ファイナルデイ「なんか手から出るようになった」
「くしゃみしたら手からなんか出た」
「それと、この壊滅した食堂と何の関係があるんですか」
「くしゃみしたら手からなんか出てきて食堂が爆発した」
「……」
「私の言葉が信じられないというのかベルベット」
「滅相もございません」
「ならよい」
「皆の者! なに鳩が豆鉄砲を食ったような顔して突っ立ってんだ! 早く瓦礫の掃除をしろ!」
「まあ食ったのは私の謎鉄砲なんだがな」
「上手いこと言ったときの顔をしてますねファイナルデイ様」
――
「この演習場なら、何を撃っても何が爆発しても大丈夫です」
「うむ、くしゃみする度に部屋が壊滅していたら要塞がいくつあっても足りない。発生条件を検証するぞ」
「承知しました」
「まずはさっきと同じようにくしゃみをしてみよう」
「はい」
「……」
「……」
「わざとくしゃみするのは難しいな」
「でしょうね」
「ベルベット、何かいい方法はないのか」
「ええと……くしゃみを誘発するには、コショウを吸い込むとか、細いもので鼻をくすぐるとか、そんな感じでしょうか」
「わかった、コショウは持ってるのか」
「要塞まで戻ればありますが……」
「じゃあその辺の草でいい、私の鼻をくすぐれ」
「えぇ……」
「返事は?」
「はい! すぐに準備します!」
ムシリ
「じゃ、じゃあ行きますよ」
「うむ、一思いにやってくれ」
(顔が近い……)
コショコショ
「ん、ん……」
コショコショコショコショ
(なんかエッチだな……とか考えてないですよファイナルデイ様本当です信じてくだs)
「は……はっ……」
「あ、マズい! この近距離でそれは!」
「ハーーーーックシュン!」
――
「すまんベルベット」
「とんでもないです」
「痛かったろう」
「平気です、鍛えてますから」
「頼もしい部下だ」
「へへっ」
「とりあえずしばらくの間は、くしゃみしそうになったら全力で息を止めるか手を空に向けることにする」
「それがいいかと」
「しかし……食堂を壊滅させ、大地に大穴を開け、手練れのベルベットを遥か彼方まで吹き飛ばすこの力……」
「何か心当たりはあるのですか?」
「実はな……昨日、訳あって単騎で”研究所”に忍び込んだ……」
「まさか……敵に捕まって人体改造を……?」
「お腹がすいて研究室に置いてあった謎のタブレットを食べてしまった」
「危ないですよ」
「その時はなんともなかったが、まあこのありさまだ」
「命に別条が無くてよかったですほんと」
「まあ、やってしまったことは仕方ない。これだけの力、戦闘に上手く生かせないものだろうか」
「自分の意志で撃てたら最高ですね」
「ちょっとやってみるか。あそこの木をターゲットにしてみよう」
「はい」
「……」
「……」
「フンッ!」
「……」
「何も出ないな」
「出ないですね」
「撃つたびに部下に鼻をくすぐらせなければならんのか」
「戦闘中にそれはちょっと……」
「顔が近くにあってもイラっとしない部下を選出するか……」
「その前に自分の力で謎パワーを撃つ方法を考えましょう」
「もうちょっといい名前はないのか」
「後で考えます」
「頼んだぞ、私はこう見えて作戦名とか武器名とかがカッコいい方がテンション上がるタイプなんだ」
(でしょうね……服装もコレだもんなあ……)
――
「ちょっと考えたんですけど、くしゃみをするときって全身に強い力が入りますよね。『フンッ!』ってレベルじゃなくて」
「そうだな」
「今度は全身にめちゃくちゃ力を入れてみてはいかがでしょう」
「うむ、またあの木で試してみよう……ふおおおおおおおおおお!!!!」
「……」
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
「……」
「どりゃあああああああああああああああ、っとっと危ない」
「どうしましたか」
「力入れすぎて漏れそうになった」
「そんなこと言わないでください」
「……セーフだ」
「だから言わなくていいです」
「戦場で総帥がチビってたら士気に関わるだろう」
「まあ、十中八九怖がってたと思われますよね」
「とにかく全身に力を入れすぎるのは危ないぞ」
「でしたら、力を『気持ち』で補うのはどうでしょう」
「どういう意味だ」
「メンタルは体の状態を左右します。あの謎パワー(仮)がファイナルデイ様の体から出ているのでしたら、何か強い気持ちがあれば引き出せるかなと思いまして」
「なるほど、一理あるな」
「たとえば、倒したい相手……敵の兵士の姿をイメージしてみるのはどうでしょう」
「よし、やってみよう……ふおおおおおおお!!!死ねえ!!!!!」
ピュンッ!!
「おお! 出ましたよ!」
ペキイ
「しかし、さっきのような威力が無いな」
「そうですね、木の枝が折れたくらいですね。くしゃみしたときの威力があればあの木は根こそぎ吹っ飛ぶはずです」
「ほんとすまんなベルベット」
「何も言ってないです」
「しかし、これでベルベットの仮説が正しいことが証明されたな」
「何かこう、もっと強い殺意とかを込めればもしかしたら……」
「うむ。憎い相手、憎い相手……憎い……」
――
「……! ……!」
(頭の中に誰かの姿が見える……)
「……ナルデイ! おい、ファイナルデイ!」
(あれは……バスター、ブレイド……?)
「久しぶりだな、元気か?」
(これは……奴はまだ生きているとでも……いやしかし……)
「それ、新しい軍服か? 似合ってるぜ」
(今さら、そんなこと言われたって……今さら……)
「でも裏で部下たちが『露出度高くね?』『これで何を防御できるんだよ』『てかちょっと厨二じゃね?』って言ってたぜ」
(は?)
「俺もそう思う。背中冷やして風邪ひくなよ。じゃあな!」
――
「……バスター……」
「ファイナルデイ様? どうされました? ファイナルデイ様!?」
「ブレイドおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ブオォン!!
ドゴオオオオオオオオオオオオオ
プシュウ……
「すごい……やりましたね、ファイナルデイ様! 見事な一撃です!」
「ベルベット」
「はい!」
「お前はこの服どう思う」
「はい?」
「どう思う」
「……総帥としての威厳があってカッコいいなあって思いますけど……」
「背中」
「はい」
「背中寒そうだなって思うか」
「……少しだけ……」
「……帰る」
「あ、ちょっと待ってください! ファイナルデイ様!? 急にどうしたんですか?? ファイナルデイ様~!!」
――
2022年11月27日は近未来アウトサイダー3周年ですって。
おめでとうございます。
で、なにこれ?(?)
それはさておき、とりむねにく様主催の近未来アウトサイダー3周年記念アンソロ企画「From Dusk to Dawn」に参加しております!!
もうちょっと真面目に書いております……
既に頂戴した献本を読破しましたが、どなたの作品も大変読みごたえがありますので、是非頒布情報をチェックしてください!
それでは、これからも末永く近未来アウトサイダーで狂えることを願って。