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書籍「ユニバーサルデザインの教科書」基礎編と世の中の事例

「ユニバーサルデザインの教科書」の「基礎編」について、と世の中で話題になっているユニバーサルデザイン事例について書きました。

1. ユニバーサルデザインの教科書「基礎編」
2. ユニバーサルデザイン原則と世の中の事例
3. ユニバーサルデザイン関連の資格情報

1. ユニバーサルデザインの教科書「基礎編」

基礎編のはじめには、モノを観察して、実験して、考えてみようということが書いてあります。そうすることにより、洞察力と考察すべき観点を磨き、普段何気なく使用しているものに対する「気づき」を得ることができ、色々と改善点が見えてくると。

観察した後の実験例としては、軍手を二重にして瓶の蓋を開けたり、石鹸をつけて瓶の蓋を開けたり、実際に握力が無い状態を作り出して実験することにより、擬似体験として感じることの大切さを紹介しています。
モノの観察だけでは気づかない観点を実験を通じて得ることが可能になります。
疑似体験するための製品も世の中にはあります。私も以前の職場で、メガネだったり、重りだったり、腰がのびないよう固定する服だったりをつけて、すごく制限される状態で機器を操作する機会がありました。非常に貴重な体験となっています。

観察は、ただモノを観察するだけではなく、実際にモノの利用されているところを観察し、利用しているユーザーにインタビューをすることによっても、自分で考えただけでは気づかない観点を抽出することができます。

モノを利用する際に支障をきたす理由は様々なことが考えられます。
ユニバーサルデザインを考える上で重要なこととしては、加齢、幼齢、障害、心理状態、怪我、妊娠などの状況があり、それを理解して配慮することが必要です。
それぞれの状態を想定して、デザインされていないと、使えない人が出てきてしまいます。汎用性の高いモノは特にそうなります。

自身のお話をさせていただくと、
加齢については、小さい字が読みづらくなってきたり、
幼齢については、子供がトイレでウォシュレットを使用した際にシャワーの当たる位置がずれてしまったり、
怪我については、脚の靭帯が切れた時に膝が曲げられずにトイレ(また、トイレですみません)のドアを閉められなかったり、電車で優先席に座るとただ単に態度の悪い人にしか見えず、脚を蹴られたり。。。階段しかない場所では普段の何倍も移動に時間がかかったり。という経験をしました。
皆さんも色々なご経験があるのではないでしょうか。

ユニバーサルデザインという視点ではさまざまな人のさまざまな利用シーンの想定が重要になってきます。

モノやサービスを開発するにあたり、実際の利用シーンを理解し、「気づき」を得た上で検証し、開発を進めていくことが重要です。
独りよがりなアイデアにならないためにも、常に使い手である人々を理解することが不可欠です。

基礎編では上記のようなユニバーサルデザインの考え方に対する理解を深める内容となっています。

基礎編の中で、モノが与える影響範囲の大きさについて共感する記載がありましたので、下記に抜き出させていただきました。

心の作用が個人の枠を超えて第三者との関係を作りだし、影響し合っていると言える。
デザインやモノがどれほど、人々に心理影響を与えているかは計り知れない。大切なことは、困っていたことが解消したり、欲しかったデザインやモノが提示されたりした時に、人々は喜びや満足感を得るということだ。
使うことに対する不適応は使い手にさまざまなストレスやパニックをもたらし、やがて病気や事故をも生み出し得る。


2. ユニバーサルデザイン原則と世の中の事例紹介

ユニバーサルデザインの教科書「基礎編」では考え方や取り組むべき活動内容が理解できる内容となっています。そして、この記事を読んでいる方の中には、ご存知の方も多いと思いますが、ユニバーサルデザイン7原則の紹介があります。

1.どんな人でも公平に使えること。(公平な利用)
 Equitable use
2.さまざまな使い方ができること。(利用における柔軟性)
 Flexibility in use
3.使い方が簡単で自明であること。(単純で直感的な利用)
 Simple and intuitive
4.必要な情報がすぐに分かること。(認知できる情報)
 Perceptible information
5.うっかりミスを許容できること。(失敗に対する寛大さ)
 Tolerance for error
6.身体への過度な負担を必要としないこと。(少ない身体的な努力)
 Low physical effort
7.使いやすい大きさや広さが確保されている(接近や利用のためのサイズと空間)
 Size and space for approach and use

ユニバーサルなデザインの製品やサービス開発にはこれらのことを考慮する必要があります。

世の中ではユニバーサルデザインについて、どのようなことが話題になっている(た)のでしょうか。いくつかご紹介いたします。

事例1:
熱波が襲った今夏の日本列島ですが、下記のように政府が指針を十数年ぶりに見直すことを発表しました。

熱中症の危険度を知らせる環境省の「熱中症予防情報サイト」で、地図上で色分けした「暑さ指数」の表示が色覚障害のある人に識別しづらいことが分かり、同省は配色の見直しを決めた。

同サイトは昨年は1000万件以上のアクセスがあり、生命の危険に直結する情報のため当然の取り組みですが十数年振りというのは、遅れをとっているという印象です。2020の東京五輪・パラリンピックに向け、表示の見やすさを確認したところ問題点が見つかったそうです。

事例2:
上記で話が出ましたが、2020オリンピック/パラリンピックに向けてガイドラインが出ており、ユニバーサルデザインな社会を東京オリンピックのレガシーにしようという動きがあります。大きなイベントのため、行動しやすくなりますし、「ユニバーサルデザイン」という文言の露出も増えてくることが想定されます。それに伴い認知度も上がり、対応しようという気運が高まることを期待します。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/udsuisin/index.html

同様にアクセシビリティのガイドラインもあります。
https://tokyo2020.org/jp/organising-committee/accessibility/

事例3:
選挙には見えない障壁がある。画像化したPDFはスクリーンリーダの読み上げに対応できないため、視覚障害者はインターネット上の選挙公報から情報を取得することができない課題があった。それに対して啓発するために作られたサイトが下記です。
https://kikoeru.yahoo.co.jp/about.php

音声のユーザインタフェースはスマートスピーカーが出てきたことにより、視覚障害者以外の方にも利用シーンが増えてきているので、対応製品やサービスが増えていき、より良い社会へ進んでいくのではないでしょうか。


3. 資格情報

ユニバーサルデザイン に関する知識を得る手段として、資格取得に向けて体系的に勉強するのも良いと思いますので、ユニバーサルデザインの初級向け資格をいくつかご紹介させていただきます。

■MUD教育検定
https://www.media-ud.org/assay/
老眼や白内障の中・高齢者や色覚障がいの方々などにもわかりやすい印刷物、Web、サインなどを、制作・発注できる知識・技術を習得する
* 3級受験料:16,200円
■ユニバーサルデザインコーディネーター認定資格
https://www.ud-web.com/licence/
ユニバーサルデザインの視点で、商品づくりや印刷物、施設、サービス、接客などを効果的に改善する知識・スキルの資格
* 3級 講習料+受験料:8,000円(別途テキスト書籍 1,400円)
■UCDA認定
https://ucda.jp/shikaku/second_class.html
UCDA資格認定制度とは、UCDの概念を広め、UCD 実現を推進できる人材=プロデューサー/デザイナーを育成するためのプログラムです
* 2級 受講料、教材料、試験料、登録料:50,000円(税別)

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