最上静香が普通の女の子になった日 ~Legend Girls!!イベントコミュ感想~
プラチナスターシアター『Legend Girls!!』お疲れ様でした! イベントリザルトとしてはなんとかTPRにヒイヒイ滑り込んだという感じでした。何度TPRをしても甘えを見せたら結果は危うくなる……反省です。しかし私のラウンジ「春香色のステージ」はメンバーの頑張りによって無事13位を獲得することができました! 定住の皆さん、傭兵で来てくれた皆さん、通話などでサポートしてくれた皆さん、本当にありがとうございます。
さて、今回のLegend Girls!!のイベントコミュは大変印象深いものでした。せっかくなので、個人的にどのような点がなぜ印象深かったのかを記録していこうと思います。
焦点を当てるのはイベント上位報酬にもなった静香ですが、私の本業は春香Pですので、理解不足等がありましたら率直にご指摘くださると嬉しいです。(いや春香の理解が十分だとも思ってないですけど……())
1.春香と静香、共通点と相違点
イベントコミュのあらすじについては各自でご確認いただいた方が早いと思いますが、要約するとこんな感じです。
憧れられることが増えてきた765プロのアイドルに密着取材が入る中、静香は「アイドルに憧れる子へのメッセージ」を問われて言葉に詰まってしまいます。理由は、夢半ばの今の自分に憧れてほしくないから、とのことでした。その後静香は春香のインタビューを見て、もっとシンプルに考えていいということに気づきます。そしてステージの直前にインタビューを受けた静香は「アイドルは……とっても、楽しいですよ!」と答えたのでした……。
言うまでもなく、今回のコミュで静香に大きな影響を及ぼしたのは春香でしょう。従ってLegend Girls!!における静香がどのようであったかを語るにあたって、まずは春香と静香の関係に触れないわけにはいきません。
そもそもコミュにおいては、春香と静香の共通点に注目するような誘導がなされているように感じます。
春香と静香の共通点は、端的に言うと小さい頃からアイドルに憧れていて、そしてアイドルになって夢を叶えたところです。名前も似てるよね
春香はイベントコミュ第5話でも言及があったとおり、公園でお姉さん達と歌を歌った経験からアイドルを夢見るようになりました。
メインコミュ第68話「今も、まだ……」のプロローグに登場する春香が小学生の頃に書いた作文からも、その夢が昔からのものだったことが読み取れます。
静香については、メモリアルコミュ5において嫌いだった音楽がアイドルをきっかけとして好きになった経緯が語られています。
春香も静香も、楽しそうに歌うアイドルに憧れた経緯があります。
また、それに付随して両者いずれにも「自分を褒めてくれる人の存在」があることがわかります。
春香のことを褒めてくれたのは、まさしく一緒にいてくれた友達とお姉さんでした。ここで静香が「褒めてもらえると嬉しいのは分かる」と言っているのは、確定ではないですが、恐らく父親のことを指しているのではないでしょうか。
うーん、「褒めてくれる人がいた」というのは確かに共通しています。
春香にとっての、友達とお姉さん。
静香にとっての、父親。
しかし言うまでもありませんが、これらはそのまま春香と静香の相違点に直結する要素なのです。
春香にとっての、友達とお姉さん。それは幼少期の記憶の中の存在ですが、今も春香の「歌が好き」という気持ちを支えています。
春香が具体的にどのような経緯で765プロのアイドルになろうと思ったのかは未だミリシタでは深く触れられていませんが、少なくとも両親からアイドル活動を大きく反対されている様子は無く、友達からも応援されている描写が随所にみられます。
対して……静香にとっての、父親。静香のアイドル活動に反対し、アイドルは中学生の間だけという条件を突きつける存在です。
Catch my dreamを歌ったメインコミュ第67話を経て父の態度は軟化したものの、静香は「身近な人が足枷になっている」「アイドルに時間制限がある」というハンディキャップを背負っていることになります。それゆえ、静香は早く結果を出さなければアイドル活動が終わってしまうという焦りを抱えています。その焦りは、メモリアルコミュ1に描かれる静香のオーディションを始め、様々なコミュに表れています。テキストではなく、コミュを開いて流れる静香の声の気迫から感じ取って頂きたいです。
(だからでしょうか? 春香は台詞の随所で「ずっと」という言葉を使いますが、時間が無い静香はあまりそういう言葉を使わない気がします)
そんな静香ですが、ミリシタ内で様々なことを経験していく中で、アイドルとしての姿勢を変化させていき……次第に、素直にアイドルを楽しめるようになっていきます。
さて、そんな静香と春香ですが、これまでミリシタ内で濃い絡みは見られませんでした(たぶん)。しかしそこに、満を持して2人が同じユニットになるLegend Girls!!が登場しました。
似てる所も違う所もハッキリしている春香と静香。この2人が交わることにはどんな意味があったのでしょうか。
2.春香が静香に与えた影響
Legend Girls!!のイベントコミュ後半に注目しましょう。第4話で「静香に憧れる子に何か言ってあげたいことは」と問われた静香は答えに窮してしまい、インタビューは一旦中止になりました。静香はこうなってしまった理由を語ります。
後日、春香のインタビューが行われることになりました。その場所は、”公園”。そして静香もそこにいました。
この公園こそ、春香が幼少期に歌をうたって過ごした思い出の場所だったのです。
では、ここでの春香のインタビューを改めて見てみましょう。
私はここで「普通の女の子」に注目しました。
春香はミリシタ内に留まらず、よく「普通」の子と形容されます。目立った外見・内面の特徴やハンディキャップが無いゆえかもしれません。ときには春香を揶揄するために使われた言葉でもあったでしょう。しかし、「普通」とは決して「無個性・没個性」のことを指してはいない、というのが私の持論です。
最近この「普通」という言葉が登場したシーンで印象に残っているのは、ミリシタ5周年イベントコミュです。
5周年コミュは、アイドルたちを尋ねて「アイドルとしての、『あなたの輝き』とは?」を問う構成なっています。春香の回答はこうでした。
や?????????お前は特別スーパーウルトラアルティメット美少女だが?????????????????????
まあ、春香がそう言うならそういうことにしておきましょう。とにかくここで春香は「目立った特徴は無い(私は普通だ)けど、それを応援してもらえるのが輝き(…①)」だと言っています。
この言葉の解釈は一つに定められないと思いますが、Legend Girls!!イベントコミュで語られた「特別なところが無い普通の女の子だけど、好きという気持ちがあれば大丈夫(…②)」という春香の言葉を思い出してみましょう。①と②をつなげた「特別なものが無くても、好きという気持ちがあれば、それがアイドルとしての輝きに十分なりうる」というのが春香の考えなのではないでしょうか。
そんな春香の姿は、静香の心を動かしました。公演直前のインタビューに、静香はこう答えます。
私はこの静香を見て、次のように思いました。
静香は、春香の姿を見て、ようやく普通の女の子になれたのではないでしょうか。
突出した才能があるわけではない春香。普通の女の子、天海春香。そんな春香が、「好きという気持ち」のおかげで今までアイドルを続けられたのだと語りました。
その後ろ姿は、「人一倍努力しなければ」「時間制限が迫っている」「もう時間が無い」「結果を出さなければ」ともがき苦しんでいた最上静香から「アイドルはとっても楽しい」「今が一番充実している」という言葉を引き出しました。静香は、「足枷を背負っている女の子」を次第に脱却し、Legend Girls!!のコミュでついに「アイドルが大好きな普通の女の子」になれたのではないでしょうか。
もちろん、静香に課せられた条件が無くなったわけではありません。再びそれと向き合うときが来ることでしょう。
しかし、足枷は決して静香のアイデンティティではありません。アイドルに強い憧れを抱く女の子……これこそが、静香のアイデンティティなのではないでしょうか。それで、十分なのではないでしょうか!
こうしてみると、春香は実は今まで語られていなかっただけで、同じ境遇を持つ静香を導くことができる存在だったのだと思います。しかし、これがもしデビュー当初の静香だったら、春香の姿勢がストレートに静香の心を動かせたかどうか……ちょっとわかりません。たくさんの経験を経た静香が、心の底から「アイドルは楽しい」と言えるようになる、その最後の一押しをしただけかもしれませんね。
3.”今”
今まで見てきたとおり、Legend Girls!!において静香は大きく変わりました。私が思う「デビュー当初の静香」と「Legend Girls!!を経た静香」を比較してみましょう。
突然の手書きメモですみません。要するにデビュー当初の静香は、意識の主軸が「やがて来る時間制限」にあったと言えます。だからそこから逆算して焦りが生まれ、それが言葉や態度に出てきてしまうわけです。
しかし、様々な経験を積んだ静香は、時間制限のみに意識を囚われないように変化していきます。その一つの到達点が、Legend Girls!!だったのではないでしょうか。
すなわち、意識の主軸が「この"今"」に移り、それゆえ「今が楽しい」という言葉を発せることができるようになったのだと思います。
急に話が飛躍しますが……人はやがて死にます。これは避けられない運命です。しかし、みなさんは「いつか死ぬからあれをやらなきゃ、これをやらなきゃ……」と思いながら日々を過ごしていますか? そう考えることも必要かもしれませんが、それが毎日続いたら楽しいですか?
きっと、「この”今”」を大切にして積み重ねていき、人として成長していく方がよっぽど有意義ではないでしょうか。その方がずっと、楽しく生きることができるのではないでしょうか。
これは、アイドル活動をする最上静香にも当てはまる話だと思っています。それを説明したのが前掲の図です。静香は今、真に有意義なアイドル活動をできるようになったのだと言えるでしょう。
まとめましょう。
実は似ているところがある春香と静香。決定的な違いもありましたが、春香の姿に影響を受けた静香は、”今”を楽しいと思えるように、そして他者に伝えられるようになりました。Legend Girls!!のイベントコミュは、静香の決定的な変化、また春香の大きな役割を描いた、名コミュだったのではないでしょうか。
余談ですが、ここでミリオンライブ! 10周年記念楽曲の『Crossing!』の歌詞を振り返ってみましょう。
アイドルになった彼女らから、アイドルを目指す誰かへ。
「好き」という気持ちがあれば大丈夫。
憧れる立場から、憧れられる立場へ。
「私を待つあなたに 届けたい歌がある」。
こうしてみると、Legend Girls!!のイベントコミュの要素が非常に濃く散りばめられているように思えます。これは偶然なのでしょうか。考えすぎかもしれませんが、Legend Girls!!の素晴らしいイベントコミュは、ミリオンライブ! 10周年と不可分の存在として生み出されたのかもしれませんね。
間もなくミリシタは6周年を迎えます。765プロの伝説は、まだまだ止まりません。これから始まる伝説に、もっともっと飛び込んでみたい! 今はそんな気持ちでいっぱいです。さあ――
みんなで目撃者になろう。