解夏傀儡イベントコミュ第5話「月下談話」所感 ~先輩であるということ~
プラチナスターツアー『解夏傀儡』お疲れ様でした!もう1か月以上過ぎてるけど
なにより、まだ肝心のドラマCD発売を控えていますが、投票企画・現代伝奇ホラーが大きな一区切りを迎えたことになります。関わった皆様、大変お疲れ様でした。
私においては、現代伝奇ホラーにおける天海春香のゲスト出演を記念し、幣ラウンジ「春香色のステージ」で人を集めてイベランに臨みました。ありがたいことに40人ラウンジが埋まり、皆様の頑張りによって無事TPLに入賞することができました。ご支援くださった皆様、本当にありがとうございます。
さて、イベントコミュでは瑞希、このみさん、貴音、育、桃子の当選メンバーがさすがの演技を見せてくれましたね。コミュの中では、難しいドラマを演じるというハードルを乗り越え、またひとつアイドルとしての魅力を開花させていました。
そんな中で、私が担当している春香がメインで登場するのが第5話「月下談話」です。この中で、なかなか興味深いやり取りがありました。今回はこのイベントコミュ第5話にフォーカスし、所感を述べていきたいと思います。
1.第5話コミュ概要
撮影に春香とまつりが合流し、アイドル達と村人で夕食を囲むあたたかいシーンから始まります。
その後、建物の外に出て星空を眺める貴音のもとに春香がやってきます。建物からは、賑やかに談笑するスタッフたちの声が漏れ聞こえてきます。
貴音と春香の両名とも、仕事に臨む皆のことを高く評価していることがわかります。
そこに、同じく星を眺めに来たまつりがやってきます。二人の邪魔をしてはいけないと退散しようとするまつりを、春香は引き止めます。何の話をしているのかと問うまつりに対し、春香が皆のことを褒めていたという話になります。
春香の口から、少し弱気な発言が漏れ出てきます。
これに対してまつりは「春香ちゃんたちを追い越すのはまだ先のことだ」と答えます。貴音は「まつり姫にしては弱気な発言ですね」と評しますが、まつりは貴音や春香たちを指してこのように語ります。
続けてまつりは「もちろん自分も走る速度を緩めることはしないので、油断は禁物だ」と、春香たちに発破をかけます。春香は改めて気合を入れ直し、コミュは幕を閉じます。
さて、私がこの第5話で特筆したいのは、ずばり終盤のまつりの発言です。貴音が珍しいと評したとおり、まつり……すなわち劇場(シアター)組のアイドルから「追いかける背中があるから頑張れる」「もう少しだけ、先を走っていてほしい」という、先輩(AS)・後輩(劇場)の関係を明示させるような発言が出たのでなかなかに驚きました。ミリシタに限っても6周年を迎えて先輩・後輩の区別なく活動する様子が多く見られてきたので、なおさらです。
ここでのまつりの発言意図とはどのようなものなのでしょうか。これが本稿の主題です。
あくまで私の視点での解釈であり、正解を論じるものではないことを予めご了承ください。
2.先を走る者
まず、まつりの「もうちょっとだけ、姫たちの先を走っていてほしい」という発言に注目してみましょう。私が真っ先に思いだしたのは、『LEADER!!』のイベントコミュです。
このイベントではAS組がオールスターライブを行う様子にフォーカスしており、第6話「道」ではライブ前の春香と千早の様子が見られます。
今まで自分たちが辿ってきた道のりを振り返り、プロデューサーに感謝を述べる春香と千早。コミュの最後に、2人は次のように決意を新たにします。
春香は、自らのことを「劇場のみんなより、少し早く歩き始めただけの先輩」と評しました。時間的な事実として、春香たちAS組が先にアイドルの道を歩み始めたということはもちろん疑いようもありません。しかし、「早く歩き始めた『だけ』」という部分に注目してみます。これにより、歩き始めたタイミング以外に自分達先輩と後輩との間に大きな差はない、という意図が伝わってきます。
しかし、前述のとおり解夏傀儡イベントコミュにおいて、まさにこの「先に歩き始めたこと」がまつりの口からこう語られているわけです。
まつりにとっては春香たちが先に走り始めているのは大事なことであり、それが頑張る自分たちの心の支えになっているということです。先に歩き始めた「だけ」の話ではない、とも理解できます。
どちらかの考えが間違っているというわけではありません。しかしこれは、先輩と後輩の認識のズレなのでしょうか。そうだとしたら少しモヤモヤが残るところではあります。しかし私は、これに対してとある楽曲のフレーズを用いて理解を深めたいと思います。
それは……「少し斜め後ろ」です。
3.「少し斜め後ろ」
先輩・春香と後輩・未来のデュオ楽曲『ハルカナミライ』では、アイドルとしてひた走る2人の関係性がそのまま描かれているような歌詞が展開されています。そんなハルカナミライ、サビの中で2回「少し斜め後ろ」というフレーズが登場します。
1番:
(未来)少し斜め後ろ
(春香)誇らしく輝く
(2人)まなざしは美しい
2番:
(春香)少し斜め後ろ
(未来)いつだって眩しい
(2人)シルエット 見つめてる
同じフレーズを春香も未来も歌っており、解釈も様々にできることと思います。強いて言うなら、ということで、最初に春香と未来それぞれの立場から見た「少し斜め後ろ」を考えてみましょう。
まず、春香にとっての「少し斜め後ろ」とは、自分(春香)から見て少し斜め後ろにいる未来のことでしょう。頑張り屋さんで誇らしい後輩に見えていることだと思います。
次に未来にとっての「少し斜め後ろ」なのですが、私は2通りに解釈できると思っています。
1つ目は先ほどの逆で、春香の少し斜め後ろにいる自分(未来)のことと思われます。尊敬するところがある、憧れの先輩として春香を見ているわけです。
2つ目ですが、1番のサビに「どんなときも背中押すように」という歌詞があることに注目しました。後輩の未来から見た春香は、前を行く存在というだけでなく、時には後ろから背中をそっと押してくれる存在になってくれることでしょう。すなわち、自分(未来)の少し斜め後ろに春香がいる、という解釈もできるのではないでしょうか。
さて、肝心なのは、このフレーズは「前後」でも「左右」でもない「少し斜め後ろ」である点です。
先輩だからこそ、前を走っている。後輩だから、後を追う。これらの関係性は全て「前後」で表すことができます。しかし、「少し斜め後ろ」には、ただそれだけではないより左右の位置関係が近いニュアンスが含まれています。
しかし、完全な「左右」横並びでもありません。引っ張れるところは引っ張り、必要があらば背中を押す……先輩だからこそできることがあれば、それをちゃんとやっています。そのときの立ち位置というのは、やはり少し前に行ったり、後ろに行ったりするわけです。
ハルカナミライにおいては、春香と未来の先輩・後輩関係が「少し斜め後ろ」という独特のワードで表現されています。完全な前後も、一切の左右でもない、「少し斜め後ろ」。私は、この関係性があたたかいなと思っています。目が届き、手が触れ合う場所で、お互いができることをしてあげて、それでもいつか横に並べる日を目指して……。走り始めた時期の違いがチャラにならない以上、それを最大限に生かしつつ、極限まで横に仲間がいる、ということ目指していくと「少し斜め後ろ」という表現に行き着くのではないか、と思います。
解夏傀儡のイベントコミュ第5話にも、「少し斜め後ろ」を当てはめてみましょう。
まつりのメインコミュを見ていると、当たり前ですが、決して四六時中自信満々な子ではないことがわかります。
たとえば、まつりの初めてのメインコミュでは、プロデューサーに心配そうにこう尋ねています。
また、DIAMOND JOKERのイベントコミュで翼とすれ違ってしまったときは、このような一面も見せています。
最新のメインコミュでも、アドリブを入れて自分らしく演技をするかどうか逡巡する様子がありました。
ものすごく気が利いて、超人的な立ち回りを見せることさえあるまつりでさえ、完璧超人ではありません。みんなと同じように、悩んだり、失敗したりしているはずです。
そんなまつりですから、周りの人に対するリスペクトというのは絶対大事にしていることでしょう。劇場組の仲間はもちろんのこと、AS組のことについては「先輩であるがゆえに出来ることがある」という部分を決して無視せず、大切にしていることと思われます。その発露が、何度も取り上げた解夏傀儡イベントコミュにおける発言なのではないでしょうか。
そう考えると、このコミュで肝心なのは、むしろ最後にまつりが春香たちに発破をかけている所なのかもしれません。
少しだけ早く歩き出した春香たち。感受性が高く他人のことをよく見ているまつりの目には、春香たちが先に先に進んでいく姿が焼き付いているのでしょう。
しかし、それに対して怯みっぱなしのまつりではありません。その背中に追いつこうとする努力を怠ることはありません。
完全な左右とは思っていないけれど、前後の位置に収まろうとはしていない……このコミュでの発言は、まつりなりの「少し斜め後ろ」だったのではないでしょうか。
おわりに
前述のLEADER!!イベントコミュのエピローグでは、春香がこのように語っています。
私は以前、このコミュについてこのように考察しました。
この論については元記事でメモリアルコミュも含めて詳しく語っており、未だに有効な仮説だとは思っています。
ただ、今は少し違った見方もできると考えています。
「牽引」だけではなく、春香は、みんなで一緒に手を繋いで夢に向かって飛び込みたいと思っているのではないでしょうか。互いが互いの少し斜め後ろにいる、このあたたかな場所で。
いずれにせよ、少々私も消化が難しいコミュでした。
自分なりにまつりのことを考えてみたり、ハルカナミライやLEADER!!を再咀嚼したりとしてみましたが、まだまだ考察が行き届いていないと実感しています。
今後も機会があれば、このコミュなり、AS組と劇場組の関係なりを考えてみたいですね。