Crossする運命についての雑考 ~要するにCrossing!フルを聴いた感想~
昔は「そにっP」だったんですよ(ヘッダーの話)。
1.認識
2023年の3月22日早朝。前日に原神でずっと復刻を待ってた神里綾華が引けたので夜遅くまで遊んでしまって疲れ果てて寝てたけどふと目が覚めてしまい、ツイッターを開いてしまいました。
寝ぼけ眼に、いくつかのワードがぼんやり映り始めます。
"Crossing!"
これはわかります。ミリオンライブ!の記念すべき10周年曲『Crossing!』。今日が正式リリースだったため、日付が変わった瞬間みんな聴き始めたのでしょう。
"運命の出会いを信じてる?"
これもわかります。無印(アケマス、Xbox版など)のアイマスに関わったことがある人ならピンと来るでしょう。
ゲーム開始時に通りすがりの女の子に投げかける選択肢のひとつです。
そしてこの子こそが――ソフトによって異なるが――天海春香その人です。無印をプレイすると必ずこのコミュを通るため、「運命の出会い(出逢い)を信じてる?」は春香と結び付けられて語られる印象的なセリフとなっています。
でも、どうしてTLにこんなに「運命の出会いを信じてる?」が流れてくるのだろう?
その答えを理解に少し時間がかかりました。
寝ぼけてるからではありません。
繋がると思ってなかったものが繋がったからでした。
まさか、「運命の出会いを信じてる?」がCrossing!の2番の歌詞になっているだなんて。
2.本歌取り
「運命の出会いを信じてる?」が無印のただのセリフを越えて登場したことは前にもあります。分かりやすい例は2017年に発売されたステラステージです。一応ネタバレに配慮して詳細は語りませんが、ユーザーが(恐らく)本来の用途から離れて特別視するようになったこのセリフを、公式も特別な意味を持たせて意趣返ししてきたのです。
アイマスはこのようなことを時々やります。コミュや歌詞にアイマスの名を冠した別作品の要素を取り入れ、見ている人にメタ視点で特別な感動を提供しようとするのです(是非はともかく)。
これはアイマスに限らず、”本歌取り”などの形で大昔からある技法です。
さて、今回のCrossing!も本歌取りをしてやられたわけです。
ゲームサイズが公開されていた時点でミリオンの他の記念曲要素が散りばめられていることが見て取れましたが、フルサイズの蓋を開けてみればミリオンの範囲にとどまりませんでした。
もちろん、無印アイマスを知らないと理解できないフレーズではありません。ただし歌詞カードではご丁寧に”運命の出会いを信じてる?”と引用符まで使っているので、無印という”本歌”に意識を向けさせようとする確信犯であることは間違いありません。続く歌詞にも「続いてく次の歴史のフェーズ」とあるので、アケマスから連綿と続く765プロの足跡そのものを想起させるのが狙いと思われます。
一言で言えばエモ要素です。
しかし、エモ要素で終わらせるのはもったいない。
このフレーズをここで聴くことで胸が打たれる、そうなるようなパワーがそこにあるはずです。
「運命の出会いを信じてる?」
私はCrossing!という歌を運命という切り口から捉えてみようと思います。
3.運命
運命とは何でしょうか。
私なりの考えですが、以前に同人誌「天海春香学会Vol.2」へ寄稿した拙作「天海春香の運命論」にて詳細に考察しました。
天海春香学会Vol.2サンプル「天海春香の運命論」|天海春香学会|note
本編は哲学者・入不二基義氏の思想を援用して春香の運命を考察したものでありぶっちゃけ長くてくどいので、ここでは結論のみ引用します。なお普遍性を持たせるために「春香」は「アイドル」に置換します。
みなさん、それぞれ担当アイドルや大好きなアイドル、大切なアイドルがいることだと思います。
どんな風に出会い、どんな風に今まで一緒に過ごしてきましたか?
どんな風に未来を作っていきたいですか?
そこには、ひとりひとり全く異なる「足跡が刻んでく十人十色のストーリー」があると思います。
しかし理論上、どんなストーリーにも絶対に共通する項目があります。
それは、あなたとそのアイドルが出会ったことです。
アイドルと出会わずに今まで生きてきたifの人生があったかもしれません。
しかしあなたは今、圧倒的な現実の中にいます。
そのアイドルと出会うことができたという現実です。
この圧倒的な現実こそが、あなたとその子の間にある運命と呼べるものではないでしょうか。
4.1つ目のCross
ここでいったんCrossing!の歌詞に戻ります。
結論を先取りすると「Crossing!には3つのCrossがある」ということをこれから話します。
あくまでここでの私の解釈なので、あくまで多様な意見のひとつだと思ってくださいね!!
私はとあるフレーズに注目しました。それは形を少しずつ変えながら各サビに登場します。
意味合いとしては①と②が近く、③のみ少し表現全体が変わっています。
Crossing!では人の軌跡が「道」と表現されています。ゆえに「道が繋がる(Cross)」とはまさしく「出会い」のことを指すと思われます。
②の「私」、これを歌っているアイドルのこととしましょう。
①の「誰か」とは誰のことでしょうか。「私」の仲間のアイドル、アイドルに対するファン、そしてプロデューサー……このあたりが想像できます。
各フレーズの直前には「Thank You! あの日生まれた声の架け橋が」とあり、ミリオンライブの始まりの曲であるThank You!が引用されています。
プロデューサーの中には、ミリオンライブリリース当初からの人もいれば、その後のどこかから着任した人もいます。
これらを総合し、①と②のフレーズを繋げると、アイドルからの次のようなメッセージになるのではないでしょうか。
「ミリオンライブが生まれてから今まで続いてきたことで『あなた』と私は出会えたんだよ」
『あなた』は、他のアイドルでも、ファンでも、プロデューサーでも代入できると思います。
このメッセージを私は「出会い」に注目して『1つ目のCross』と呼ぶことにします。
5.2つ目のCross
また、1番の歌詞には特徴的なフレーズがあります。
別々の道、という表現は、Crossing!の趣旨にしては不穏にも受け取れます。
ゆえにここの解釈は本当に様々にできると思います。
それを承知の上で、ここでは解釈のターゲットを絞ってみます。
ここでは765の楽曲、OFAのED曲『Destiny』をヒントにしてみました。
先程、あなたとアイドルの間には十人十色のストーリーがあるだろう、と書きました。
出会ってからず~っと一緒にいるかもしれません。
好きになれなかった時期や、いったん離れていた時期がある人もいるかもしれません。
今、少し離れている人もいるかもしれません。
どんな形でもいいのだと思います。
もし一度交差した道が離れてしまっても、またどこかで交差することがあるかもしれませんから。
なにより、Crossing!を聞いている今この瞬間は、少なくともあなたはアイドルと共にいるのですから。
なんどでも出会える、ということは「もう一回! 何度目のスタートだろう」という歌詞に重ねてもいいかもしれませんね。
この「もし離れたってまた会えるよ、少なくとも今ここで出会っているよ」を、『2つ目のCross』と呼ぶことにします。
6.3つ目のCross
ここでもう一度、「4.1つ目のCross」で取り上げたフレーズを見てみましょう。
まだ③について考えていませんでした。
「後を行く誰か」とは誰のことでしょうか。
これも様々に言えると思います。
ミリオンライブのコンテンツ視点では、シアターデイズから加入した新たな仲間、紬と歌織のことになります。
またアイドルにとって、未来に出会うファン、未来に出会うプロデューサーを指しているとも言えないでしょうか。
この感覚をストレートに言い表しているフレーズが、これまた765のMA4共通曲『New Me, Continued』に登場します。
「ミリオンライブが続いていけば、この先アイドルは新たな出会いがあるよ」、これを『3つ目のCross』と呼ぶことにしましょう。
7.Crossing!とは運命である
さて、今まで列挙した3つのCrossを改めて列挙してみましょう。
「ミリオンライブが生まれてから今まで続いてきたことで『あなた』と私は出会えたんだよ」
「もし離れたってまた会えるよ、少なくとも今ここで出会っているよ」
「ミリオンライブが続いていけば、この先アイドルは新たな出会いがあるよ」
1つ目のCrossは、過去から今を指しています。
2つ目のCrossは、今ここを指しています。
3つ目のCrossは、未来を指しています。
過去、現在、未来……これらは繋がっているものです。
しかし、単なる時の流れではありません。
ある日、出会ったこと。
今、出会っていること。
いつか、出会うこと。
どれも「出会い」がキーワードになっています。
そして私は「3.運命」にて、「出会い」をこのように表現しました。
過去、現在、未来……それぞれに散りばめられた出会い。
出会いという事象が持つ運命性。
その出会いを主題とし、高らかに歌い上げるCrossing!という曲。
すなわち、Crossing!とは、
出会いの歌であり
同時に運命の歌でもある
と言えるのではないでしょうか?
8.これを書いた理由って
「2.本歌取り」にも書きましたが、「運命の出会いを信じてる?」というフレーズで頭真っ白になって、ただのメタネタで終わらせるのが悔しかったので、本稿を書きました。
だって「運命の出会いを信じてる?」だよ?????????春香Pにそれぶつける?????????????????る???????????
はい。
まあ、色々考えていくうちに「この曲って実際『運命の曲じゃね?』」と思ったのは今まで書いたとおり事実です。
だとすれば歌詞で「運命の出会いを信じてる?」と問いかけることも不自然ではありません(たぶん)。
ただ、本稿はあくまで「運命」という色眼鏡を通して見たCrossing!なので、手つかずの歌詞がたくさんあります。
折角素敵な曲が生み出されたわけなので、皆さんも各自の視点でCrossing!を解釈してくださると嬉しいです。
Crossing!フレーズバトルしましょう。