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0130:やくみん覚え書き/不当要求行為

 公務職場は法令に基づく権力を持つ。公定力などの法学的な権力、徴税と起債により獲得する予算執行の権力、そして無形だが社会的信用も権力のひとつといっていい。その権力は、大臣や首長などの執行機関に与えられ、その補助機関である公務員は、現場で権力を行使する役割を与えられている。もちろん恣意的に行使できるわけではない。一定のルールに縛られている。

 その権力を、ルール度外視で自分の都合の良いように行使させようとする、公務員への働きかけ。これが不当要求行為だ。

 ある程度の期間公務員を続けている人は、何かしらの不当要求を受けた経験、または同僚が受けている様子を垣間見たことがあるだろう。それは、長時間の面談または電話での要求かも知れない。暴力をほのめかしたものかも知れない。目の前で器物損壊が行われたかも知れない。

 私が見聞きした範囲では、右翼活動の名刺をちらりと示して取り返した事例、目の前で議員に電話をかけて「先生、このままだと俺は行政対象暴力で捕まるかもしれないよ」と明らかにこちらに聞かせる意図の事例、部屋の中の全員を起立させて30分以上の演説会をして最後に「業務妨害、終わり!」と叫んだ事例など、いろいろな経験をした。庁舎の前で街宣車ががなりたて、みんな窓からその様子を見下ろしていたら「こらあ、貴様ら、勤務時間中に何を見とるかあ、仕事せえ!」と怒鳴られたこともある。

 この手の話で記憶に鮮烈なものがふたつある。ひとつは平成13年に行政職員が産廃業者によって殺害された事件。もうひとつはほんの2年前、向日市の若手職員がケースワーク対象者の元暴力団員に支配されて死体遺棄に荷担し逮捕された事件だ。

■鹿沼市職員殺害事件(wikipedia)


■死体遺棄の生活保護ケースワーカー、公判で見えてきた異常すぎる実情(DIAMOND ONLINE)

 前者は行政職員が直接的な被害者となり、後者は共犯にされた事例だ。特に後者は、若手職員に全てを負わせて守れなかった組織の体制が極めて大きな問題を孕んでいた。

 随分前に、いわゆる輩系一人がうちの上司二人を相手に不当要求をするやりとりを録音で聞いた。相手は、二人のうちの一人を徹底的に責め立て、もう一人には「お前は話の分かる奴だ」と持ち上げた。ああ、これは心理支配の技術だな、と思った。二対一の場面で、一方を理不尽に押さえつけ、もう一方を立てる。その時に何が起きるか。持ち上げられた方には(自分には攻撃が向いていない)という安心感と同時に(いつ自分が被害者になるか)という大きな不安が生まれるのだ。これはいじめと同じ構造で、自分が標的にならないためには、いじめっこと一緒になっていじめる側に回るか、少なくともいじめっこをなだめることはできない。結果、いじめられている方は孤立無援になる。こうしていじめっ子は相手方を分断すると共に、二人をそれぞれの形で支配することができる。向日市の事例は、組織全体がこの支配の構図に陥っていた。

 やくみんでは、筋立ての過程で、こうした反社会的勢力による心理支配のテクニックを描く。同時に、鹿沼市の事件のように、行政対象暴力の直接的な被害者も出る。行政としてこうした不当要求行為・行政対象暴力にどのように立ち向かうのか。どのような振る舞いをしてはならないのか。実はこれが重要なモチーフになる。

 本日のヘッダ画像は山口県山口市・瑠璃光寺五重塔(国宝)。

■本日摂取したオタク成分
『無職転生』第4話、今回も丁寧な表現で観入る。原作ファンの長男も大満足のクオリティ。『2.43 清陰高校男子バレー部』第2話、バレーボール自体には思い入れがないのに観れる。

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