない法律がある。制定は昭和15年、戦地から人づてまたは郵便で誰かを養子にする意思を示し、地元にいる家族等が役場で養子縁組の手続をして、後に本人(養親側)が手続日より前に戦没していたことが判明した場合に、無効とせず戦没日に遡って養子縁組の成立を認めるものだ。戦争という極限状態と家制度を背景にした特殊なものといえる。

 この法律が適用されるケースでは、戸籍上はまず手続日に養子縁組が記載される。事後(時には戦後)に戦没の事実が明らかになった時、戸籍に戦没記載が行われるが、養子縁組日との矛盾が生じる。そこで、事実関係を可能な範囲で確認した上で、養子縁組日を戦没日まで遡る訂正がなされる。

 この手続は戦時下や戦後の混乱の中で行われるから、戸籍を確認しても日付の訂正が記載されない場合がままある。つまり戸籍上「戦没後の養子縁組」というあり得ない状態が生じるわけだ。このような場合にどう取り扱うか。昭和33年の行政実例では、戦没日と届出日の近接を前提とした上で、無効であると積極的に証明されない限り戸籍上有効として取り扱うとされている。一方、昭和27年の通達では、有効であると積極的に証明されない限り戸籍の記載に関わらず養子を戦没者遺族年金の対象としないとされている。つまり、戸籍制度の運用(端的にいえば相続関係)としては養子に有利に取り扱うが、遺族年金の支給はより厳格な要件を課しているわけだ。

 仕事でここが問題になったケースを担当したのでたまたま知っている豆知識だけど、司法書士試験には出ないなあ。

 本日のヘッダ画像は島根県津和野町・津和野カトリック教会。津和野は長崎のカトリック信徒たちが殉教した地として、乙女峠など関係史跡がいくつかある。歩いてあれこれ見てまわることのできるコンパクトな小京都だ。

■本日摂取したオタク成分
『刀使ノ巫女』第4話、うーん、やっぱり微妙。『集団左遷!!』第5~最終話の6話一気観、面白かった。面白かったけど、うーん。本部編とか半沢と区別がつかん気がする。あとリアリティを損なう部分が気になった。手帳のイニシャルから「これは国会議員の○○だ!」て、何その直感。ホテルの警備員やウェイターに「国会議員が来てませんでしたか」なんて聞いたって教えてくれる筈がない、それはホテルを利用する銀行員だって普通に知ってる筈なのに、何やってんの……みたいな脚本の安易さね(そこは半沢も「なんで秘密の話を飲み屋でぺらぺら喋っとんねん」とかあったわけだが)。昔から「創作物語は、大きな嘘はついていい、でも小さな嘘(現実から乖離した安易な設定など)は世界を壊す」と言われている、その辺りの話。まあ、このことと、いわゆる「わかりやすさ」がバーターと捉えられてるのかもね。『無職転生』第8話、ながら観で筋を追えなかったがいつものように好感度は高い様子。『転生したらスライムだった件』第31話、緊迫が続く。『蜘蛛ですが、なにか?』第1~5話、なんか良い感じに面白くて家族で一気観してしまった。主役の声優さん出番が多くて大変そう。

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